聖女の双子の姉に転生しましたが攻略対象の様子がおかしい~妹のために動いたら、私が落とされました~

学年末式典の前日、クロードから一通の手紙が届いた。

『明日、会えることを楽しみにしている。
式典の後、少し時間をもらえるか?二人で話したい』

短い文章。
でも、読んだだけで心臓がうるさくなる。
たった数行なのに、呼吸の位置がずれる。指先まで落ち着かない。

「来たね」

セリアが隣から覗き込んで、にやりとした。

「返事は書いた?」
「『はい』って書いた」
「それだけ?」
「それだけ」
「マリアンナ……せめてもう少し——」
「それ以上書けなかった!!」

セリアがころころ笑った。
だって仕方がない。前世では乙女ゲームばかりで、リアルの男性と付き合ったこともない。
まして本気で好きになったこともなかった。
『攻略』の手順は知ってるのに、『向き合う』の作法が分からない。

「まあいいよ。明日、実際に話せるんだから」
「……そうだね」
「緊張してる?」
「めちゃくちゃ」
「正直でよろしい」
「うるさい」

そう言い返しながら、セリアが笑っているせいで、つられて笑ってしまう。
胸の奥の固さが、少しだけほどけた。

「……セリア」
「うん?」
「あのね、今更だけど——ありがとう」
「なにが?」
「色々。転生してから、ずっと一緒にいてくれて。教えてくれて。応援してくれて」

セリアが私を見た。

「それはこちらのセリフだよ。マリアンナがいなかったら、私もこんなに安心して学院生活を送れなかった。『影の教団』の件でも、何度も助けてもらったし——」
「でも、セリアも転生者だったんだから、一人でも——」
「一人じゃやだ」

セリアが、すぱっと迷いなく言い切る。

「一人でもできたかもしれない。でも、マリアンナと一緒がよかった。双子に生まれてきて、本当によかった」
「……私も」
「ね」
「ね」

二人でくすくす笑った。
笑いながら、なんだか少しだけ泣きそうになるのが困る。

「明日、頑張って」
「うん」
「私、式典の間、全力で応援してるから」
「式典中は応援しなくていい。普通にしてて」
「式典の後ね。聖女の力フルで使っちゃう」
「それっていいの……?」
「普通より強いかもしれないよ」
「根拠がない」
「でも信じて」
「……信じるよ」

その夜はセリアのベッドで、二人で寄り添って眠った。
転生した時と、同じように。
不思議と、しっかり眠れた。
胸のざわつきが、毛布の下で静かになる。

ぐっすりと、深く——翌朝まで。

生まれる前からお母様のお腹の中で一緒だったんだから、当然かもしれない。
妹の言葉で安心できるのは、それだけ信頼があるということだ。

(明日、ちゃんと話す)

眠る前に、心に刻んだ。