勝手に射抜いてんじゃねぇよ


 今日から3泊4日の修学旅行in北海道。新千歳空港に着いた2組、3組、7組は、どのクラスもハイテンションだ。
「うぉー!北海道ー!!」
もちろん、誰よりも興奮しているのは里村。

 初日の今日はクラスごとに札幌の観光名所巡り、明日は小樽へ行き、班ごとに行動する。こんなにも里村と同じクラスで良かったと思った日はない。
 付き合う前にホテルの部屋割りを決めたため、全日里村とは別室だ。そのため俺と里村が一緒に行動できるのは、今日のクラス行動のみ。
 …あわよくばツーショット撮りてぇな。


 なんて思ってたけど、結局里村のそばには伊永たち陽キャが常にいて、普段仲良しキャラでもない俺がツーショットを撮るタイミングは無かった。おまけに、ホテルでの夕食バイキングの席も離れていて、里村が何を食ったのかも見れなかった。

 そして、ホテルの部屋のベッドで撃沈中の今に至る。
「宗馬ー、シャワー先浴びる?」
同室の桔平が聞いてきた。
「いや、先入ってきていいよ」
「りょーかい」

 シャワーの音が小さく聞こえる部屋で、1人考える。
 修学旅行前にデートしてて正解だったな。これ、してなかったら俺今ごろ灰になってたかも。一緒に行動できないだろうからって言ってた里村の想像力に完敗だわ。…つーか、付き合って数日なのに、こんな会いたくなるとか、俺そんなキャラだったか?…はぁ、残り3日間、里村を遠くに感じるもどかしい時間が始まるのか…。


 シャワーを浴び終え、スマホを確認するとちょうど里村から連絡がきた。
『コレコレが10分くらい他の部屋行くみたいなんだけど、こっち来る?』
 まさかのお誘いに、シャワーでホクホクした身体がさらに熱くなる。
「桔平、俺ちょっと出てくるわ」
「はいよー。点呼までには帰っておいでなー」
「もちろん」

 4つ分横の部屋をノックした。
…コンコンコンッ……ガチャッ…
「いらっしゃい!」
「…お邪魔します…」

 「連絡気付いてくれてよかったぁ」
ベッドサイドに座った里村は嬉しそうだ。
「ちょうどシャワーから出た時にきたから」
「タイミングばっちしじゃん!…隣どーぞ」
「うん…」

 「好きな人との10分って、体感15秒じゃね!?」
隣に座った俺に問いかける。
「マッハじゃん」
「やばいやばい急がなきゃ。コレコレが戻ってくる前に、触れときたい!」
「え、触れる!?でも、早く戻ってきたら…」
「…わかった。鍵閉めとく!」

 内鍵を閉めた里村は、ベッドに上がり後ろから抱きしめてきた。
…ドキッ…
「荒木…良い匂いする…」
耳元で優しく囁かれ、鼓動が激しくなる。
 腰あたりを持たれた俺は、くるっと回されて、足もベッドの上へ。向き合う形になった里村は、静かな甘いモードに入っている。
「…。」
ゆっくりと顔が近づいてきて、キスをした。
「…ちゅ…ちゅっ…」
 ぐっと身体を引き寄せられ、キスは濃密になってゆく。
「…んっ…くちゅっ…ちゅ…」
今日1日遠くに感じていた里村をダイレクトに感じて、嬉しさが込み上げてくる。

 唇が離れ、俺を見つめる里村。
「… あのさ、2人きりの時だけでいいから、今度から下の名前で呼んでほしい」
「え、下の名前…」
「俺の下の名前、知ってる?」
「うん……真那斗、だろ?」
「正解っ。俺も下の名前で呼んでいい?」
「いいに決まってんじゃん」
「…宗馬」
「…っ」
名前を呼ばれただけなのに、好きが溢れてくる。

 「今日ほんとは、ツーショット撮りたいって思ってたんだけど…だから、明日以降でタイミング合えば撮りたい…」
密会終了まであと3分。少し照れながら言ってみた俺をまた抱きしめる里村。
「絶対撮ろ!!せっかくだし、北海道感のある背景で撮りたいよな」
「うん」
「インカメで自分たちで撮ってもいいけど、全身撮るなら…関根っちに頼むか」
「あー、確かに桔平なら頼みやすい」
「んじゃ、明日か明後日撮ってもらお!」
「了解」

 10分間はあっという間で、まだまだ一緒にいたいと思った。伊永、部屋変わってくんねーかなって本気で考えるぐらい。
「じゃ、おやすみ」
「うん、おやすみ…ちゅ」
誰か見てるかもしれないのに、おでこにキスをされた。
「…っ」
「また明日」



 翌日、午前中に白い恋人パークに行き、午後からはクラスごとに小樽へ移動していく。
 小樽に着くと、班に分かれる前にで小樽運河をバックにクラス写真を撮った。
 「じゃあ、こっからは班別行動だから分かれろー」
担任の指示でみんながごちゃごちゃ動く中、ぐっと誰かに腕を掴まれた。
…!?
「荒木」
掴んだのは里村だった。
「写真撮ろ!…あ、関根っち、荒木とのツーショットお願いしていい?」
「おっけー」

 運河を背景に横並びで無難にピースをした。
…カシャっ…
「関根っち、ありがと!」
「いえいえ」
「んじゃ、2人ともまた後でな」
1枚だけ撮ってもらった里村は、班のメンバーの元へ行ってしまった。


 夕食バイキングの時間、早めに着いた俺と桔平はひと通り料理を皿に盛り、テーブルに向かい合って座った。
「昨日とメニュー違うな」
「だな。昨日の肉美味かったのに」
「北海道来て海鮮より肉なんだ」
「明日、海鮮食いまくるから」
 「ここ座っていい?」
会話の途中に入ってきた声の方を向くと、皿を持った里村と伊永がいた。
「あ、うん」
「さんきゅー」
里村は俺の隣、伊永は桔平の隣に座り、思いがけない里村との接触に内心ガッツポーズをした。

 食べ進める中、スマホを手にした里村が
「せっかくだし、4人で撮っとこうぜ」
と、スマホのインカメラを構えた。
「ハイチーズ!…オッケー」
4人で撮った後、カメラを起動したまま「荒木、撮ろ」って、サラッとツーショットを撮った里村。
「…。」
昨夜に俺が言ったお願いをちゃんと実行してくれたことが無性に嬉しい。
…あぁ、すげぇ好き。


 3日目は、桔平、大賀、井ノ口と札幌市内を楽しんだ。途中、里村たちのグループとすれ違ったが、目を合わせるので精一杯だった。

 最終日、空港内の店やスポットを満喫して、無事に修学旅行が終わった。

 夕方、学校に着いた生徒たちは、各自キャリーケースを持ちながら帰って行く。俺も桔平たちと駅に向かって歩いていた。
「荒木!」
里村に呼び止められ、パッと小さな紙袋を渡された。
「帰って開けてな!じゃ、また来週」
「あ、うん」

 去っていく里村の後ろを追いかけたい気持ちをグッと堪え、家に帰った。