学校には通わせてもらえた。
近くの女学校に入学することになり、朝の家の家事が終わり次第、毎朝歩いて通う。
問題は、学校での言葉だった。
京都生まれの京都育ちで、話す言葉は自然と京言葉になる。
意識して直そうとすると、舌の置き場が分からなくなるみたいに変な抑揚になって、かえって笑われた。
家でも外でも、口にするたび、自分の言葉だけがどこか余所者みたいだった。
「あなた、変な喋り方ね」
同じクラスの女子に、そう言われた。
悪意があったわけではないのだと思う。
ただ、珍しくて、おかしかっただけ。
けれど、口を噤むには十分な一言だった。
その日から、余計なことを話さないように、聞かれたことにだけ答えるようになった。
なるべく短く、変な抑揚が混ざらないように。
そうしていれば、笑われずに済む気がした。
屋敷に帰ると、廊下で千景に声をかけられた。
「学校はどうだ」
「……まあまあ、やと思います」
「言葉、気をつけろ」
二度目の忠告に、胸の奥が、すうっと冷える。
学校で言われたことまで見透かされた気がして、うまく返事ができない。
「嫌なことを言ってすまない」
「……はい」
私は少し驚いて、千景の顔を見た。
千景は相変わらず淡々とした表情で、責めているようには見えなかった。
むしろ、言うべきことだから言っている、それだけのように見える。
「お前の京言葉は綺麗だ。俺の前でだけなら問題はない」
一瞬、意味が分からなかった。
綺麗だと言われたのは、たぶん初めてだったからだ。
直した方がいいと言われたその言葉を、同じ口で綺麗だと言われる。
それが不思議で、すぐには飲み込めない。
その一言だけ残し、立ち去る千景の背中を見送る。
冷たい言い方だと思う人もいるかもしれない。
けれど、私はそれが嫌ではなかった。
哀れまれるより、ずっとよかった。
私の言葉を、ちゃんと聞いたうえでそう言ってくれた気がしたから。
近くの女学校に入学することになり、朝の家の家事が終わり次第、毎朝歩いて通う。
問題は、学校での言葉だった。
京都生まれの京都育ちで、話す言葉は自然と京言葉になる。
意識して直そうとすると、舌の置き場が分からなくなるみたいに変な抑揚になって、かえって笑われた。
家でも外でも、口にするたび、自分の言葉だけがどこか余所者みたいだった。
「あなた、変な喋り方ね」
同じクラスの女子に、そう言われた。
悪意があったわけではないのだと思う。
ただ、珍しくて、おかしかっただけ。
けれど、口を噤むには十分な一言だった。
その日から、余計なことを話さないように、聞かれたことにだけ答えるようになった。
なるべく短く、変な抑揚が混ざらないように。
そうしていれば、笑われずに済む気がした。
屋敷に帰ると、廊下で千景に声をかけられた。
「学校はどうだ」
「……まあまあ、やと思います」
「言葉、気をつけろ」
二度目の忠告に、胸の奥が、すうっと冷える。
学校で言われたことまで見透かされた気がして、うまく返事ができない。
「嫌なことを言ってすまない」
「……はい」
私は少し驚いて、千景の顔を見た。
千景は相変わらず淡々とした表情で、責めているようには見えなかった。
むしろ、言うべきことだから言っている、それだけのように見える。
「お前の京言葉は綺麗だ。俺の前でだけなら問題はない」
一瞬、意味が分からなかった。
綺麗だと言われたのは、たぶん初めてだったからだ。
直した方がいいと言われたその言葉を、同じ口で綺麗だと言われる。
それが不思議で、すぐには飲み込めない。
その一言だけ残し、立ち去る千景の背中を見送る。
冷たい言い方だと思う人もいるかもしれない。
けれど、私はそれが嫌ではなかった。
哀れまれるより、ずっとよかった。
私の言葉を、ちゃんと聞いたうえでそう言ってくれた気がしたから。



