あまつさえ、愛だとか。


「もう大丈夫なので、そろそろ帰りませんか」


「でも、腫れたら困るでしょ?」


「これくらいじゃ腫れないって、さっきから言ってますよね??」


「えー、そうだっけ?」



……この人、俺を帰さない気だろうか。
かれこれこんな会話を2、3回ほどしていることに気づいて…いないわけがない。

鼻につく消毒液の独特な匂いにも、ようやく慣れてきた頃。
俺と二階堂先輩は、保健室にある2人がけのソファに座っていた。

事の発端は、誰がなんと言おうとこの人…二階堂先輩だった。
『五月雨の懸想』のラストシーンを撮り終えて、部員全員が余韻に浸っていたとき。

「戸張くん、保健室行こう」

これまた先輩が突拍子もなくそんなことを言い出したと思えば、あれよという間に連れてこられて。
気づいたら先輩が用意してくれた氷嚢を手にして、ここに腰を下ろしていた。

いや、おかしいよな絶対…!?
あんなに感動的なラストシーンを迎えて、部活といえど一応クランクアップして…?
その主演演じる役者が、目の腫れを気にして保健室で氷嚢片手に休んでるとか…。
格好がつかないにも程があるだろ…!!



「ほら、片付けもありますし…!そろそろ戻らないと」


「大丈夫。今さっき片付け終わって、解散になったって黒田から連絡来たよ。打ち上げは予定通り、晴れ予報の明日だって」


「え…?でも、部室の鍵は俺が持ってて…あ」



そういえばここに来る前、松本にズボンに手を突っ込まれた覚えがある。
あのときか…。