○第四話の続きから
蒼牙「俺と結婚してほしい」
何を言われたのかと目を瞬く妃燈だが、土鍋の蓋が音を立ててずれそうになり、月代が慌てて土鍋のお盆を抑える
月代「危ないですよ。熱いですから、こぼしたら火傷します」
妃燈「ごめんなさい」
※しゅんとする妃燈
月代「いえ、妃燈さんは悪くありません」
月代「むしろ、ムードもなく求婚する隊長に問題があります」
※目を吊り上げて、蒼牙に顔を近づける月代
蒼牙「な、なんだ」
※たじたじになる
肩をすくめ、わざとらしく首を振る月代
月代「やっぱり隊長って、こういうのは不得手なんですね」
月代「いや、得意だったらとっくに結婚してますね!」
※明るい笑顔で悪気はない
蒼牙「うるさい」
※顔を赤くしてそっぽを向く
月代「妃燈さん、隊長って長く生きているわりにはこういう方向に疎いみたいです」
妃燈「はい……」
※困惑する妃燈
月代「このたび、隊長が妃燈さんに結婚を申し込んだのは」
月代「妃燈さんを帝国側にとられないようにするための苦肉の策です」
首を傾げる妃燈
月代「焔陽国も碧浪国も帝国の属国ですので」
月代「帝国の命令は拒めません」
月代「だから帝国が妃燈さんを差し出せと言ったら」
月代「僕たちはそれに従うしかありません」
身体を震わせながらうなずく妃燈
妃燈が理解したのを見届け、同じようにうなずく月代
月代「だけどそれを回避する方法が一つだけありまして」
月代「それが隊長との結婚です」
首を傾げる妃燈
月代「あ、その顔はよくわからないと言ってますね?」
月代「隊長の妻となれば、帝国側もやすやすと手を出せないというわけです」
月代「一応、碧浪国の君主ですからね」
蒼牙「一応は余計だ」
※そっぽを向いたままボソリと
月代「帝国の属国とはいえ、国内法によって独立的地位が認められていますから」
月代「碧浪国では、略奪は禁止されているんです」
※カップルから相手を奪おうとするイメージにバツ印
月代「だから、隊長と結婚すれば妃燈さんには碧浪国の国内法が適用されるというわけです」
月代「理解しました?」
妃燈「はい」
※神妙な面持ちで返事をする
蒼牙M(やはりこの娘、賢いな)
※顔はそっぽを向いたまま、視線だけを妃燈に向けて
月代「では、今日の予定を説明します」
淡々と一日の予定を言い始める月代
月代の言葉に耳を傾けるものの、その量の多さに目を白黒させる妃燈
月代「……以上です」
蒼牙「食事を終えたらすぐに儀式に入る」
蒼牙「まずは食え」
※そっぽを向いたままの蒼牙はどこかぶっきらぼうに
妃燈は土鍋の蓋を開けるが、ほどよく冷めており匙を握っておかゆを食べる
月代「食事の量が増えてきたら、他のものも食べてみましょうね」
月代の話に頷きつつ、おかゆを食べる妃燈だが、土鍋に半分ほど残して困ったように月代に視線を向ける
月代「もしかして、お腹がいっぱいですか?」
妃燈「ごめんなさい」
月代「いえ。先ほども隊長が言ったように、少しずつ量を増やしていきましょう」
妃燈の土鍋を片づける月代
お盆を手にして立ち上がる
月代「隊長、行きますよ」
蒼牙「あ、あぁ……」
※月代にうながされ、慌てて立ち上がる
月代「着替えを用意します」
妃燈に声をかけ部屋を出ていく月代と蒼牙
それと入れ替えに入ってくる女性軍人(髪は短めだが、目はぱっちりとしていて愛らしい)
T:碧浪国軍隊員、筑紫和葉
和葉「お召し物をお持ちしました」
妃燈「あ、昨日の……」
※回想:昨夜も着替えや傷口の治療をしてくれた女性軍人
和葉「はい、筑紫和葉です」
和葉「お着替えの前に包帯を取り換えますね」
和葉に背中を見せるよううながされ、浴衣をずらして傷口を見せる
和葉「もしかしたら、傷跡は残るかもしれませんね」
※妃燈の背中に薬を塗りながら
和葉「痛みはどうですか?」
妃燈「痛くはないです」
妃燈M(和葉さん、やさしい人……)
和葉「そうですか……」
和葉「それにしても、この屋敷では虐げられていた妖鬼人が多すぎです」
※二日目というのもあり、世間話を始めるように、手は妃燈の背中の傷口に薬を塗りつつ
和葉「妃燈さんは、当主の娘と聞きましたが……」
※妃燈の背中に薬を塗る手が止まる
妃燈「はい。でも反抗的だったので……」
※自嘲気味に笑う
和葉「だからって……? ひどい……」
※せっせと妃燈の背中に薬を塗る
和葉「終わりました」
和葉「次はお着替えですね」
和葉にうながされて寝衣用の浴衣を脱ぎ、質素なワンピースに袖を通す
和葉「では、隊長のところにご案内します」
※妃燈の格好をさっと見回して
○紅谷邸、執務室
執務室内には執務席の蒼牙、ソファ席に座っている月代、霧島の三人がいる
初めて見る霧島に視線を向ける妃燈、妃燈の隣に控える和葉
蒼牙「筑紫、おまえは戻っていい」
和葉「はい、失礼します」
※頭を下げる
和葉がいなくなり急に心細くなる妃燈は身体を硬くして蒼牙を見る
蒼牙「先に婚姻の儀式を行う」
蒼牙「これからばたばたするからな」
蒼牙「やるなら早いほうがいい」
※立ち上がる
妃燈「はい」
※身体を硬くしたまま
蒼牙「立ち合い人は霧島と月代」
蒼牙「霧島とは初めて顔を合わせるな」
蒼牙の言葉に合わせて立ち上がる霧島と月代
霧島「霧島玄馬です」
※鋭い目つきで
妃燈「妃燈です」
※頭を下げる
霧島は妃燈を観察するように眼鏡を光らせながら視線を這わせる
身構える妃燈
蒼牙「おい、怯えさすな」
※少し眉を吊り上げてツッコミを入れる
霧島「失礼しました」
※真面目な表情で
月代「では、さっそく婚姻の儀式を始めましょう」
※にこやかな笑顔で割って入る
月代「妃燈さんは隊長と向かい合って……」
月代「二人、こう手を合わせて」
※向かい合う蒼牙と妃燈の手をとり、二人が両手をつなぐようにうながす
月代「これが誓いのポーズです」
妃燈M(この人に触れると、ドキドキする)
※心臓がドキドキと音を立て始め、顔も赤くなり始める
月代「僕の真似をしてください」
うなずく蒼牙と妃燈
月代「まずは隊長から」
月代「私、天晴蒼牙は……」
※淡々と言葉を続ける月代に続いて、蒼牙も同じ言葉を繰り返す
蒼牙「私、天晴蒼牙は……」
※妃燈を見下ろしながら
妃燈が蒼牙を見上げると視線が合い、心臓は余計にドキドキする
月代「次は、妃燈さんです」
妃燈「は、はい」
※名前を呼ばれ、びくりと身体を震わせる
月代「僕と同じことを言えばいいですから」
神妙にうなずく妃燈
※月代は妃燈を安心させるようににっこり微笑んで
月代「私、紅谷妃燈は……」
月代の言葉を反芻する妃燈
妃燈「……この命が尽きるまで、天晴蒼牙を愛し続けることを誓います」
妃燈が言い終えると、繋がれた二人の手が光る
妃燈「わっ」
※驚き、一歩身体を引く
蒼牙は表情を変えない
光はしだいに引いていく
月代「これにて婚姻の儀は終了です」
月代「おめでとうございます」
※ぱちぱちと拍手する月代
霧島も「おめでとうございます」と拍手する
妃燈M(左手が熱い……)
※蒼牙と手を離し、左手を見つめる
妃燈の左手薬指の根本に石楠花の花模様の入れ墨がある
妃燈「これは? 石楠花の花ですか?」
※左手の薬指をまじまじと見つめながら
月代「お互いの浄力が定着した証です」
月代「石楠花は碧浪国の花ですので」
※ニコニコしながら解説する
月代「それぞれ微妙に色や形が違うんですよ」
月代「でも妃燈さんと隊長の模様はおそろいです」
※ドヤ顔する
蒼牙M(やはり婚姻の儀が成功したのであれば)
蒼牙M(彼女は浄力と邪力、両方が備わっている)
※むっつりしつつ
月代「隊長、せっかく結婚したんだから、もっとにこやかな表情をしてくださいよ~」
月代「妃燈さんが怯えているじゃないですか」
※蒼牙と怯える妃燈の仲を取り持つように交互に見ながら
霧島「怯えさすなと、私に言ったばかりですよね?」
※なぜか勝ち誇ったような表情
蒼牙「すまない」
蒼牙「俺も、誰かと結婚したのは初めてだからな」
蒼牙「これはこれで、感慨深い」
※蒼牙も妃燈とおそろいの石楠花の入れ墨を見つめる
月代「結婚は何回もするものではありませんからね!」
※にこやかに
霧島「隊長もこれで心配ごとが減ったでしょう?」
霧島「そろそろ今日の仕事に取り掛かってもいいですかね?」
※眼鏡を押し上げつつ
蒼牙「そうだな」
蒼牙「妃燈、おまえは霧島と一緒に妖鬼人の治療にあたってほしい」
※妃燈を真顔で見下ろす
不安そうに霧島に視線を向ける妃燈
霧島「私たちだけでは妖鬼人と会話ができませんから」
霧島「彼らがどこに痛みを訴えているのか、それを聞き取ってほしいのです」
※真剣な表情で
妃燈M(この人も、わたしの力を知っている人)
※うなずきながら
妃燈M(妖鬼人のことを気にかけてくれている)
妃燈M(見た目は怖いけど、いい人かも……)
蒼牙「俺と月代は、ここで書類の確認をしている」
蒼牙「何かあれば、ここに来い」
※妃燈を真っすぐに見つめて
妃燈「はい」
※蒼牙を見上げて、まるで二人きりの世界のように
○紅谷邸、離れの屋敷
霧島と並んで中廊下を歩く妃燈
「あ~」「う~」と苦しそうな声が聞こえる
霧島「こちらでは治療を必要とする妖鬼人の世話をしています」
※歩きながら
霧島「まずはこの部屋から」
※霧島が一番奥の部屋の扉を開ける
板張りの床の上に布団が敷かれ、そこで横になっている四人の妖鬼人
苦しそうにうなっている
霧島「恐らく、毒物が使われたであろう者たちです」
霧島「何を食べたか、飲んだか、それを確認してもらえませんか?」
※真顔のまま妃燈を見下ろす
※妃燈はきゅっと拳を握りしめ
「はい」
横になっている妖鬼人の隣に膝をつき、声をかける妃燈
その様子を霧島は腕を組んで見守っている
○玄煌帝国、皇城の一室
中世ヨーロッパのような石造りの外観
T:玄煌帝国
猫足の調度品が並ぶシックな部屋
金髪の男性(18歳、細身で長身)が、ゆったりソファに座り本を読んでいる。
T:玄煌帝国第三皇子、久遠刃月
コツンと窓を叩く音が聞こえる
静かに立って、窓を開けると、勢いよく黒いカラスが室内に入り込んできた
久遠M(これは、碧浪国のカラスか)
カラスは嘴に手紙をくわえており、それをテーブルの上に置くと、また窓から外へと出ていった
久遠は黙って窓をしめる
テーブルの上に置かれた封書を手にとると、ソファに身を投げ出して座る
久遠M(碧浪国、天晴蒼牙……)
※封書の外側を確認してから、封を開ける
久遠M(天晴は確か……焔陽国に乗り込んだはずだな)
久遠M(紅谷は少々調子に乗りすぎた)
※不気味な笑みを浮かべながら、封書から手紙を取り出す
手紙に目を通す久遠
結ばれた口元は、しだいに緩み、口元に笑みを浮かべ、ついに声を出して笑い出す
久遠「あははははは!」
久遠M(あの化け物が結婚だと?)
久遠M(しかも相手は紅谷の娘)
久遠の笑い声が響く室内
騎士1「殿下、何事ですか?」
※久遠の笑い声を聞いて駆け付ける護衛の騎士
久遠「いや、なんでもない」
※手をひらひらと振って
久遠M(だが、紅谷に娘などいたか?)
※目尻の涙をぬぐい
久遠「焔陽国へ向かう!」
※急に立ち上がり、騎士に伝える
ざわざわと騒がしくなる室内
久遠M(こんな面白いことを放っておくわけがないだろう?)
※にたりと不気味に笑って
蒼牙「俺と結婚してほしい」
何を言われたのかと目を瞬く妃燈だが、土鍋の蓋が音を立ててずれそうになり、月代が慌てて土鍋のお盆を抑える
月代「危ないですよ。熱いですから、こぼしたら火傷します」
妃燈「ごめんなさい」
※しゅんとする妃燈
月代「いえ、妃燈さんは悪くありません」
月代「むしろ、ムードもなく求婚する隊長に問題があります」
※目を吊り上げて、蒼牙に顔を近づける月代
蒼牙「な、なんだ」
※たじたじになる
肩をすくめ、わざとらしく首を振る月代
月代「やっぱり隊長って、こういうのは不得手なんですね」
月代「いや、得意だったらとっくに結婚してますね!」
※明るい笑顔で悪気はない
蒼牙「うるさい」
※顔を赤くしてそっぽを向く
月代「妃燈さん、隊長って長く生きているわりにはこういう方向に疎いみたいです」
妃燈「はい……」
※困惑する妃燈
月代「このたび、隊長が妃燈さんに結婚を申し込んだのは」
月代「妃燈さんを帝国側にとられないようにするための苦肉の策です」
首を傾げる妃燈
月代「焔陽国も碧浪国も帝国の属国ですので」
月代「帝国の命令は拒めません」
月代「だから帝国が妃燈さんを差し出せと言ったら」
月代「僕たちはそれに従うしかありません」
身体を震わせながらうなずく妃燈
妃燈が理解したのを見届け、同じようにうなずく月代
月代「だけどそれを回避する方法が一つだけありまして」
月代「それが隊長との結婚です」
首を傾げる妃燈
月代「あ、その顔はよくわからないと言ってますね?」
月代「隊長の妻となれば、帝国側もやすやすと手を出せないというわけです」
月代「一応、碧浪国の君主ですからね」
蒼牙「一応は余計だ」
※そっぽを向いたままボソリと
月代「帝国の属国とはいえ、国内法によって独立的地位が認められていますから」
月代「碧浪国では、略奪は禁止されているんです」
※カップルから相手を奪おうとするイメージにバツ印
月代「だから、隊長と結婚すれば妃燈さんには碧浪国の国内法が適用されるというわけです」
月代「理解しました?」
妃燈「はい」
※神妙な面持ちで返事をする
蒼牙M(やはりこの娘、賢いな)
※顔はそっぽを向いたまま、視線だけを妃燈に向けて
月代「では、今日の予定を説明します」
淡々と一日の予定を言い始める月代
月代の言葉に耳を傾けるものの、その量の多さに目を白黒させる妃燈
月代「……以上です」
蒼牙「食事を終えたらすぐに儀式に入る」
蒼牙「まずは食え」
※そっぽを向いたままの蒼牙はどこかぶっきらぼうに
妃燈は土鍋の蓋を開けるが、ほどよく冷めており匙を握っておかゆを食べる
月代「食事の量が増えてきたら、他のものも食べてみましょうね」
月代の話に頷きつつ、おかゆを食べる妃燈だが、土鍋に半分ほど残して困ったように月代に視線を向ける
月代「もしかして、お腹がいっぱいですか?」
妃燈「ごめんなさい」
月代「いえ。先ほども隊長が言ったように、少しずつ量を増やしていきましょう」
妃燈の土鍋を片づける月代
お盆を手にして立ち上がる
月代「隊長、行きますよ」
蒼牙「あ、あぁ……」
※月代にうながされ、慌てて立ち上がる
月代「着替えを用意します」
妃燈に声をかけ部屋を出ていく月代と蒼牙
それと入れ替えに入ってくる女性軍人(髪は短めだが、目はぱっちりとしていて愛らしい)
T:碧浪国軍隊員、筑紫和葉
和葉「お召し物をお持ちしました」
妃燈「あ、昨日の……」
※回想:昨夜も着替えや傷口の治療をしてくれた女性軍人
和葉「はい、筑紫和葉です」
和葉「お着替えの前に包帯を取り換えますね」
和葉に背中を見せるよううながされ、浴衣をずらして傷口を見せる
和葉「もしかしたら、傷跡は残るかもしれませんね」
※妃燈の背中に薬を塗りながら
和葉「痛みはどうですか?」
妃燈「痛くはないです」
妃燈M(和葉さん、やさしい人……)
和葉「そうですか……」
和葉「それにしても、この屋敷では虐げられていた妖鬼人が多すぎです」
※二日目というのもあり、世間話を始めるように、手は妃燈の背中の傷口に薬を塗りつつ
和葉「妃燈さんは、当主の娘と聞きましたが……」
※妃燈の背中に薬を塗る手が止まる
妃燈「はい。でも反抗的だったので……」
※自嘲気味に笑う
和葉「だからって……? ひどい……」
※せっせと妃燈の背中に薬を塗る
和葉「終わりました」
和葉「次はお着替えですね」
和葉にうながされて寝衣用の浴衣を脱ぎ、質素なワンピースに袖を通す
和葉「では、隊長のところにご案内します」
※妃燈の格好をさっと見回して
○紅谷邸、執務室
執務室内には執務席の蒼牙、ソファ席に座っている月代、霧島の三人がいる
初めて見る霧島に視線を向ける妃燈、妃燈の隣に控える和葉
蒼牙「筑紫、おまえは戻っていい」
和葉「はい、失礼します」
※頭を下げる
和葉がいなくなり急に心細くなる妃燈は身体を硬くして蒼牙を見る
蒼牙「先に婚姻の儀式を行う」
蒼牙「これからばたばたするからな」
蒼牙「やるなら早いほうがいい」
※立ち上がる
妃燈「はい」
※身体を硬くしたまま
蒼牙「立ち合い人は霧島と月代」
蒼牙「霧島とは初めて顔を合わせるな」
蒼牙の言葉に合わせて立ち上がる霧島と月代
霧島「霧島玄馬です」
※鋭い目つきで
妃燈「妃燈です」
※頭を下げる
霧島は妃燈を観察するように眼鏡を光らせながら視線を這わせる
身構える妃燈
蒼牙「おい、怯えさすな」
※少し眉を吊り上げてツッコミを入れる
霧島「失礼しました」
※真面目な表情で
月代「では、さっそく婚姻の儀式を始めましょう」
※にこやかな笑顔で割って入る
月代「妃燈さんは隊長と向かい合って……」
月代「二人、こう手を合わせて」
※向かい合う蒼牙と妃燈の手をとり、二人が両手をつなぐようにうながす
月代「これが誓いのポーズです」
妃燈M(この人に触れると、ドキドキする)
※心臓がドキドキと音を立て始め、顔も赤くなり始める
月代「僕の真似をしてください」
うなずく蒼牙と妃燈
月代「まずは隊長から」
月代「私、天晴蒼牙は……」
※淡々と言葉を続ける月代に続いて、蒼牙も同じ言葉を繰り返す
蒼牙「私、天晴蒼牙は……」
※妃燈を見下ろしながら
妃燈が蒼牙を見上げると視線が合い、心臓は余計にドキドキする
月代「次は、妃燈さんです」
妃燈「は、はい」
※名前を呼ばれ、びくりと身体を震わせる
月代「僕と同じことを言えばいいですから」
神妙にうなずく妃燈
※月代は妃燈を安心させるようににっこり微笑んで
月代「私、紅谷妃燈は……」
月代の言葉を反芻する妃燈
妃燈「……この命が尽きるまで、天晴蒼牙を愛し続けることを誓います」
妃燈が言い終えると、繋がれた二人の手が光る
妃燈「わっ」
※驚き、一歩身体を引く
蒼牙は表情を変えない
光はしだいに引いていく
月代「これにて婚姻の儀は終了です」
月代「おめでとうございます」
※ぱちぱちと拍手する月代
霧島も「おめでとうございます」と拍手する
妃燈M(左手が熱い……)
※蒼牙と手を離し、左手を見つめる
妃燈の左手薬指の根本に石楠花の花模様の入れ墨がある
妃燈「これは? 石楠花の花ですか?」
※左手の薬指をまじまじと見つめながら
月代「お互いの浄力が定着した証です」
月代「石楠花は碧浪国の花ですので」
※ニコニコしながら解説する
月代「それぞれ微妙に色や形が違うんですよ」
月代「でも妃燈さんと隊長の模様はおそろいです」
※ドヤ顔する
蒼牙M(やはり婚姻の儀が成功したのであれば)
蒼牙M(彼女は浄力と邪力、両方が備わっている)
※むっつりしつつ
月代「隊長、せっかく結婚したんだから、もっとにこやかな表情をしてくださいよ~」
月代「妃燈さんが怯えているじゃないですか」
※蒼牙と怯える妃燈の仲を取り持つように交互に見ながら
霧島「怯えさすなと、私に言ったばかりですよね?」
※なぜか勝ち誇ったような表情
蒼牙「すまない」
蒼牙「俺も、誰かと結婚したのは初めてだからな」
蒼牙「これはこれで、感慨深い」
※蒼牙も妃燈とおそろいの石楠花の入れ墨を見つめる
月代「結婚は何回もするものではありませんからね!」
※にこやかに
霧島「隊長もこれで心配ごとが減ったでしょう?」
霧島「そろそろ今日の仕事に取り掛かってもいいですかね?」
※眼鏡を押し上げつつ
蒼牙「そうだな」
蒼牙「妃燈、おまえは霧島と一緒に妖鬼人の治療にあたってほしい」
※妃燈を真顔で見下ろす
不安そうに霧島に視線を向ける妃燈
霧島「私たちだけでは妖鬼人と会話ができませんから」
霧島「彼らがどこに痛みを訴えているのか、それを聞き取ってほしいのです」
※真剣な表情で
妃燈M(この人も、わたしの力を知っている人)
※うなずきながら
妃燈M(妖鬼人のことを気にかけてくれている)
妃燈M(見た目は怖いけど、いい人かも……)
蒼牙「俺と月代は、ここで書類の確認をしている」
蒼牙「何かあれば、ここに来い」
※妃燈を真っすぐに見つめて
妃燈「はい」
※蒼牙を見上げて、まるで二人きりの世界のように
○紅谷邸、離れの屋敷
霧島と並んで中廊下を歩く妃燈
「あ~」「う~」と苦しそうな声が聞こえる
霧島「こちらでは治療を必要とする妖鬼人の世話をしています」
※歩きながら
霧島「まずはこの部屋から」
※霧島が一番奥の部屋の扉を開ける
板張りの床の上に布団が敷かれ、そこで横になっている四人の妖鬼人
苦しそうにうなっている
霧島「恐らく、毒物が使われたであろう者たちです」
霧島「何を食べたか、飲んだか、それを確認してもらえませんか?」
※真顔のまま妃燈を見下ろす
※妃燈はきゅっと拳を握りしめ
「はい」
横になっている妖鬼人の隣に膝をつき、声をかける妃燈
その様子を霧島は腕を組んで見守っている
○玄煌帝国、皇城の一室
中世ヨーロッパのような石造りの外観
T:玄煌帝国
猫足の調度品が並ぶシックな部屋
金髪の男性(18歳、細身で長身)が、ゆったりソファに座り本を読んでいる。
T:玄煌帝国第三皇子、久遠刃月
コツンと窓を叩く音が聞こえる
静かに立って、窓を開けると、勢いよく黒いカラスが室内に入り込んできた
久遠M(これは、碧浪国のカラスか)
カラスは嘴に手紙をくわえており、それをテーブルの上に置くと、また窓から外へと出ていった
久遠は黙って窓をしめる
テーブルの上に置かれた封書を手にとると、ソファに身を投げ出して座る
久遠M(碧浪国、天晴蒼牙……)
※封書の外側を確認してから、封を開ける
久遠M(天晴は確か……焔陽国に乗り込んだはずだな)
久遠M(紅谷は少々調子に乗りすぎた)
※不気味な笑みを浮かべながら、封書から手紙を取り出す
手紙に目を通す久遠
結ばれた口元は、しだいに緩み、口元に笑みを浮かべ、ついに声を出して笑い出す
久遠「あははははは!」
久遠M(あの化け物が結婚だと?)
久遠M(しかも相手は紅谷の娘)
久遠の笑い声が響く室内
騎士1「殿下、何事ですか?」
※久遠の笑い声を聞いて駆け付ける護衛の騎士
久遠「いや、なんでもない」
※手をひらひらと振って
久遠M(だが、紅谷に娘などいたか?)
※目尻の涙をぬぐい
久遠「焔陽国へ向かう!」
※急に立ち上がり、騎士に伝える
ざわざわと騒がしくなる室内
久遠M(こんな面白いことを放っておくわけがないだろう?)
※にたりと不気味に笑って



