そんな片想い、偽物だろ

***

「心、結局お前らどこにいたんだよ」

「は?」

「肝試しだよ。神谷とお前だけいなかったろ」
「確かに、俺も見てない」
「お前らだけお札も持ってなかったよな」

放課後、委員の仕事もないしさっさと帰ろうと立ち上がった瞬間、いつメンに引き止められた。

昨日まで山の中にいた事が信じられないほど日常すぎて、小さく息を吐く。

「俺、元々肝試しは──」

「おい、待て。あれ神谷じゃね!?」

言い訳を絞り出そうとしたタイミングで重なった山崎の声に、無意識に反応して言葉を止める。
山崎達の視線は窓の外に向いていて、俺も自然と同じ方に視線を向けた。

……なのに、それが一瞬で後悔に変わった。

校門に向かって笑いながら歩く真。
その隣には、鈴原春香。
一緒に帰る二人は、やっぱりお似合いだった。

「は!?あいつ、彼女居たの?」
「しかもめっちゃかわいくね?」
「心、まさかお前、知ってたのか!?」

なんで、そんなこと俺に聞くんだよ。

「……知らない」

知りたくもない。
てか、昨日の夜のあれはなんだったんだ。なんか俺、バカみたいじゃん。

「てか!今日部活ないしさ、合宿頑張ったご褒美ってことで、カラオケ行くんだけど、心も行こーぜ!」

「俺、やめとく」

盛り上がる山崎達を残して、足早に学校を出た。

さっさと帰って寝よう。
真の事なんて、考えない。
そう決めたばかりだったのに……。

「心!やっと来た。もう帰ったかと思った」

校門を出てすぐ、普段と変わらない真が俺を呼び止めた。

……なんでいるんだよ。
さっき山崎達と見た光景が頭をよぎって、逃げるように歩き出す。

「あっ、おい!待てよ」

すぐに追いついて来た真は、軽く息を切らしながら俺の腕をつかんだ。

「……なんだよ」

「今日俺、部活ないからさ、一緒に帰れる?心と行きたいとこ──」

「無理。さっき鈴原と帰ったんじゃないの?」

真の言葉を遮るように、無意識に冷たい言葉を吐いた。

「心……?」

目を見開いて固まっている真を見ても、言葉は止まらない。

「だいたいさ、鈴原いるのに、手繋いで来たりさ、今だって…なんなんだよ」

違う。
こんな事が言いたいわけじゃない。

「”拓也”に恋してるって言ったよな?なのに、なんだよ!俺にも、鈴原も!」

優しくしたいのにできない、自分への苛立ちも止められなかった。

「ほんと、訳わかんねえ」

「……ご…めん、俺」

ぽつりと呟いた真の顔からは、段々と光が消えていく。
それなのに、掴まれた腕は離されないまま。
簡単に振りほどけるはずなのに、それが出来なくて、真が好きなんだと思い知らされた。

「心、聞けよ。俺…ちゃんと好きな人──」

「聞きたくない。真の気持ちなんて、どうせ全部”偽物”だろ」

鈴原が好きだなんて、真の口から聞きたくなくて、再び真の言葉を遮った。

その直後、掴んでいた俺の腕をそっと離して呟いた真の声は、さっきよりも少し冷たくなった気がした。

「俺の気持ちは、俺にしかわかんないだろ。……またな、心」

それだけ言って去っていく真の背中が、滲んで見えなくなっていく。追いかけることも、溢れる涙を止めることも出来ないまま。
胸の奥は、後悔でいっぱいだった。

その日の夜は、何度目を閉じても真の顔が浮かんできて、ほとんど眠れなかった。