そんな片想い、偽物だろ

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「心、おつかれー!ってごめん起こした?」

聞き慣れた声が聞こえて目を開けると、真がいつもの椅子に座っている。

「……今、何時?」

「もうすぐ六時半だよ」

どうやらあのまま寝ていたらしい。
ようやく目が覚めてくると、少しずつ状況を理解し始める。真がここにいるってことは。

「怪我?今日はどこ」

「それがさ俺、今日怪我しなかったんだ」

怪我しないのが普通だし、部活のたび怪我してるの真くらいだろ。なのに、なんだよ、その笑顔。

「なら、なんでここに?」

「え、だめだった?」

「いや、ここ保健室だぞ」

「知ってる。心と話したかったから来た」

は?またそういう事言う?
心臓が変な音を立てた。

てか、さっきのお似合いのあの子と帰るんじゃねえのかよ。連絡先交換してたし。

「話すって何をだよ、俺もう帰るけど」

「そんな事言うなよ。もしかして起こしちゃったの、怒ってる?」

「は?別に怒ってない」

いや、怒ってる?
なんか……真に優しくできない。

「俺今日さ、いつもみたいに集中できなくて」

「部活?」

「うん、なんか今日は拓也様も出てきてくれないし、やる気も湧いてこなくて」

あの子が気になってるからだろ。
なんて言えないし、なんかもう聞きたくなかった。

そんな俺の心中は伝わるはずもなく、真の言葉は続く。

「心ってさ、好きな人いるの?」

「……は?」

あまりに唐突な真の言葉。
思わず間の抜けた声が漏れた。

「気になってる人とか、いないの?」

わからない。だから答えられない。
真の顔も、ちゃんと見れなかった。

「ごめん。突然こんな話……」

しばらく沈黙が落ちて、その気まずさに耐えきれなくなって、立ち上がる事しか出来なかった。

「俺、そろそろ帰るわ」

扉に手を伸ばした時、反対側から先に扉が開けられて、反射的に後ずさった。

「心ー!捻挫したかも……って神谷!?」

左足を庇いながら入ってきた山崎は、真の顔を見て、パチパチと瞬きをして固まっている。

「心、俺帰るね。山崎もまたな」

「あっ、おい……神谷!」

逃げるように保健室を出て行く真の様子は、明らかにおかしかった。

「あいつ、神谷いつからここにいた?」

「え?……っと六時半とか。部活終わってからじゃない?」

真が保健室にいることなんて、今さら珍しくもないのに。

「まじか……」

何かを考えているような不思議な表情のまま、それ以上何も言わない山崎を見て、俺まで不思議に思えてくる。

「捻挫、痛むとこ見せて」

「ああ、ここなんだけど……」

「結構腫れてるな。あんまり痛むようなら、病院行った方がいいと思う。とりあえず応急処置しとく」

「ああ、悪いな……で、神谷なんだけどさ、あいつなんか言ってた?」

「いや、なんも」

イラついていて、まともに会話しなかった……なんて言えない。

「神谷、今日部活来なかったんだよ」

は?真が部活に行ってない?
そんなこと一言も言ってなかった。
いや、俺が真の話を聞こうとしなかっただけか。

「絶対なんかあったよな、ってみんなで話してた。誰もなんも知らなくてさ、心も知らないかあ……」

告白されてたことは知ってる。
でも、今それを話す気にはなれなかった。

「できた。応急だから、腫れ引かないようなら病院な」

「おう。遅くまで悪かったな」

処置を終えて山崎が出て行った扉をしばらく見つめたまま、動けなかった。