『”光莉。もういいから。オレごと、鬼喰いを倒せばいい”』
「そんなこと言わないで! わたしは貴方を失いたくないの!」
楓がその身に鬼喰いを抑えるようになった際、どうしようもなく苦肉の策として媛巫女が封じた。
一気に消滅させてしまえばよかったのに、楓を犠牲にするのは嫌だと媛巫女はその場で出来る最善を導き出し、楓の中に抑え込むことを選んだ。
鬼喰いは鬼を求める。
第一に楓を取り込み、媛巫女は楓ごと倒すほか道がなかった。
拒絶した結果、楓ごと封じるしか出来ずに媛巫女としての責務を全うした。
「愛してるの……。わたし、楓くんを愛してるの!」
その後、蛍が生まれたが媛巫女の心はすでに崩壊寸前。
徐々に記憶を失い、ついには育てることも叶わずに蛍と離れ離れとなった。
楓を失うことだけは嫌だと媛巫女は涙に暮れ、それに楓は眉尻を下げて微笑んだ。
(どうすればいいの? 私は……私は楓を……!)
答えは出ているのに思考ですら言葉に変えられない。
断言出来ない己の情けなさを糾弾したいところだが、それさえも出来ずに思い悩んでいると、楓の赤い瞳が私に向けられる。
『ぐっ……ぁアア”ッ!!』
「楓!?」
鏡の中から黒い腕のようなものが飛び出し、楓の身体は反動で宙に浮き見えない攻撃を受ける。
楓を弱らせて主導権を奪おうと中にいる鬼たちがうごめいているのだろう。
鏡から出てきた黒い腕は迷いなく私に向かって伸び、食らいつくように手のひらが巨大化して眼前にせまった。
やられる!!
――そう思った瞬間、紫暮が前に出て翼を広げて全身から龍の気を黒い腕にぶつけた。
強大な力を受け、黒い腕はすぐさま引っ込んで楓の腕を掴んで巻きついていく。
地面におろされた楓は、息を切らしながら鋭い瞳孔で私を見据えていた。



