あまつさえ、愛だとか。


「最近戸張、調子いいよな」



担任が明日の連絡事項を伝えて教室を出て行ったあとのこと。
隣の席の松本が、バックに教科書を詰め込みながら声をかけてきた。



「…なんだよ、藪から棒に」


「んー…調子いいっつーか、カメラの前だとうきうきしてるって感じ?んで、やたら上手いのな」



その言葉に、ぐっ、と喉が詰まった。



「っ…気のせいだろ。ってか、急になんの話をして…」


「いーや、間違いねーよ。他の部員のヤツらも言ってる」



なんの確証もないのに、どうしてそんなに断言できるのだろう。
いつもの如く適当な松本にじろりと目を向ければ、「怖い顔すんなって」と笑われた。
別にもとからこんな顔なんだけど、と言いたいのを飲み込んで席を立つ。
窓から流れ込んでくる生ぬるい風を肌で感じながら、スクバを手に取った。



「俺、ちょっと寄りたいとこあるから先行ってる」


「りょーかい」



松本の声を背中で聞いて、ざわめく廊下に飛び出した。
廊下がいつになく湿気っぽい。
コンクリの壁も窓ガラスも、触ればひとたび濡れてしまうだろう。
キュッ、と鳴る床を慎重に踏みしめながら、とある場所に足を進めた。


たどり着いた先…もとい、部室のドアを開けると、同学年の裏方志望3人組みが物品チェックをしているところだったようで。
そのうちの一人の山根が振り向いて「あれ?」と首を傾げる。