「っはぁ…楽しかった、な…」
あのあと、結局何度かリメイクを出されて撮影を止めてしまった。
けれど、試行錯誤しながら自分の中でも良い演技が出せたのではなかと思う。
それになにより、二階堂先輩も褒めてくれたし…。
「うわ、珍し。戸張がニヤついてる」
まだ人がいるのを忘れてつい一人で浮かれていると、那月役の松本に小突かれて、咄嗟に緩んだ頬を引き締める。
…危ない、油断しすぎた。
「…てねーよ。っていうか、今日はごめん。撮影止めちゃって」
「ん?いーよそんくらい。俺だってよくやるし、お互い様だろ。それに、OKもらったときの方が断然良かったし」
その言葉を聞いてほっとする。
仕方のないことだけど、止めるとどうしても相手には迷惑をかてしまう。
セリフを飛ばしそうになることだってあるし、相手のためにもできれば1発OKでいきたいところだ。
「まぁ…うん、そうだね。ありがと松本」
「おー、もっと感謝していいぞ」
「うざ…」
…本当、カメラの前とじゃ別人だな。
松本は普段ダル絡みしてくるくせに、芝居だけは本気で取り組むからそのギャップに風邪ひきそうになる。
だからこそ副部長を任されたんだろうな。
こんなに見た目チャラついてるのに…まあ、それはいいとして。


