そんな片想い、偽物だろ

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「鈴原 春香です。真くんと、友達になったばかりで……」

ため息すら出ないなんて初めてだった。

いつも通り委員の仕事を終えて、帰ろうとした時、俺を引き止めるように保健室の扉が開いた。固まったままの俺に勝手に自己紹介を始めたのは、”鈴原 春香”という昨日真に告白していた女子。その横には何も言わないまま気まずそうに立っている真。

今一番会いたくない二人が立っていた。

「あー……っと、俺もう帰るとこなんだけど、怪我とか?」

「あの、心くんって……甘いもの好きですか?」

「まあ……好き、ではあるけど」

そんなの聞いてどうしたいんだ。
真も何も言わないし、なんなんだ一体。

「じゃあもし……良かったら」

「ごめん。俺、用事思い出したから帰る!」

鈴原春香が何か言いかけたと同時に、真が口を開いたと思えば、踵を返して出て行った。

「あっ!ちょっと、真くん!!」

ほんと、昨日からなんなんだあいつ。
てか、鈴原だっけ?追いかけないの?

真が出て行ってしばらく沈黙が落ちた。
数秒……いや、数分かもしれない。
気まずさに耐えきれなくなって、俺が先に沈黙を破った。

「あの……俺、帰っていい?」

「えっ」

いやいや、そんな困った顔されても、困ってるの俺の方だと思うんだけど。

「帰んないの?」

再び数秒の沈黙のあと、俯きながら口を開いた彼女の言葉は予想外だった。

「少し、話したいな」

正直、俺は話したくない。

「真のこと、追いかけなくてよかったの?」

「部活の後だったし、疲れちゃってたのかな……」

「あいつ、今日は部活行ったんだ」

「仲良いんだね、真くんと」

「うん……まあ」

悪くはなかったよ、君が現れるまでは。

「あの、心くんって……好きな人とかいる?」

好きな人、か。
昨日も聞かれたな、真に。

「いない、けど」

「……そっか。それなら、もしよかったら私と仲良くして欲しいな」

それって、真に近づきたいから?
……でも、俺。
真を好きなやつと仲良くなるなんて、できない。

「……ごめん、俺帰るね」

保健室を飛び出して、無意識に真を追いかけた。
もうとっくに帰っているはずなのに。

正門まで来て、足を止めて辺りを見渡した。真の姿はやっぱりなくて、ただ心臓がズキズキ痛かった。

出来ればずっと、認めたくなかった。
あいつにとって俺はただの友達だから。
でも……この痛み、この気持ちを誤魔化すことはできそうにない。

「俺、真が好きだ……」

悔しいけど、俺の片想いは”本物”だ。