タイムリープ10years

 泣く。泣く。泣く。泣く。泣き続ける。
 顔はぐちゃぐちゃ。頭も顔も痛い。
 それでも、私はずっと声を殺しながら泣いて泣いて泣き続けた。

 事故のあとに泣いたことなどたくさんあったが、こんなに泣いたのなんて初めてかもしれない。
 それくらい、悲しくて悲しくてどうしようもなかった。

(何で。どうして……!)

 苦しくて、つらくて、胸が張り裂けそうだった。

 大事なものを取られてしまったような感覚。今の私の、唯一の友達を知らない誰かに取られるなんて。
 私だけの早希なはずなのに。私の大事な友達なのに。

(どうして私に連絡しないで遊びに行ってたの! 一言くらい連絡してくれてもいいんじゃないの……!?)

 こんなことを思うのは、自分のワガママなことはわかっている。
 でも、それでも、私は我慢できなかった。納得できなかった。

 連絡もしないで、私の知らない友達と一緒にいて、楽しそうにしてて、私だけの友達だと思っていたのに。

 まさしく独占欲。
 早希は誰のものでもないのに、私以外の誰かと仲良くしているのが悔しくて憎かった。私の唯一の友達なんだから、私だけと仲良くして欲しかった。

(私には、早希しかいないのに……!)

 理不尽だとわかっていても、感情が止められなかった。





 __ピロン

 視線を落とすと、スマホにまた通知が来てるのが見える。指でロックを外してアプリ画面を見れば、未読通知が溜まっていた。

 あれから早希から連絡がたくさん来ているけど、返す余裕がない。

 自分は連絡が欲しいって思っていたのに、自分は返さないなんてワガママ過ぎると思うけど、それでも私はどうしても返す気にはなれなかった。

(そもそも、何て言えばいいのかわからない)

 お母さんもあれから私がおかしいのに気づいて、当たり障りないことしか聞いてこない。

 でも、私が早希の話をしなくなったせいか、早希と何かあったことは察したらしい。だから、あえてその話題は出さないようにしているみたいだった。

(勉強しよ)

 勉強を始める。勉強は余計なことを考えなくていいから好きだ。勉強さえしていれば、現実逃避ができた。

(えっと、参考書、参考書……)

 そう思って取り出すと、出てきたのは早希からもらった参考書。それを見るなり、私はその参考書を衝動的に壁に向かって投げつける。

 バンッ!!

 壁に当たった参考書は大きな音を立てて壁にぶつかり、そして重力に従って床に落ちた。

(もう、やだ……)

 勉強に逃げようとしたはずなのに、逃げられなくて自暴自棄になる。こんな自分が情けなくてどうしようもなくて、苦しい。

 そもそも、私は何のために勉強をしているんだろう?

 何で生きているんだろう。

 あのとき、どうして死ななかったのだろう。

(何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で)

 頭をぐしゃぐしゃに掻き毟る。

 考えても考えても、わからない。本当ならごく普通の生活をして、家族揃って、楽しく、時にはつらいことがありながらも、ただ何でもない毎日を過ごしていたはずなのに。

 どうして、どうして、こんなことになっちゃったのかわからない。

(生きているのがつらい)

 十年。

 十年が抜け落ちた私の人生は一体どうすればいいの。

 この十年、どうやって取り戻せばいいの?

 わからない。わからない。

(どうして、何で、私だけがこんな目に合わなきゃいけないの? 私が何をしたって言うの!?)

 キッチンにフラフラと歩いて行き、包丁を取り出す。

(これで首やお腹を切ったら死ねるだろうか。でも、痛いのは嫌だなぁ)

 そう思って包丁は元の位置に戻す。ならばと今度は戸棚の前に行く。取り出したのは風邪薬だった。

(これを、いっぱい、飲めば……)

 ジャラジャラジャラと瓶に入った錠剤を手に出す。
 そして、それを口いっぱいに入れると、水を取り出してどんどんとゆっくり飲み込んでいく。

(これで、死ねる、かな)

 時間が経つと、だんだんと眠くなってくる。

(あぁ、気持ち悪い。でも、とっても、……眠い)

 意識が遠のいていく。

 だんだんと身体から力が抜けていくのを感じながら、私はそのまま意識を手放した。