あまつさえ、愛だとか。


「俺たちも片付けようか」


「ですね」



促されて俺も施錠に向かおうと足を伸ばした。



「戸張くん」



それと同時に呼ばれて振り向こうとしたときのこと。
ぐらりと体が後ろに傾いた。



「さっき言いかけたこと、後で聞かせて」



手首を掴まれグイッと引き寄せられたと思えば、耳元で囁かれて。



「昨日からずっと気になってること、教えてあげる」



くすりと笑う二階堂先輩。
触れられたところも、耳にかかかった吐息も全部、俺の体温を上げるには十分すぎるもので。



「っ…わ、かりました…」



あー…やばい、な…。
今の自分の顔なんて、見なくてもわかる。
それでも、この蒸し暑さのせいにできるのが唯一の救いだ。
それに気づいているのかいないのか、二階堂先輩は見透かしたみたいに笑った。



「はは、うん。…じゃあ、一緒に帰ろ」


「はい…って、え?」



予期せぬ提案に、思わず耳を疑った。
…今、聞き間違えじゃなければ“一緒に帰ろ”って聞こえたような。



「たしか、路線一緒だったよね。寄り道でもして、ゆっくり帰ろうよ」



やっぱり聞き間違いではなかったらしい。
おまけにこの人の綺麗な顔で「ね?」と首を傾げられれば、頷くしかないわけで。



「えっと…先輩が良ければ…」


「なら、決まり。そうとなれば、さっさと施錠しちゃおう」



…なんか、変なことになったな。
うきうきで鍵閉めに加わる二階堂先輩の背中を見て、そう思わざるを得なかった。