外に出ると、雨上がりの匂いがした。
日中の暑苦しい空気とは裏腹に、肌を撫でる風がひんやり冷たい。
なんだかそれが気持ちよくて、ずっとこうしていたいとさえ思う。
…それは、ただ、この雰囲気が良すぎるから?
それとも…隣に、二階堂先輩がいるからだろうか。
…分からないけれど、でも…名残惜しい。
最寄り駅に着いてしまったらまた喧騒の中で、2人きりで話す時間はなくなる。
だからか俺は、なんとなく、ゆっくり歩幅を進めていた。
「…あの、ところで二階堂先輩」
「ん…?」
「どうして、俺を舞台演劇に連れてってくれたんですか」
二階堂先輩はきっと、どのタイミングで切り出そうかを探してる。
さっき先輩は、「聞いて」と言った。
ならばいっそ、こちらから踏み込んでみてもいいんじゃないか…そんな、いつになく自分らしくない考えがよぎった。
それはきっと…もう、わかっているから。
「あそこはね…俺がよく通ってたところなんだ。…自分の感情を、上手くコントロールできるようになりたくて」
二階堂先輩は、俺の躊躇いをも受け止めて、受け入れてくれると。
「感情を“上手く”コントロール…」
って…どういうことだろう?と思ったが、思い当たる節を見つけてハッとする。
「うん。戸張くんはもう、知ってるよね」
苦笑。
まさにその言葉がぴったり当てはまる笑みを浮かべてそう言った。


