あやかしの癒し子〜祓い屋の出来損ないは、鬼の王の最愛〜

 次に奈津が目を覚ました時。
 最初に感じたのは、微かな温もりだった。

 「……ん……」

 重たい瞼をゆっくりと開く。

 見慣れない天井。
 静かな部屋。

 そして――すぐ近くに、人の気配。

 奈津はぼんやりと顔を上げた。

 白銀の髪が、さらりと視界へ落ちる。

 長い睫毛。
 整いすぎるほど美しい横顔。
 夜を溶かしたような、深い紫の瞳。

 あまりにも近い距離。
 そこで初めて、自分が誰かの腕の中に抱きかかえられていることに気づく。

 「……だ、れ……」

 掠れた声が零れた。

 すると男は、奈津を抱いたまま静かに目を細める。

 「……やっと起きたか」

 低く落ち着いた声。

 その瞬間。
 奈津は目を見開いた。

 「……っ」

 この声を、知っている。

 青年が静かに奈津を見つめる。

 「奈津」

 初めて呼ばれる、自分の名前。
 胸が、大きく跳ねた。

 「……紫鬼、様……?」