翌日、僕は予備校を昼までで終えると、駅前に向かった。足取りが軽い、あっという間に駅前につくと、腕時計で時間を確認する。約束の2時までまだ30分以上ある。
でも向こうも早く着いたらと考えると、僕は待ち合わせ場所から動くことができなくなった。歩いてくる人影を、つい追いかけてしまう。
何度か時計を見るが、その針の進みは驚くほど遅くて、壊れてないか周りの時計を探して確認してしまう。もちろん、そこの時間とは誤差以上の差はなかった。
1時51分の文字盤を見て、ふと視線をあげるとこちらを見る視線と目があった。その瞬間、何故か胸の奥にするっとその顔が入ってきたような、初対面のはずだがそんな気はしない。だけどこう声をかけた。
「はじめまして、祐希です」
そんな僕を見て彼女も笑って言ってくれた。
「はじめまして、優希です。待たせちゃってごめんなさい」
「いえ、約束の時間はまだですから、こちらが早く来ただけなので、気にしないでください」
夢で何度も聞いた声に安心する。不思議と落ち着く気持ちがした。
「喉が渇いたので、そこのスタバに寄って少しお茶しながら話しませんか?」
「スタバ?」
優希の話す言葉がわからなくて聞き返した。
「そっか、お家厳しいって言ってたものね、行くことないよね。喫茶店ですよ、行きましょ」
「わかった」——何もわからずついて行く僕。
「ミルクと甘いのは大丈夫?」
「勉強すると糖分欲しくなるので甘いのは大丈夫です」
と僕がいうと優希は「じゃ私と同じほうじ茶のラテでいいかな?」と聞いてくるので、何もわからず頷く。
「トール・アイスほうじ茶ラテ・ツーパーセント・オールミルク・フォーミーをふたつ」——謎の呪文を店員に伝えた。
「席確保して待ってて」
そう言われた僕は、二人がけの席について、優希を待つ。優希は、二つのグラスを抱えて席まできた。ミルク色のほうじ茶の風味のする甘くて冷たい初めて飲む飲み物も、女の子と喫茶店で二人で話すのも、僕にははじめての経験だった。
「今日は予備校無理に休ませたんじゃないかな、でも会えてうれしかった」
「本当に無理はしてないよ、午後はどうせ自習だったから、それに僕も会いたかった」
「私達、不思議ね。でも祐希が夢の中で居てくれて、寂しい夜が怖くなくなったんだ。うちお母さん看護師でしょ? 子供の時寝るまでに帰ってこれないこととかあったから……でも寝たら祐希と話せるからって、頑張って寝てたんだ。——なんか、ありがとうね」
「僕こそ、家に人が居ても、独りだと思っていて、夢の中で会う優希にいっぱい慰められていたよ、ありがとう」
女の子と話していても、話すこと自体はいつもと同じだった。それこそ夢の中の延長みたいに、ドキドキする僕の気持ちは、夢の中よりははっきりわかっていたけれど。
「あれ、もうこんな時間、私そろそろ帰って夕飯の支度しなきゃいけないんだけど……ねえ、祐希は予備校だともっと遅くなるんだよね?」
「うん、遅いときは、22時とかまでいたりするよ」
「ここからうちまで1時間くらいだから、よかったらうちで夕飯食べていかない? せっかくだからもう少しお話したいし、ママにも友達紹介したいな」
一瞬湧いてきた本当にいいの? という気持ちを押し込めて僕は「……いいの?」とそうなんとか頷いた。
でも向こうも早く着いたらと考えると、僕は待ち合わせ場所から動くことができなくなった。歩いてくる人影を、つい追いかけてしまう。
何度か時計を見るが、その針の進みは驚くほど遅くて、壊れてないか周りの時計を探して確認してしまう。もちろん、そこの時間とは誤差以上の差はなかった。
1時51分の文字盤を見て、ふと視線をあげるとこちらを見る視線と目があった。その瞬間、何故か胸の奥にするっとその顔が入ってきたような、初対面のはずだがそんな気はしない。だけどこう声をかけた。
「はじめまして、祐希です」
そんな僕を見て彼女も笑って言ってくれた。
「はじめまして、優希です。待たせちゃってごめんなさい」
「いえ、約束の時間はまだですから、こちらが早く来ただけなので、気にしないでください」
夢で何度も聞いた声に安心する。不思議と落ち着く気持ちがした。
「喉が渇いたので、そこのスタバに寄って少しお茶しながら話しませんか?」
「スタバ?」
優希の話す言葉がわからなくて聞き返した。
「そっか、お家厳しいって言ってたものね、行くことないよね。喫茶店ですよ、行きましょ」
「わかった」——何もわからずついて行く僕。
「ミルクと甘いのは大丈夫?」
「勉強すると糖分欲しくなるので甘いのは大丈夫です」
と僕がいうと優希は「じゃ私と同じほうじ茶のラテでいいかな?」と聞いてくるので、何もわからず頷く。
「トール・アイスほうじ茶ラテ・ツーパーセント・オールミルク・フォーミーをふたつ」——謎の呪文を店員に伝えた。
「席確保して待ってて」
そう言われた僕は、二人がけの席について、優希を待つ。優希は、二つのグラスを抱えて席まできた。ミルク色のほうじ茶の風味のする甘くて冷たい初めて飲む飲み物も、女の子と喫茶店で二人で話すのも、僕にははじめての経験だった。
「今日は予備校無理に休ませたんじゃないかな、でも会えてうれしかった」
「本当に無理はしてないよ、午後はどうせ自習だったから、それに僕も会いたかった」
「私達、不思議ね。でも祐希が夢の中で居てくれて、寂しい夜が怖くなくなったんだ。うちお母さん看護師でしょ? 子供の時寝るまでに帰ってこれないこととかあったから……でも寝たら祐希と話せるからって、頑張って寝てたんだ。——なんか、ありがとうね」
「僕こそ、家に人が居ても、独りだと思っていて、夢の中で会う優希にいっぱい慰められていたよ、ありがとう」
女の子と話していても、話すこと自体はいつもと同じだった。それこそ夢の中の延長みたいに、ドキドキする僕の気持ちは、夢の中よりははっきりわかっていたけれど。
「あれ、もうこんな時間、私そろそろ帰って夕飯の支度しなきゃいけないんだけど……ねえ、祐希は予備校だともっと遅くなるんだよね?」
「うん、遅いときは、22時とかまでいたりするよ」
「ここからうちまで1時間くらいだから、よかったらうちで夕飯食べていかない? せっかくだからもう少しお話したいし、ママにも友達紹介したいな」
一瞬湧いてきた本当にいいの? という気持ちを押し込めて僕は「……いいの?」とそうなんとか頷いた。



