あまつさえ、愛だとか。


「なんで戸張がいんの?今日はそのまま中庭集合じゃなかったっけ?」


「部長に雑用でも頼まれたとか〜?」


「いや、違…」


「いやぁ、それはないでしょ。だってあの人、雑用とか頼まないじゃん」


「それもそっか。ましてや戸張になんて頼まないよなー」


「はは…って、ん?」



山根に続いて川野と宮田が畳み掛けるようにして各々喋りだした。
部内では苗字に山や川、田がつくことから自然三銃士と言われる3人組は、喋り好きとして有名なやつらで一度話し始めると止まらない。
そこに割り込む隙もなく、3人の中で話が完結されてしまう。



「じゃあ、俺らは用済んだし先行ってるから」


「あ、あぁ…わかった」


「鍵ここ置いとくからよろしく!」


「じゃねー」



山根たちが機材を抱えたと思えば、さっさと部室を出ていってしまった。



…嵐のようだったな。
ここに訪れたのは俺の方なのに、なぜだか急に来て去っていったように感じるのはどうしてだろうか。
ふと、静かになった部室を見渡す。



『戸張くんの声も、表情も、感情さえも…何もかもを僕に注いでくれているんだと思ったら、勝手に体が動いてた』



ここに来れば、あの日を思い出さない日なんかなくて。
まだ消えない、あのときの苦しさが込み上げてくるこの感覚に溺れている。
だから、部活のない日だって、今日のように撮影場所に集合の日だって…用なんかないのに気づけばここへ足を運んでいた。
さっき松本に言われたことも、きっと事実なのだと思う。
それを俺が表に出さないようにと必死に抵抗していたけれど、結局無駄で全て漏れて出ていたというだけの話。
…なのに。



「はぁー…かっこ悪…」