真っ青な海に浮かんで空を眺めている。きっと、これは夢だろう。このまま1人で、深い海底まで沈んでいけたらいいのに…。
高校に入学した俺は驚いた。どうやら水泳部は部員がいないらしい。その関係で正式な顧問もおらず、廃部寸前だった。
別に仲間を求めていたわけでもないし、大会に出られないならそれでも構わない。何も気にせず泳げる場所があればいい。
「改修工事ですか…?」
「そうなんだよ。夏休み前には終わるんだけど、それまでプール使えないんだ。もし、どうしてもっていうなら、隣町の高校のプール借りられるよう申請しておくけど」
「それでお願いします」
隣町の高校のプールを借り始めて数日後。このプールにも慣れてきた。むしろ気に入っている。遠くで人の声はするものの、周りに誰もいないし、視界に邪魔なものも入らない。
バシャッ、ぱっ、バシャッ…
タイムを気にせず、ただただ無心で泳ぎ続けるこの時間が好きだ。
泳ぎ終えてプールサイドに上がると、1人の学生が立っていた。
ーここの生徒だろうけど、何してんだろ。
「何か用ですか?」
「あ、いや、たまたま通りがかって…。ごめん、練習の邪魔しちゃって」
「いえ、大丈夫です」
なんだかふにゃっとした人だな。
「…お前、泳ぐの好きなんだなっ!」
無邪気な笑顔でそう言われ、この人のことを好きになると思った。
俺に好意を寄せる女子は多くいた。ろくに中身も知らず、見た目だけで好きだの言ってるあいつらは、俺が男を好きだと言ったらどんな顔をするのか。
たった1つ世間一般と違うだけで、他の全ても否定される。温かい家族もいる、大切な友達もいる、何不自由なく暮らせている。なのに生きづらいのは、自由に愛し合えないことが俺の心に重くのしかかっているからだ。そんな時、先輩に出会った。
初めて会った日の直感は、すぐに現実になった。
「お疲れー」
あれから先輩は放課後によく練習を見に来た。そして、練習終わりに他愛ないことを話しながら一緒に帰るようになった。
「別に同じ学校でもないし、俺そういうの気にしないから、タメ口でいいぞ?」
「いえ、今のままで大丈夫です」
「真面目だなぁ。ま、そーゆーとこお前らしいなっ!」
その笑顔をいつになれば、一人占めできるんだろう。
今までも人を好きになったことはある。だけど、相手は女子が好きで、俺を友達としか見ない。当たり前なことなのに、その度に心が沈む。でも、先輩はそうじゃない。友達でも後輩でもない俺を優しい目で見る。
先輩の学校で泳ぐ最後の日。プールサイドに足をつけながら、泳ぐ俺を見ている先輩は今、何を考えているんだろう。
「…。」
泳ぎを止め先輩の元へ行くと、水の反射で顔や白いシャツがキラキラ輝いて見えた。
「暇ですか?」
「全然。お前の泳ぐとこ見てて飽きないし。それにこうやって会うのも今日が最後だしなぁ」
そんな爽やかな笑顔で、最後なんて言わないでほしい。俺は、そのふわっとした髪やすぐ赤くなる肌に触れたいのに。
「…先輩も泳ぎますか?」
先輩の腕をぐいっと引いた。
バシャーンッ!!
「もぉ、びっくりするじゃん」
「あはは、すみません」
制服がずぶ濡れになったのに、怒ることなく柔らかい表情を見せるなんて…ほんとずるい。
「先輩って俺のこと…恋愛として好きですよね?」
「…は…いや、そんなことっ…」
分かってる、先輩は俺のことが好きだって。だけど普通でいるために必死なんだ。
頬が赤く染まっていく姿が愛おしい。
「…もし違うなら振り払ってください」
絡めた指は解けることなく、ゆっくりと目が合う。
また夢を見た。深い海に沈みかけた身体が、急に軽くなった。誰かが俺の手を優しく引いているんだ。今ならイルカみたいに、どこまでも泳いでいける気がする。
高校に入学した俺は驚いた。どうやら水泳部は部員がいないらしい。その関係で正式な顧問もおらず、廃部寸前だった。
別に仲間を求めていたわけでもないし、大会に出られないならそれでも構わない。何も気にせず泳げる場所があればいい。
「改修工事ですか…?」
「そうなんだよ。夏休み前には終わるんだけど、それまでプール使えないんだ。もし、どうしてもっていうなら、隣町の高校のプール借りられるよう申請しておくけど」
「それでお願いします」
隣町の高校のプールを借り始めて数日後。このプールにも慣れてきた。むしろ気に入っている。遠くで人の声はするものの、周りに誰もいないし、視界に邪魔なものも入らない。
バシャッ、ぱっ、バシャッ…
タイムを気にせず、ただただ無心で泳ぎ続けるこの時間が好きだ。
泳ぎ終えてプールサイドに上がると、1人の学生が立っていた。
ーここの生徒だろうけど、何してんだろ。
「何か用ですか?」
「あ、いや、たまたま通りがかって…。ごめん、練習の邪魔しちゃって」
「いえ、大丈夫です」
なんだかふにゃっとした人だな。
「…お前、泳ぐの好きなんだなっ!」
無邪気な笑顔でそう言われ、この人のことを好きになると思った。
俺に好意を寄せる女子は多くいた。ろくに中身も知らず、見た目だけで好きだの言ってるあいつらは、俺が男を好きだと言ったらどんな顔をするのか。
たった1つ世間一般と違うだけで、他の全ても否定される。温かい家族もいる、大切な友達もいる、何不自由なく暮らせている。なのに生きづらいのは、自由に愛し合えないことが俺の心に重くのしかかっているからだ。そんな時、先輩に出会った。
初めて会った日の直感は、すぐに現実になった。
「お疲れー」
あれから先輩は放課後によく練習を見に来た。そして、練習終わりに他愛ないことを話しながら一緒に帰るようになった。
「別に同じ学校でもないし、俺そういうの気にしないから、タメ口でいいぞ?」
「いえ、今のままで大丈夫です」
「真面目だなぁ。ま、そーゆーとこお前らしいなっ!」
その笑顔をいつになれば、一人占めできるんだろう。
今までも人を好きになったことはある。だけど、相手は女子が好きで、俺を友達としか見ない。当たり前なことなのに、その度に心が沈む。でも、先輩はそうじゃない。友達でも後輩でもない俺を優しい目で見る。
先輩の学校で泳ぐ最後の日。プールサイドに足をつけながら、泳ぐ俺を見ている先輩は今、何を考えているんだろう。
「…。」
泳ぎを止め先輩の元へ行くと、水の反射で顔や白いシャツがキラキラ輝いて見えた。
「暇ですか?」
「全然。お前の泳ぐとこ見てて飽きないし。それにこうやって会うのも今日が最後だしなぁ」
そんな爽やかな笑顔で、最後なんて言わないでほしい。俺は、そのふわっとした髪やすぐ赤くなる肌に触れたいのに。
「…先輩も泳ぎますか?」
先輩の腕をぐいっと引いた。
バシャーンッ!!
「もぉ、びっくりするじゃん」
「あはは、すみません」
制服がずぶ濡れになったのに、怒ることなく柔らかい表情を見せるなんて…ほんとずるい。
「先輩って俺のこと…恋愛として好きですよね?」
「…は…いや、そんなことっ…」
分かってる、先輩は俺のことが好きだって。だけど普通でいるために必死なんだ。
頬が赤く染まっていく姿が愛おしい。
「…もし違うなら振り払ってください」
絡めた指は解けることなく、ゆっくりと目が合う。
また夢を見た。深い海に沈みかけた身体が、急に軽くなった。誰かが俺の手を優しく引いているんだ。今ならイルカみたいに、どこまでも泳いでいける気がする。



