「新樹様……ですか?」
百花が知っている新樹は、百花より背が低く態度の大きい男の子だ。しかし目の前の彼は、すらっとしていて背が高く、肩幅もがっちりしていてどこからどう見ても大人の男性。
「百花。これを始末するから少し離れていろ。昂焔!」
《合点承知!》
男から解放された百花の腕を誰かが引っ張った。
「百花さん、こちらに」
「深山さん!」
「どうやら、あちらは囮だったようです。彼らの狙いは、旭野家の当主。しかし、そこに百花さんが現れたから、あわよくば百花さんも……という流れのようですね。そういうわけで百花さん、この場は新樹様たちにまかせて、逃げましょう」
航平に引っ張られるようにして、百花は走る。とにかく無我夢中で走って逃げた先は、採掘場の事務所であった。
「この建物には結界を張りましたので、人狩りもそうたやすく攻撃をしかけられないでしょう」
航平の言葉にうなずいた百花は「では、怪我人の治療にあたらせてください」と声を上げる。
航平は面食らったように目を丸くするものの、すぐに百花を案内してくれた。
「怪我人はこちらです」
事務所の一室、畳敷きの休憩場所に怪我人が横になっている。それから少し離れた場所では放心した状態で座っている人。
「百花さんは、こちらの軽傷者の治療をお願いします」
「はい」
シーツやお湯などは用意してあり、とにかく百花は怪我人から痛みを取り除くように、丁寧に治療にあたった。
怪我人を助けるのに無我夢中で、最後の一人が運ばれていくのを見送ったとき、百花の張り詰めていた気持ちがふっとゆるんだ。
「百花さん!」
航平が慌てた様子で百花の名を呼んだのはなんとなくわかったが、そこからの記憶がパタリとない――。
身体に伝わる振動で、百花ははっと目を開けた。視界に飛び込んできたのは新樹の顔。
「あ、小さな新樹様……?」
新樹がムッとした表情を見せつつも「目が覚めたのか?」と百花の頭をやさしくなでる。そこで百花ははたと気がついた。どうやら新樹の膝の上に頭を置いて、眠っていたらしい。
「も、申し訳ありません」
慌てて身体を起こせば、そこはもう車の中だった。運転席に座る航平の後ろ姿が見えた。
「あの、採石場は……」
「怪我人の治療は終わった。おまえも手伝ってくれたんだろう? 助かった。重傷者は病院に運んであるし、人狩りも捕まえた。行方不明だった二人も見つけた。事後処理はまだ残っているが……それは責任者の旭野に任せてきた」
やはり人狩りは採石場で鬼族と人を狙っていたらしい。あそこで働く者の数は多いため、人狩りにとっては手っ取り早く人を手に入れるための狩り場だったのだ。むしろ、彼らの狙いは暁陽派の旭野家の当主。
人狩りがここまで人々の生活に近づいてきている点は、やはり問題視しなければならないだろう。先日の河川敷での事件もそうだ。
百花はもう一度、じっくり新樹の顔を見つめた。
「あの……ところで先ほど私を助けてくださったのは、新樹様ですよね?」
新樹のこめかみがピクリと動き、それから観念したように、言葉を吐き出した。
「俺は、霊力を使うと身体が成長するんだよ。だから、言っただろ? 晶翔よりでかくなるって」
あのときの新樹は、見上げる必要があり、百花よりもずっと背は高かった。引き締まった身体に、すらりと伸びた手足。
百花が見知らぬ男に連れ去られそうになったとき、助けてくれたのが新樹だったのだ。
彼の姿を見たときの安心感が、再び胸に広がった。
新樹が助けに来てくれなかったら、今頃、百花はここにいなかっただろう。そして新樹には二度と会えなかったかもしれない。
「……あれが俺の三年後の姿だ」
新樹が百花の髪を一房手にとり、そこに口づけた。
身体が小さくても大きくても、新樹は新樹。百花に居場所を作ってくれた存在にちがいはない。
ふと、百花の目頭が熱くなった。
「おまえが、無事でよかった……俺にとっておまえは、必要な存在なんだ。おまえがいなくなったら俺は……」
鋭い視線に射貫かれ、百花の心臓は暴れ馬が走り回っているかのように騒がしい。
「晶翔にも誰にも渡したくない。だから――」
新樹の先の言葉は、恥ずかしさに悶える百花の耳には通り過ぎていくだけ。心臓が震え、声にならない声のせいで唇も震えた、そのとき。
《おぉ! 嬢ちゃん、目が覚めたか。なぁなぁ、オレ様の活躍、見てくれた?》
今までどこに隠れていたのか、昂焔がぴょんと飛び出し、一回転して百花の膝の上に収まった。
「は、はい!」
緊張が高まっていたせいで、声が裏返ってしまう。車内の空気は一変し、のほほんとした穏やかなものになる。
「くっそ、昂焔。なんなんだよ、おまえは! 邪魔するなよ!」
新樹の悔しそうな声が響き、車を運転する航平は肩を震わせていた。
それからしばらく月日が流れ、帝国六家にも変化があった。晶翔が天雪家の当主を継いだのだ。どうやら彼の父は人狩りに襲われ、その命を奪われてしまったらしい。
まだ人狩りを壊滅できていない現状を、新樹は歯がゆく思っているようだ。
三年後――。
百花は裾を直したズボンを手にして、ワンピースの裾を翻しながら屋敷内を行き来していた。
「新樹様、お待たせしてしまい申し訳ありません」
まだ浴衣姿の新樹だが、それも裾は足りていない。
「新樹様がここにきて、急ににょきにょきと成長なさるからです。用意していたスーツ、全滅じゃないですか」
航平の呆れたような声が響くが「人を筍のように言うな!」と、新樹がツッコミを入れるのは、見慣れた光景だ。
「では、私は車を回すよう、指示してまいりますから。新樹様は、さっさと着替えてください。百花さん、新樹様の手伝いをお願いします」
「は、はい」
返事をした百花だが、鼓動が妙にうるさかった。
ここ一か月の間で、新樹の身体が急に成長し始めた。百花より低かった身長はみるみるうちに百花を追い越し、今では見上げる必要がある。
突然の成長に誰もが驚き、影月は慌てて医師を呼んだ。医師の見解は、恐らく、年齢と霊力のつり合いがとれ始めたから、身体もそれに追いつこうと一気に成長したのだろうと。言い換えれば、遅れてやってきた成長期のようなもの。
それにしても成長しすぎである。
成人した六家の者は、皇帝へ挨拶をするのがしきたりとなっていた。その日にそなえ、用意していた衣装は見事に小さくなったのだ。それでも、新樹の成長は目に見えていたから、一般的な成人男性の大きさの衣装を揃えていたというのに。
それなのに今朝、着替えた新樹を見た航平が「卒業間際の初等学生」と呟き、さすがに百花も焦った。急いで丈と袖口を直し終えたのが今。なんとか間に合い、着替えを終えた彼の姿を見ても、問題はなさそうだ。
「百花。ネクタイを結んでくれ」
今日の彼はえんじ色のネクタイを選んだ。きりっと引き締まった体躯によく似合う。
目の高さも、百花より少しだけ低かった新樹。そのときから何度も彼のネクタイを結んできたのに、今日に限って妙に胸がうるさい。
新樹は、百花がネクタイを結びやすいようにと、少しだけ身をかがめてくれた。顔も近く、彼の吐息が耳に触れるようで、とぎまぎしてしまう。
「はい、終わりました」
「ありがとう。どうした? 百花。顔が赤いみたいだが、熱でも出たか?」
「あ、いえ。なんでもありません」
「よし、行くぞ。あいつが待っているからな」
これから新樹は、皇帝に成人の挨拶へと向かうのだが、百花もそれに同行する。
「そうだ、百花」
部屋を出ようとしたところで新樹が振り返り、百花を見下ろした。
「俺もやっと成人を迎えた。おまえと出会ったあの日から、俺がどれだけこの日を待ち望んでいたか、わかるか?」
愉悦を含む笑みを浮かべる新樹に、百花はどう返事をしたらいいかがわからない。
「これから、おまえに男として意識してもらえるよう、全力で口説くから、覚悟しとけ!」
「なっ……」
いったい新樹は何を言っているのか。水槽の中を泳ぐ金魚のように、百花の口はぱくぱくするが、声は出てこない。
そこに、とてとてと歩いてくるぬいぐるみの姿がある。
《遅いぞ、坊! これでおまえさんも大人の仲間入り。俺様も、今まで以上にパワーアップできるっていうわけだな》
ぴょんと飛び上がって新樹の腕の中に収まる昂焔だが、なぜかそれはうさぎのぬいぐるみ姿である。
「おい、なんでこっちの依り代使ってるんだよ」
《いつも肉体を駆使して戦うオレ様のために、嬢ちゃんがたくさん依り代を作ってくれたからだ。その日の気分で衣装を変えるようなもんだな》
ははっと笑う昂焔は、とんと胸を張る。昂焔もいつの間にか、自分の意思で依り代を選べるという術を使うようになっていた。
「だからって……うさぎのぬいぐるみはないだろ? 成人した男がうさぎのぬいぐるみを抱えてるって……」
《安心しろ。坊なら、許される。ギャップ萌えというやつだ》
新樹が成人したからといって、昂焔との関係が一気に変化するわけでもない。
そんな一人と一匹の関係を見ていたら、百花の揺れ動く気持ちも静かに定まった。何も焦ってすべてを受け入れる必要はないのだ。
これから少しずつ変化していく関係に寄り添っていけばいい。
じゃれ合う彼らをほほ笑ましく見ていた百花だが「新樹様、時間がありません。いきますよ!」と、新樹の手を引っ張って、部屋から飛び出した。
【完】
百花が知っている新樹は、百花より背が低く態度の大きい男の子だ。しかし目の前の彼は、すらっとしていて背が高く、肩幅もがっちりしていてどこからどう見ても大人の男性。
「百花。これを始末するから少し離れていろ。昂焔!」
《合点承知!》
男から解放された百花の腕を誰かが引っ張った。
「百花さん、こちらに」
「深山さん!」
「どうやら、あちらは囮だったようです。彼らの狙いは、旭野家の当主。しかし、そこに百花さんが現れたから、あわよくば百花さんも……という流れのようですね。そういうわけで百花さん、この場は新樹様たちにまかせて、逃げましょう」
航平に引っ張られるようにして、百花は走る。とにかく無我夢中で走って逃げた先は、採掘場の事務所であった。
「この建物には結界を張りましたので、人狩りもそうたやすく攻撃をしかけられないでしょう」
航平の言葉にうなずいた百花は「では、怪我人の治療にあたらせてください」と声を上げる。
航平は面食らったように目を丸くするものの、すぐに百花を案内してくれた。
「怪我人はこちらです」
事務所の一室、畳敷きの休憩場所に怪我人が横になっている。それから少し離れた場所では放心した状態で座っている人。
「百花さんは、こちらの軽傷者の治療をお願いします」
「はい」
シーツやお湯などは用意してあり、とにかく百花は怪我人から痛みを取り除くように、丁寧に治療にあたった。
怪我人を助けるのに無我夢中で、最後の一人が運ばれていくのを見送ったとき、百花の張り詰めていた気持ちがふっとゆるんだ。
「百花さん!」
航平が慌てた様子で百花の名を呼んだのはなんとなくわかったが、そこからの記憶がパタリとない――。
身体に伝わる振動で、百花ははっと目を開けた。視界に飛び込んできたのは新樹の顔。
「あ、小さな新樹様……?」
新樹がムッとした表情を見せつつも「目が覚めたのか?」と百花の頭をやさしくなでる。そこで百花ははたと気がついた。どうやら新樹の膝の上に頭を置いて、眠っていたらしい。
「も、申し訳ありません」
慌てて身体を起こせば、そこはもう車の中だった。運転席に座る航平の後ろ姿が見えた。
「あの、採石場は……」
「怪我人の治療は終わった。おまえも手伝ってくれたんだろう? 助かった。重傷者は病院に運んであるし、人狩りも捕まえた。行方不明だった二人も見つけた。事後処理はまだ残っているが……それは責任者の旭野に任せてきた」
やはり人狩りは採石場で鬼族と人を狙っていたらしい。あそこで働く者の数は多いため、人狩りにとっては手っ取り早く人を手に入れるための狩り場だったのだ。むしろ、彼らの狙いは暁陽派の旭野家の当主。
人狩りがここまで人々の生活に近づいてきている点は、やはり問題視しなければならないだろう。先日の河川敷での事件もそうだ。
百花はもう一度、じっくり新樹の顔を見つめた。
「あの……ところで先ほど私を助けてくださったのは、新樹様ですよね?」
新樹のこめかみがピクリと動き、それから観念したように、言葉を吐き出した。
「俺は、霊力を使うと身体が成長するんだよ。だから、言っただろ? 晶翔よりでかくなるって」
あのときの新樹は、見上げる必要があり、百花よりもずっと背は高かった。引き締まった身体に、すらりと伸びた手足。
百花が見知らぬ男に連れ去られそうになったとき、助けてくれたのが新樹だったのだ。
彼の姿を見たときの安心感が、再び胸に広がった。
新樹が助けに来てくれなかったら、今頃、百花はここにいなかっただろう。そして新樹には二度と会えなかったかもしれない。
「……あれが俺の三年後の姿だ」
新樹が百花の髪を一房手にとり、そこに口づけた。
身体が小さくても大きくても、新樹は新樹。百花に居場所を作ってくれた存在にちがいはない。
ふと、百花の目頭が熱くなった。
「おまえが、無事でよかった……俺にとっておまえは、必要な存在なんだ。おまえがいなくなったら俺は……」
鋭い視線に射貫かれ、百花の心臓は暴れ馬が走り回っているかのように騒がしい。
「晶翔にも誰にも渡したくない。だから――」
新樹の先の言葉は、恥ずかしさに悶える百花の耳には通り過ぎていくだけ。心臓が震え、声にならない声のせいで唇も震えた、そのとき。
《おぉ! 嬢ちゃん、目が覚めたか。なぁなぁ、オレ様の活躍、見てくれた?》
今までどこに隠れていたのか、昂焔がぴょんと飛び出し、一回転して百花の膝の上に収まった。
「は、はい!」
緊張が高まっていたせいで、声が裏返ってしまう。車内の空気は一変し、のほほんとした穏やかなものになる。
「くっそ、昂焔。なんなんだよ、おまえは! 邪魔するなよ!」
新樹の悔しそうな声が響き、車を運転する航平は肩を震わせていた。
それからしばらく月日が流れ、帝国六家にも変化があった。晶翔が天雪家の当主を継いだのだ。どうやら彼の父は人狩りに襲われ、その命を奪われてしまったらしい。
まだ人狩りを壊滅できていない現状を、新樹は歯がゆく思っているようだ。
三年後――。
百花は裾を直したズボンを手にして、ワンピースの裾を翻しながら屋敷内を行き来していた。
「新樹様、お待たせしてしまい申し訳ありません」
まだ浴衣姿の新樹だが、それも裾は足りていない。
「新樹様がここにきて、急ににょきにょきと成長なさるからです。用意していたスーツ、全滅じゃないですか」
航平の呆れたような声が響くが「人を筍のように言うな!」と、新樹がツッコミを入れるのは、見慣れた光景だ。
「では、私は車を回すよう、指示してまいりますから。新樹様は、さっさと着替えてください。百花さん、新樹様の手伝いをお願いします」
「は、はい」
返事をした百花だが、鼓動が妙にうるさかった。
ここ一か月の間で、新樹の身体が急に成長し始めた。百花より低かった身長はみるみるうちに百花を追い越し、今では見上げる必要がある。
突然の成長に誰もが驚き、影月は慌てて医師を呼んだ。医師の見解は、恐らく、年齢と霊力のつり合いがとれ始めたから、身体もそれに追いつこうと一気に成長したのだろうと。言い換えれば、遅れてやってきた成長期のようなもの。
それにしても成長しすぎである。
成人した六家の者は、皇帝へ挨拶をするのがしきたりとなっていた。その日にそなえ、用意していた衣装は見事に小さくなったのだ。それでも、新樹の成長は目に見えていたから、一般的な成人男性の大きさの衣装を揃えていたというのに。
それなのに今朝、着替えた新樹を見た航平が「卒業間際の初等学生」と呟き、さすがに百花も焦った。急いで丈と袖口を直し終えたのが今。なんとか間に合い、着替えを終えた彼の姿を見ても、問題はなさそうだ。
「百花。ネクタイを結んでくれ」
今日の彼はえんじ色のネクタイを選んだ。きりっと引き締まった体躯によく似合う。
目の高さも、百花より少しだけ低かった新樹。そのときから何度も彼のネクタイを結んできたのに、今日に限って妙に胸がうるさい。
新樹は、百花がネクタイを結びやすいようにと、少しだけ身をかがめてくれた。顔も近く、彼の吐息が耳に触れるようで、とぎまぎしてしまう。
「はい、終わりました」
「ありがとう。どうした? 百花。顔が赤いみたいだが、熱でも出たか?」
「あ、いえ。なんでもありません」
「よし、行くぞ。あいつが待っているからな」
これから新樹は、皇帝に成人の挨拶へと向かうのだが、百花もそれに同行する。
「そうだ、百花」
部屋を出ようとしたところで新樹が振り返り、百花を見下ろした。
「俺もやっと成人を迎えた。おまえと出会ったあの日から、俺がどれだけこの日を待ち望んでいたか、わかるか?」
愉悦を含む笑みを浮かべる新樹に、百花はどう返事をしたらいいかがわからない。
「これから、おまえに男として意識してもらえるよう、全力で口説くから、覚悟しとけ!」
「なっ……」
いったい新樹は何を言っているのか。水槽の中を泳ぐ金魚のように、百花の口はぱくぱくするが、声は出てこない。
そこに、とてとてと歩いてくるぬいぐるみの姿がある。
《遅いぞ、坊! これでおまえさんも大人の仲間入り。俺様も、今まで以上にパワーアップできるっていうわけだな》
ぴょんと飛び上がって新樹の腕の中に収まる昂焔だが、なぜかそれはうさぎのぬいぐるみ姿である。
「おい、なんでこっちの依り代使ってるんだよ」
《いつも肉体を駆使して戦うオレ様のために、嬢ちゃんがたくさん依り代を作ってくれたからだ。その日の気分で衣装を変えるようなもんだな》
ははっと笑う昂焔は、とんと胸を張る。昂焔もいつの間にか、自分の意思で依り代を選べるという術を使うようになっていた。
「だからって……うさぎのぬいぐるみはないだろ? 成人した男がうさぎのぬいぐるみを抱えてるって……」
《安心しろ。坊なら、許される。ギャップ萌えというやつだ》
新樹が成人したからといって、昂焔との関係が一気に変化するわけでもない。
そんな一人と一匹の関係を見ていたら、百花の揺れ動く気持ちも静かに定まった。何も焦ってすべてを受け入れる必要はないのだ。
これから少しずつ変化していく関係に寄り添っていけばいい。
じゃれ合う彼らをほほ笑ましく見ていた百花だが「新樹様、時間がありません。いきますよ!」と、新樹の手を引っ張って、部屋から飛び出した。
【完】



