「ジュリアン様、クラリス様。アルシェリア王国の〝ブライダル事業〟を担当しております、アンネリーゼ・フォン・エルディナと申します。丁寧なご挨拶をいただき、光栄に存じますわ」
アンネリーゼは前に進み出ると、淑女の礼を返す。
シグルドが三人の間を取り持つ。
「アンネ、彼らには、君が今進めているレナートたちの計画を支えてもらおうと思っている。ジュリアンは見た目どおり社交界での人脈が広く、クラリスは王都の令嬢たちの流行(はや)りに敏感だ。きっと君の強力な味方になってくれるはずだと思ってな」
「見た目どおり……ってそれ、褒めているんだよね?」
「そのつもりだが?」
ジュリアンとシグルドが軽快なやり取りをしている。
(おふたりとも、とても仲が良さそうね!)
ジュリアンとシグルドからは、身分を越えた親しさが伝わってくる。
アンネリーゼはクラリスに向き直った。
「クラリス様も、お力をお貸しくださってありがとうございます。……それとは別なのですが、わたくし、お恥ずかしながら同世代の友人が――アルシェリア王国に参りましてまだ日が浅く、ほとんどおりませんので、ぜひあの、仲良くしていただけたら……」
アンネリーゼが言い終わる前に、クラリスが食い気味に言葉を被せる。
「まあ、なんてかわいらしい方でいらっしゃるの……! わたくしでよろしければ、ぜひともお友だちになってくださいませ、アンネリーゼ様」
「ほ、本当に?」
「ええ、ええ、もちろんですわ! もしよろしければ、わたくしのことは〝クラリス〟とお呼びくださいませ」
「では、わたくしのことも〝アンネ〟と――」
クラリスと互いの手を取り合う。やわらかくて、小さくて、温かな彼女の手。つないでいるだけで勇気をもらえるようだった。
(このようなステキな出会いをいただけて、シグルド様に感謝しなければ)
アンネリーゼは、改めてシグルドに向き直る。
「シグルド様、ありがとうございます。おふたりのような心強い味方がいてくだされば、これほどうれしいことはありません」
「それはよかった。以前、君に友人たちを紹介したいと言っただろう? こうしてその機会を持つことができてうれしい」
「シグルド的には、自慢の婚約者殿を俺たちに紹介したいっていう側面もあったと思うけどね。……それにしても、おまえが自慢したくなるのもわかるくらい魅力的な女性だよ。彼女の内面には輝きがある。それがあふれ出ていて、とても美しいよ」
まっすぐなジュリアンの賛辞に、恐れ多くて恥ずかしくなってしまう。
顔をうつむけていると、そんな自分とジュリアンの間にシグルドが割って入った。
「……ジュリアン、彼女は渡さないぞ」
「わかってるって。この朴念仁(ぼくねんじん)な親友が骨抜きになるのも納得だよ。……アンネ嬢、こいつはずっと恋愛事には無頓着でね。国の窮状を救うことばかりに必死になって、自分自身の幸せを疎(おろ)かにしていたから、友人としてはずっと気がかりだったんだ。だから……シグルドのことを、よろしく頼むよ」
その言葉に込められたシグルドへの深い友情と、自分を信頼して託してくれた重みに、胸の奥がじわりと熱くなる。
(シグルド様は、ジュリアン様のことを〝軽薄な男〟なんて冗談っぽく紹介していたけれど――)
その実、ジュリアンは誰よりも近くで、王太子としての重責をひとりで背負い込んできた彼の孤独を案じていたのかもしれない。
(優しくて思いやりのあるベルナール兄妹。ふたりが力を貸してくれるのならば、きっと王都でのウェディングプロデュースも上手くいくはず……ううん、成功させてみせるわ)
レナートとミリーのような身分差のある恋を、ただの〝例外〟として終わらせるのではなく、王都の貴族たちが心から祝福したくなるような〝奇跡〟へと昇華させる。そのためには、彼らのような理解ある貴族の協力が必要不可欠だ。
ジュリアンが、場を進行させようと軽く手をたたく。
「アンネ嬢、さっそくだけれど、さきほどシグルドから聞いた〝リメイクドレス〟というものの構想について、詳しく聞かせてもらえるかい? クラリスが、自分もなにかお手伝いできることはないかと朝から張り切っていてね」
「わたくしがお力になれることはなにかと考えて、やはり社交界で令嬢たちの間で流行(はや)っているドレスのデザインをお伝えすることだと思いましたの。王家に眠っている古いドレスが、アンネのウェディングの魔法でどのように生まれ変わるのか、考えただけでワクワクしてしまいますわ!」
「ふたりとも、ありがとうございます! まだわたしの頭の中にある構想と、机の上のプランニングシートだけなのですが……ぜひ、こちらへ。おふたりの知恵をお借りして、最高の門出をプロデュースしましょう!」
シグルドの優しいまなざしに見守られながら――アンネリーゼは新しい仲間たちと共に、王都に希望の光を灯すための本格的な一歩を踏み出した。
アンネリーゼは前に進み出ると、淑女の礼を返す。
シグルドが三人の間を取り持つ。
「アンネ、彼らには、君が今進めているレナートたちの計画を支えてもらおうと思っている。ジュリアンは見た目どおり社交界での人脈が広く、クラリスは王都の令嬢たちの流行(はや)りに敏感だ。きっと君の強力な味方になってくれるはずだと思ってな」
「見た目どおり……ってそれ、褒めているんだよね?」
「そのつもりだが?」
ジュリアンとシグルドが軽快なやり取りをしている。
(おふたりとも、とても仲が良さそうね!)
ジュリアンとシグルドからは、身分を越えた親しさが伝わってくる。
アンネリーゼはクラリスに向き直った。
「クラリス様も、お力をお貸しくださってありがとうございます。……それとは別なのですが、わたくし、お恥ずかしながら同世代の友人が――アルシェリア王国に参りましてまだ日が浅く、ほとんどおりませんので、ぜひあの、仲良くしていただけたら……」
アンネリーゼが言い終わる前に、クラリスが食い気味に言葉を被せる。
「まあ、なんてかわいらしい方でいらっしゃるの……! わたくしでよろしければ、ぜひともお友だちになってくださいませ、アンネリーゼ様」
「ほ、本当に?」
「ええ、ええ、もちろんですわ! もしよろしければ、わたくしのことは〝クラリス〟とお呼びくださいませ」
「では、わたくしのことも〝アンネ〟と――」
クラリスと互いの手を取り合う。やわらかくて、小さくて、温かな彼女の手。つないでいるだけで勇気をもらえるようだった。
(このようなステキな出会いをいただけて、シグルド様に感謝しなければ)
アンネリーゼは、改めてシグルドに向き直る。
「シグルド様、ありがとうございます。おふたりのような心強い味方がいてくだされば、これほどうれしいことはありません」
「それはよかった。以前、君に友人たちを紹介したいと言っただろう? こうしてその機会を持つことができてうれしい」
「シグルド的には、自慢の婚約者殿を俺たちに紹介したいっていう側面もあったと思うけどね。……それにしても、おまえが自慢したくなるのもわかるくらい魅力的な女性だよ。彼女の内面には輝きがある。それがあふれ出ていて、とても美しいよ」
まっすぐなジュリアンの賛辞に、恐れ多くて恥ずかしくなってしまう。
顔をうつむけていると、そんな自分とジュリアンの間にシグルドが割って入った。
「……ジュリアン、彼女は渡さないぞ」
「わかってるって。この朴念仁(ぼくねんじん)な親友が骨抜きになるのも納得だよ。……アンネ嬢、こいつはずっと恋愛事には無頓着でね。国の窮状を救うことばかりに必死になって、自分自身の幸せを疎(おろ)かにしていたから、友人としてはずっと気がかりだったんだ。だから……シグルドのことを、よろしく頼むよ」
その言葉に込められたシグルドへの深い友情と、自分を信頼して託してくれた重みに、胸の奥がじわりと熱くなる。
(シグルド様は、ジュリアン様のことを〝軽薄な男〟なんて冗談っぽく紹介していたけれど――)
その実、ジュリアンは誰よりも近くで、王太子としての重責をひとりで背負い込んできた彼の孤独を案じていたのかもしれない。
(優しくて思いやりのあるベルナール兄妹。ふたりが力を貸してくれるのならば、きっと王都でのウェディングプロデュースも上手くいくはず……ううん、成功させてみせるわ)
レナートとミリーのような身分差のある恋を、ただの〝例外〟として終わらせるのではなく、王都の貴族たちが心から祝福したくなるような〝奇跡〟へと昇華させる。そのためには、彼らのような理解ある貴族の協力が必要不可欠だ。
ジュリアンが、場を進行させようと軽く手をたたく。
「アンネ嬢、さっそくだけれど、さきほどシグルドから聞いた〝リメイクドレス〟というものの構想について、詳しく聞かせてもらえるかい? クラリスが、自分もなにかお手伝いできることはないかと朝から張り切っていてね」
「わたくしがお力になれることはなにかと考えて、やはり社交界で令嬢たちの間で流行(はや)っているドレスのデザインをお伝えすることだと思いましたの。王家に眠っている古いドレスが、アンネのウェディングの魔法でどのように生まれ変わるのか、考えただけでワクワクしてしまいますわ!」
「ふたりとも、ありがとうございます! まだわたしの頭の中にある構想と、机の上のプランニングシートだけなのですが……ぜひ、こちらへ。おふたりの知恵をお借りして、最高の門出をプロデュースしましょう!」
シグルドの優しいまなざしに見守られながら――アンネリーゼは新しい仲間たちと共に、王都に希望の光を灯すための本格的な一歩を踏み出した。


