あまつさえ、愛だとか。


「俺はもともとこんなんだから、まぁ、これも自分の個性だ程度に思ってたし、直したいとも思ってなくて。でも…だからこそ、こんな自分を突き動かしたのが映画だったんだろうね。俺もこんなふうに、感情を上手く扱って、表出したいと…そう思った」



ぽつりぽつりと語る先輩の言葉に耳を傾ける。
ひとつも聞きこぼしたくなくて、意識を全部隣に向けた。



「持て余しているくらいなんだから、出来るだろうと高を括ってね。青かったなぁ…とか、自分でも思っちゃうくらいには生意気だったんだよ」



二階堂先輩は伏し目がちに自嘲して言葉を紡ぐ。

…二階堂先輩らしい、と言ったら怒られるだろうか。
確かに俺は、二階堂先輩の作る作品に心を奪われて、ここにいる。
けれど、最初の印象は“苦手な人”だった。
何でもかんでも余裕にこなす、掴みどころのない食えない先輩。
なのに、それでいてものづくりには人一倍熱を持っていて、カメラを持つと人が変わったように真剣な目をする。
撮り終わると、俺たち役者の感情の動きを読み取りながら言葉をかけてくれるのだ。
だから、二階堂先輩がただの取っ付きにくい先輩だと思っていたのも束の間のことだった。

いつしか器用で食えなくて、取っ付きにくい…けれど、誰よりも人の心に優しく触れてくれる二階堂先輩に、俺自身も惹かれていったんだ。



「だから、セリフを、ト書を読む度に感情に振り回されてしまう自分をどうしても変えたくて、あそこに通うようになった。誤魔化しきれない舞台の上での芝居を見たら、なにか勉強になるかもしれないって」