M:モノローグ
N:ナレーション
T:テロップ
○洋風の3階建ての城館、焔陽国、紅谷家
館内は和洋折衷であり、パーティーを行うような大ホール、和室などがある
軍服姿の男たち(胸には碧浪国の紋章、碧浪隊)が館内に突入し、すべての部屋をくまなく捜索する
軍服姿(他よりも勲章などが多い)の蒼牙(黒髪、黒目)。
T:碧浪国軍隊長、天晴蒼牙
違和感のある壁に触れると隠し扉が開き、地下へ通じる階段が現れる
ブーツ音を響かせ、片手に刀を持ちながら階段を下りる
薄暗い地下牢に閉じ込められ、だぼっとした巻頭服を着ている妃燈(16歳、このときはまだ名前はない)(ぼさぼさの茶色の背中までの長い髪、青い目)は、足に枷をかけられ、がりがりに痩せ、うつろな目をしている
蒼牙が地下牢を開けて枷を外して妃燈を助けると、妃燈は素早く蒼牙の隙間を抜け、地下から上階へと駆け上がっていく
蒼牙「おい、待て」
※妃燈を捕まえようと手を伸ばす
その手をするりと交わす妃燈
妃燈を慌てておいかける蒼牙
妃燈はまっすぐ城館2階の執務室へと向かうが、まぶしさに目を細くする
次第に目は慣れてくる
妃燈「父さま!」
※執務室の扉を開け、中に入る
絨毯が敷かれた華やかな執務室、窓からは太陽の光が差し込む明るい部屋
執務机の前に、血を流し倒れている父親・龍一郎の姿がある
妃燈「父さま……?」
※生存を確認するように、膝をついて龍一郎にすがる
物音が聞こえ顔を上げる妃燈
妃燈の目の前には、刀を手にする蒼牙
その刀は血で汚れている
妃燈「おまえが! おまえが父さまを殺したのか!」
※身体を震わせながら蒼牙を睨む
蒼牙「そうだと言ったら、どうする?」
※冷ややかな目線で妃燈を見下ろす
妃燈が立ち上がり、蒼牙に向かって手を伸ばし、刀を奪い取る
蒼牙は妃燈が自分に向かってくるものだと思って身構えるが、妃燈はその切っ先を妃燈自身に向けた
妃燈「わたしは、父さまを殺すために生きてきた」
※切っ先を自分の首元に涙を流し、唾も飛ばしながら蒼牙に訴える
妃燈「こいつが死んだ今、生きる意味なんてない!」
妃燈が自害しようとしたところ、蒼牙は指をはじいて小さな光の玉(浄力)を放つ
光の玉を受けたヒロインはその場で崩れ落ち、気を失う
小さな身体の妃燈を黙って抱き上げるが、思っていたよりも軽かったため目を見開く蒼牙
蒼牙M(軽いな……)
蒼牙M(それにこれは、邪力……この娘は半妖か?)
だぼっとした服の隙間から見えた妃燈の肩には、鞭で打たれたような跡がある
蒼牙M(だが、あれを父と呼んだ……)
妃燈から邪力(灰色)を感じて顔をしかめると、彼女の乱れた前髪の隙間から額に透けるような小さな角が1本だけ見える
もう一度、龍一郎の亡骸を睨みつける
蒼牙M(無理やり、妖鬼人に産ませたのか? この下衆が!)
※ギリギリと奥歯を食いしばり、怒りに満ちた表情
○回想
妃燈N「この世界には浄力を使う払鬼人と、邪力を使う妖鬼人がいる」
妃燈N「邪力は汚染と混沌を広げ、浄力はそれらを浄化する」
※浄力は白、邪力は灰色のエフェクト
※妖鬼人には額に角がある
妃燈N「反発し合う力を持つ彼らは、何百年も昔から争いを続けてきた」
妃燈N「表面上は払鬼人と妖鬼人が和解したように見えるが」
※払鬼人と妖鬼人が握手している
妃燈N「一部の妖鬼人は払鬼人に支配され、搾取されている」
※払鬼人が高笑いして、妖鬼人を足蹴にしている
○洋風の城館:焔陽国、紅谷家
みすぼらしい着物、頭には三角巾をつけた妃燈(16歳)が屋敷の床のぞうきんがけをしている
前髪は長く、手はあかぎれており、うつろな目でにこりともしない
女使用人「ちょっと、旦那様が呼んでいるよ」
※両手を腰に手を当て、妃燈を見下ろす
妃燈「はい……」
※使用人とは目を合わせない
よろよろ立ち上がりぞうきんとバケツを片づけようとしたところ
女使用人「旦那様を待たせるんじゃないよ」
ぞうきんとバケツをそのままにして、妃燈は2階の執務室へ向かおうとするが、背後でびしゃっと水がこぼれる音が聞こえた
それを無視して、表情を変えぬまま2階の執務室の扉をたたく
妃燈「お呼びですか? 父さま」
豪奢な執務室内、執務席に座る中年男性が、射抜くような視線で妃燈を睨みつける
T:焔陽国君主、紅谷龍一郎
妃燈N「焔陽国を治める紅谷家の当主、龍一郎」
妃燈N「この男は、どうやらわたしの父親らしい」
※表情を殺したまま、龍一郎の向かい側に立つ
龍一郎「妖鬼人の子どもを二人つれてこい」
※机の上に両肘をつき、手を組んだ上に顎をのせたまま
龍一郎「逆らったら、どうなるかわかっているな?」
妃燈「はい」
※表情を変えず頭を下げる
執務室を出て屋根裏部屋へと向かう妃燈
妃燈M(わたしは、父さまの言葉には逆らえない)
妃燈M(それがいけないことだとわかっていても)
妃燈M(だって、母さまが大事だから……)
軋む階段を上がり、屋根裏部屋に入るヒロイン
ござが敷いてあり、薄い布団をかけて横になっている成人女性
静かな室内に女性の呼吸音だけが響く
妃燈は床に膝をついて女性に声をかける
妃燈「出かけてきます」(妖鬼人の言葉)
※払鬼人と妖鬼人の言葉は異なる(日本語と英語みたいなイメージ)
※表情を変えない
音に反応して女性の身体が動く
女性「あっ……あっ……」
※しゃべることができない
女性は妃燈の存在を認識しており、妃燈に向かって切なげな眼差しを向けながら手を伸ばす
女性の額には小さな角が1本ある
妃燈はその手を両手で握りしめて、女性を安心させるように微笑むがどこか苦しみを帯びたようなもの
妃燈「母さま、すぐに戻ってくるから」(妖鬼人の言葉)
※母と握る手は微かに震えている
女性の手をかけ布団の中にしまい込むと、着替え始める
妃燈M(わたしはこれから、妖鬼人の子どもをさらってくる)
ぼろぼろの着物から、飾り気の少ない清楚なワンピース姿に
妃燈M(いえ、貧しい彼らにご飯をあげるだけ)
髪も自分で梳かしてざっくり三つ編みにする
前髪をおろして額を隠す
妃燈M(だけど、ここに来た子たちは……)
※淡々とした表情
見た目は清楚な少女になった妃燈
女性が静かに寝息を立てているのを確認したら、屋根裏部屋を出る
○外 焔陽の街(明治・大正のような街並み)
お供もつれず、一人で歩く妃燈
妃燈N「払鬼人が住む玄煌帝国には4つの属国がある」
妃燈N「妖鬼人と戦うため、彼らは手を結んだ」
大通りから裏通りへ向かって歩く
妃燈N「その属国のうちの一つ。紅谷家が君主を務める、焔陽国」
妃燈N「華やかな場所にいるのは払鬼人」
さびしい裏通りは、木造の平屋の建物が並ぶ
その建物もどこかぼろぼろ
妃燈N「争いに負けた妖鬼人は、街の隅でひっそり暮らしている」
雨上がりなのか道には水たまりがあり、そこに妃燈の姿が移る
妃燈M(わたしは、中途半端な存在)
※水たまりに映る自分(角なし)を見て
建物の裏、寄りかかって座る兄妹と思われる子どもが二人(6歳と4歳)
子どもの額にはそれぞれ小さな角が一本映えている
妃燈M(妖鬼人の子どもが二人……)
子どもに近づく妃燈
妃燈「こんにちは」(妖鬼人の言葉)
※子どもと目線の高さを合わせて
子どもたちは生気の宿らぬ目で妃燈を見つめる
妃燈「払鬼人の貴族様が、ご飯を食べさせてくれるって」(妖鬼人の言葉)
前髪を上げて額を見せると、今までなかった角が見え始める(半妖であるため、角を見せたり隠したりできる)
妃燈の角を見て安心したのか、瞳を大きく開けて期待を寄せてくる子どもたち
妃燈「一緒に行こう?」(妖鬼人の言葉)
※子どもたちに手を差し伸べる。
妃燈を妖鬼人だと思い、妹が妃燈の手をとり笑顔で立ち上がる
兄のほうも立って、妃燈たちの後ろをついて歩く
他からは、払鬼人の子ども(角を隠した妃燈)が妖鬼人の子どもをつれて歩いているように見え、すれ違いざまに怪訝そうに見てくる人もいる、興味本位の人もいる
他人の視線は気にせず、ずんずんと歩く妃燈たち
妃燈はどこか笑顔で、妹も同じように笑顔、兄だけはびくびくと周囲をうかがっている
○紅谷邸本館
妃燈「ここが、紅谷家のお屋敷だよ」(妖鬼人の言葉)
屋敷を見て、放心する兄妹
妃燈「こっちよ。こっちにご飯を準備してあるの」(妖鬼人の言葉)
妹の手を引っ張り裏口から屋敷の中へ
龍一郎の部下(男)が控えており兄妹をつれていく
部下1「こっちでご飯をお食べ」
言葉がわからないため、妹が不安そうに妃燈を見つめてきたが、笑顔でうなずき返す妃燈
妹の顔が明るくなり、部下1の手をとって屋敷に奥に消えていく
その背を黙って見つめる妃燈
部下2「ほら、報酬だ」
※面倒くさそうな表情で
部下2から報酬として小瓶を受け取った妃燈
妃燈「ありがとうございます」
※淡々とした表情で
屋根裏部屋へと戻る妃燈
妃燈M(母さまの薬のために、罪のない妖鬼人が犠牲になっている)
※小瓶をぎゅっと握りしめる妃燈
○屋根裏部屋
妃燈「母さま、ただいま。お薬をもらってきたよ」(妖鬼人の言葉)
寝ている女性の身体を起こし、薬を飲ませる妃燈
妃燈「ゆっくり飲んで」(妖鬼人の言葉)
妃燈M(いつか、元気になった母さまとここを出ていくために)
妃燈N「……だけど、その夢は叶うことはなかった」
○数日後の屋根裏部屋
掃除、洗濯を終え、部屋に戻ってきた妃燈
乱れた室内、衣類や寝具がちらかっている
妃燈「母さま!」(妖鬼人の言葉)
※毛布一枚にくるまって寝ている母親の隣に膝をつく
誰かに殴られたように顔が腫れている母親
妃燈「母さま! 誰がこんなことを?」(妖鬼人の言葉)
閉じていた目を開けた母親は、妃燈に向かって手を伸ばし、声にならない声で「に・げ・て」と妖鬼人の言葉で訴える
母親の手をしっかり両手で握りしめながら、首を横に振る妃燈
母親の身体から力が抜けていき、瞼も閉じられる
妃燈「母さま! 母さま!」(妖鬼人の言葉)
ぴくりとも動かない母親に、必死になって声をかける妃燈
N:ナレーション
T:テロップ
○洋風の3階建ての城館、焔陽国、紅谷家
館内は和洋折衷であり、パーティーを行うような大ホール、和室などがある
軍服姿の男たち(胸には碧浪国の紋章、碧浪隊)が館内に突入し、すべての部屋をくまなく捜索する
軍服姿(他よりも勲章などが多い)の蒼牙(黒髪、黒目)。
T:碧浪国軍隊長、天晴蒼牙
違和感のある壁に触れると隠し扉が開き、地下へ通じる階段が現れる
ブーツ音を響かせ、片手に刀を持ちながら階段を下りる
薄暗い地下牢に閉じ込められ、だぼっとした巻頭服を着ている妃燈(16歳、このときはまだ名前はない)(ぼさぼさの茶色の背中までの長い髪、青い目)は、足に枷をかけられ、がりがりに痩せ、うつろな目をしている
蒼牙が地下牢を開けて枷を外して妃燈を助けると、妃燈は素早く蒼牙の隙間を抜け、地下から上階へと駆け上がっていく
蒼牙「おい、待て」
※妃燈を捕まえようと手を伸ばす
その手をするりと交わす妃燈
妃燈を慌てておいかける蒼牙
妃燈はまっすぐ城館2階の執務室へと向かうが、まぶしさに目を細くする
次第に目は慣れてくる
妃燈「父さま!」
※執務室の扉を開け、中に入る
絨毯が敷かれた華やかな執務室、窓からは太陽の光が差し込む明るい部屋
執務机の前に、血を流し倒れている父親・龍一郎の姿がある
妃燈「父さま……?」
※生存を確認するように、膝をついて龍一郎にすがる
物音が聞こえ顔を上げる妃燈
妃燈の目の前には、刀を手にする蒼牙
その刀は血で汚れている
妃燈「おまえが! おまえが父さまを殺したのか!」
※身体を震わせながら蒼牙を睨む
蒼牙「そうだと言ったら、どうする?」
※冷ややかな目線で妃燈を見下ろす
妃燈が立ち上がり、蒼牙に向かって手を伸ばし、刀を奪い取る
蒼牙は妃燈が自分に向かってくるものだと思って身構えるが、妃燈はその切っ先を妃燈自身に向けた
妃燈「わたしは、父さまを殺すために生きてきた」
※切っ先を自分の首元に涙を流し、唾も飛ばしながら蒼牙に訴える
妃燈「こいつが死んだ今、生きる意味なんてない!」
妃燈が自害しようとしたところ、蒼牙は指をはじいて小さな光の玉(浄力)を放つ
光の玉を受けたヒロインはその場で崩れ落ち、気を失う
小さな身体の妃燈を黙って抱き上げるが、思っていたよりも軽かったため目を見開く蒼牙
蒼牙M(軽いな……)
蒼牙M(それにこれは、邪力……この娘は半妖か?)
だぼっとした服の隙間から見えた妃燈の肩には、鞭で打たれたような跡がある
蒼牙M(だが、あれを父と呼んだ……)
妃燈から邪力(灰色)を感じて顔をしかめると、彼女の乱れた前髪の隙間から額に透けるような小さな角が1本だけ見える
もう一度、龍一郎の亡骸を睨みつける
蒼牙M(無理やり、妖鬼人に産ませたのか? この下衆が!)
※ギリギリと奥歯を食いしばり、怒りに満ちた表情
○回想
妃燈N「この世界には浄力を使う払鬼人と、邪力を使う妖鬼人がいる」
妃燈N「邪力は汚染と混沌を広げ、浄力はそれらを浄化する」
※浄力は白、邪力は灰色のエフェクト
※妖鬼人には額に角がある
妃燈N「反発し合う力を持つ彼らは、何百年も昔から争いを続けてきた」
妃燈N「表面上は払鬼人と妖鬼人が和解したように見えるが」
※払鬼人と妖鬼人が握手している
妃燈N「一部の妖鬼人は払鬼人に支配され、搾取されている」
※払鬼人が高笑いして、妖鬼人を足蹴にしている
○洋風の城館:焔陽国、紅谷家
みすぼらしい着物、頭には三角巾をつけた妃燈(16歳)が屋敷の床のぞうきんがけをしている
前髪は長く、手はあかぎれており、うつろな目でにこりともしない
女使用人「ちょっと、旦那様が呼んでいるよ」
※両手を腰に手を当て、妃燈を見下ろす
妃燈「はい……」
※使用人とは目を合わせない
よろよろ立ち上がりぞうきんとバケツを片づけようとしたところ
女使用人「旦那様を待たせるんじゃないよ」
ぞうきんとバケツをそのままにして、妃燈は2階の執務室へ向かおうとするが、背後でびしゃっと水がこぼれる音が聞こえた
それを無視して、表情を変えぬまま2階の執務室の扉をたたく
妃燈「お呼びですか? 父さま」
豪奢な執務室内、執務席に座る中年男性が、射抜くような視線で妃燈を睨みつける
T:焔陽国君主、紅谷龍一郎
妃燈N「焔陽国を治める紅谷家の当主、龍一郎」
妃燈N「この男は、どうやらわたしの父親らしい」
※表情を殺したまま、龍一郎の向かい側に立つ
龍一郎「妖鬼人の子どもを二人つれてこい」
※机の上に両肘をつき、手を組んだ上に顎をのせたまま
龍一郎「逆らったら、どうなるかわかっているな?」
妃燈「はい」
※表情を変えず頭を下げる
執務室を出て屋根裏部屋へと向かう妃燈
妃燈M(わたしは、父さまの言葉には逆らえない)
妃燈M(それがいけないことだとわかっていても)
妃燈M(だって、母さまが大事だから……)
軋む階段を上がり、屋根裏部屋に入るヒロイン
ござが敷いてあり、薄い布団をかけて横になっている成人女性
静かな室内に女性の呼吸音だけが響く
妃燈は床に膝をついて女性に声をかける
妃燈「出かけてきます」(妖鬼人の言葉)
※払鬼人と妖鬼人の言葉は異なる(日本語と英語みたいなイメージ)
※表情を変えない
音に反応して女性の身体が動く
女性「あっ……あっ……」
※しゃべることができない
女性は妃燈の存在を認識しており、妃燈に向かって切なげな眼差しを向けながら手を伸ばす
女性の額には小さな角が1本ある
妃燈はその手を両手で握りしめて、女性を安心させるように微笑むがどこか苦しみを帯びたようなもの
妃燈「母さま、すぐに戻ってくるから」(妖鬼人の言葉)
※母と握る手は微かに震えている
女性の手をかけ布団の中にしまい込むと、着替え始める
妃燈M(わたしはこれから、妖鬼人の子どもをさらってくる)
ぼろぼろの着物から、飾り気の少ない清楚なワンピース姿に
妃燈M(いえ、貧しい彼らにご飯をあげるだけ)
髪も自分で梳かしてざっくり三つ編みにする
前髪をおろして額を隠す
妃燈M(だけど、ここに来た子たちは……)
※淡々とした表情
見た目は清楚な少女になった妃燈
女性が静かに寝息を立てているのを確認したら、屋根裏部屋を出る
○外 焔陽の街(明治・大正のような街並み)
お供もつれず、一人で歩く妃燈
妃燈N「払鬼人が住む玄煌帝国には4つの属国がある」
妃燈N「妖鬼人と戦うため、彼らは手を結んだ」
大通りから裏通りへ向かって歩く
妃燈N「その属国のうちの一つ。紅谷家が君主を務める、焔陽国」
妃燈N「華やかな場所にいるのは払鬼人」
さびしい裏通りは、木造の平屋の建物が並ぶ
その建物もどこかぼろぼろ
妃燈N「争いに負けた妖鬼人は、街の隅でひっそり暮らしている」
雨上がりなのか道には水たまりがあり、そこに妃燈の姿が移る
妃燈M(わたしは、中途半端な存在)
※水たまりに映る自分(角なし)を見て
建物の裏、寄りかかって座る兄妹と思われる子どもが二人(6歳と4歳)
子どもの額にはそれぞれ小さな角が一本映えている
妃燈M(妖鬼人の子どもが二人……)
子どもに近づく妃燈
妃燈「こんにちは」(妖鬼人の言葉)
※子どもと目線の高さを合わせて
子どもたちは生気の宿らぬ目で妃燈を見つめる
妃燈「払鬼人の貴族様が、ご飯を食べさせてくれるって」(妖鬼人の言葉)
前髪を上げて額を見せると、今までなかった角が見え始める(半妖であるため、角を見せたり隠したりできる)
妃燈の角を見て安心したのか、瞳を大きく開けて期待を寄せてくる子どもたち
妃燈「一緒に行こう?」(妖鬼人の言葉)
※子どもたちに手を差し伸べる。
妃燈を妖鬼人だと思い、妹が妃燈の手をとり笑顔で立ち上がる
兄のほうも立って、妃燈たちの後ろをついて歩く
他からは、払鬼人の子ども(角を隠した妃燈)が妖鬼人の子どもをつれて歩いているように見え、すれ違いざまに怪訝そうに見てくる人もいる、興味本位の人もいる
他人の視線は気にせず、ずんずんと歩く妃燈たち
妃燈はどこか笑顔で、妹も同じように笑顔、兄だけはびくびくと周囲をうかがっている
○紅谷邸本館
妃燈「ここが、紅谷家のお屋敷だよ」(妖鬼人の言葉)
屋敷を見て、放心する兄妹
妃燈「こっちよ。こっちにご飯を準備してあるの」(妖鬼人の言葉)
妹の手を引っ張り裏口から屋敷の中へ
龍一郎の部下(男)が控えており兄妹をつれていく
部下1「こっちでご飯をお食べ」
言葉がわからないため、妹が不安そうに妃燈を見つめてきたが、笑顔でうなずき返す妃燈
妹の顔が明るくなり、部下1の手をとって屋敷に奥に消えていく
その背を黙って見つめる妃燈
部下2「ほら、報酬だ」
※面倒くさそうな表情で
部下2から報酬として小瓶を受け取った妃燈
妃燈「ありがとうございます」
※淡々とした表情で
屋根裏部屋へと戻る妃燈
妃燈M(母さまの薬のために、罪のない妖鬼人が犠牲になっている)
※小瓶をぎゅっと握りしめる妃燈
○屋根裏部屋
妃燈「母さま、ただいま。お薬をもらってきたよ」(妖鬼人の言葉)
寝ている女性の身体を起こし、薬を飲ませる妃燈
妃燈「ゆっくり飲んで」(妖鬼人の言葉)
妃燈M(いつか、元気になった母さまとここを出ていくために)
妃燈N「……だけど、その夢は叶うことはなかった」
○数日後の屋根裏部屋
掃除、洗濯を終え、部屋に戻ってきた妃燈
乱れた室内、衣類や寝具がちらかっている
妃燈「母さま!」(妖鬼人の言葉)
※毛布一枚にくるまって寝ている母親の隣に膝をつく
誰かに殴られたように顔が腫れている母親
妃燈「母さま! 誰がこんなことを?」(妖鬼人の言葉)
閉じていた目を開けた母親は、妃燈に向かって手を伸ばし、声にならない声で「に・げ・て」と妖鬼人の言葉で訴える
母親の手をしっかり両手で握りしめながら、首を横に振る妃燈
母親の身体から力が抜けていき、瞼も閉じられる
妃燈「母さま! 母さま!」(妖鬼人の言葉)
ぴくりとも動かない母親に、必死になって声をかける妃燈



