千景の表情が、はっきりと止まった。
目を見開いたわけではない。
息を呑む音もなかった。
ただ、言葉だけがすべて失われたみたいに、ぴたりと動きを止めた。
自分が何を言ったのかを、その静けさの中でようやく理解した。
兄妹じゃないかもしれない。
その可能性は、つい今しがたまで恐ろしいものだった。
でも同時に、胸のどこかで、ひどく甘い響きを持ってしまっていたことも否定できない。
考えてはいけないことなのに、その一瞬だけ、世界が明るくなるように感じてしまった自分がいた。
千景は何も言わない。
その横顔を見て、私はかすかに息を詰めた。
千景もまた、同じことを考えたのだと、わかってしまったから。
兄妹ではなくなれるかもしれない。
その可能性に、一瞬でも救われてしまった。
許されるはずのない、お互いのこの思いが、許されるものになるのかもしれない。
そう思ってしまったことを、千景自身も隠しきれなかったのだと。
もし、お互いを隔てる、この一線が最初からなかったのなら。
そんな考えが甘く胸を撫でていったことを、その可能性をなかったことにはできない。
それがいけないことだとわかるからこそ、なおさら苦かった。
けれど、次に千景が口を開いた時、その声は低く、苦しいほど落ち着いていた。
「……そんな顔をするな」
誰に向けた言葉なのか、一瞬わからなかった。
私に向けたものか、嘉月に向けたものか、それとも千景自身に向けたものか。
「すまない。熱くなり過ぎた。お前が決めることだ」
「兄さん」
ぽん、と私の頭に優しく手を置きながら、千景はゆっくりという。
「俺が勝手に決めることでも、期待することでもない」
「……」
「だから、弥生。お前が望むなら、確かめよう」
その言葉を聞いて、目を伏せる。
胸の奥がひどく痛くて、なのに少しだけ楽になった気もした。
千景は、救われたい気持ちだけで頷いたのではない。
それを望んでしまう自分ごと、引き受けるようにして言ってくれている。
自分だけ楽になりたいから背中を押したのではない。
その先で私が何を知り、何を失うかまで含めて、そばにいるつもりで言ってくれたのだと。
「……うち、知りたいです」
目を見開いたわけではない。
息を呑む音もなかった。
ただ、言葉だけがすべて失われたみたいに、ぴたりと動きを止めた。
自分が何を言ったのかを、その静けさの中でようやく理解した。
兄妹じゃないかもしれない。
その可能性は、つい今しがたまで恐ろしいものだった。
でも同時に、胸のどこかで、ひどく甘い響きを持ってしまっていたことも否定できない。
考えてはいけないことなのに、その一瞬だけ、世界が明るくなるように感じてしまった自分がいた。
千景は何も言わない。
その横顔を見て、私はかすかに息を詰めた。
千景もまた、同じことを考えたのだと、わかってしまったから。
兄妹ではなくなれるかもしれない。
その可能性に、一瞬でも救われてしまった。
許されるはずのない、お互いのこの思いが、許されるものになるのかもしれない。
そう思ってしまったことを、千景自身も隠しきれなかったのだと。
もし、お互いを隔てる、この一線が最初からなかったのなら。
そんな考えが甘く胸を撫でていったことを、その可能性をなかったことにはできない。
それがいけないことだとわかるからこそ、なおさら苦かった。
けれど、次に千景が口を開いた時、その声は低く、苦しいほど落ち着いていた。
「……そんな顔をするな」
誰に向けた言葉なのか、一瞬わからなかった。
私に向けたものか、嘉月に向けたものか、それとも千景自身に向けたものか。
「すまない。熱くなり過ぎた。お前が決めることだ」
「兄さん」
ぽん、と私の頭に優しく手を置きながら、千景はゆっくりという。
「俺が勝手に決めることでも、期待することでもない」
「……」
「だから、弥生。お前が望むなら、確かめよう」
その言葉を聞いて、目を伏せる。
胸の奥がひどく痛くて、なのに少しだけ楽になった気もした。
千景は、救われたい気持ちだけで頷いたのではない。
それを望んでしまう自分ごと、引き受けるようにして言ってくれている。
自分だけ楽になりたいから背中を押したのではない。
その先で私が何を知り、何を失うかまで含めて、そばにいるつもりで言ってくれたのだと。
「……うち、知りたいです」



