あやめも知らぬ恋

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夏が過ぎ、紅葉の鮮やかさに目を奪われる季節が訪れた。

あれから梨亜奈はすぐに竜人の国へ戻り、那波もそれに同行することに。

番を失う痛みに、事情を知る那波くらいは寄り添おうと本人の希望で去っていった。

さみしさの伴うことではあったが、永遠の別れではないと那波に感謝を告げる。

「紫暮様をよろしくお願いします」なんて託されたのは気恥ずかしいので、私だけの秘密にした。



一見、屋敷に住まう人数が減ったかに思われたが、そうでもなく……。

媛巫女であった光莉が引退宣言をし、親族間では勘当された扱いとなった。

一部の巫女たちは光莉を慕って顔を出すこともあるが、一族での問題はどこも根深いものだと露呈した。

南条家とは縁が切れた私にとって、皮肉な話だと愛想笑いをするのが精一杯なところ。

とはいえ、蛍はすっかり本来の年齢らしさに戻り、無邪気な子どもとして手を焼くようになっていた。



「キャーッ!? 蛍ちゃん、なにを!?」

「キャハハハッ!!」


おはぎでも作ろうかと買っておいた小豆で、まさかのイタズラが炸裂する。

夏の暑さ対策に紫暮が用意してくれた電気扇風機を使い、小豆をまき散らす。

畳の部屋に小豆が散らばり、せっせと拾っている間に次のイタズラに向けて走り出していた。


まったく、なぜ暴走する蛍を押さえにかかっているのが自分だけなのか。

楓はどこに行ったんだと目くじらを立てていると、甘さの混じった生暖かい空気が鼻をくすぐった。



「蛍~! さつまいもを焼いたぞ! 食うか!?」

楓が庭で散った紅葉を集めてさつまいもを焼いている。

こっちが奔走している中でこいつは何やっているんだと恨みがましく思っていると、蛍が全速力で楓に飛び蹴りを食らわしていた。


「いってーっ!?」

「うあああああん!! パパがもみじ燃やしたーっ!!」

「えええええー……怒るのそこ!? ごめんって、蛍ぅ」

「触るなボケェ!!」

遠目に見ていると、蛍は楓にそっくりだ。

捨てられる恐怖から自分が引っ込んでいただけで、本当はおてんばが過ぎる娘。


(後片付けは誰がするのやら。……私か)

楓に会わせたいと願い続けてようやく実現したこと。

実際、楓は蛍を溺愛している。

(これが望んでいた光景。……なんだけどぉ!)

楓に父親らしく落ちついてもらえるのは夢のまた夢だった。

「花純さ~ん。ごめんなさい、またよくわからないイタズラで……」

「子どもの発想って、予想を超えるものなんですね。まさか小豆を吹き飛ばされるとは」


外に出ていた光莉が戻って来るや、すぐに小豆拾いを手伝ってくれた。

あらかた拾ったつもりではいたが、桐箪笥の隙間や襖の溝にまだまだ残っている

子どものイタズラの才能は厄介だと、光莉は顔を合わせてクスクスと笑った。