やがて殿下が就寝し、ミレイユはベッドの端でしばらく起きていた。
最近は、殿下が眠ってからすぐに動く。
今夜も、寝息が深くなったのを確認して、そっとベッドの上を進んだ。
「ぺろ(今日も……疲れていた)」
「ぺろぺろぺろぺろ(ああ、またやってしまった)」
けれど今夜は、何かが違った。
殿下の寝息が——変わっていない。
ミレイユは固まった。
「……今夜で、何日目になる」
殿下が静かに言った。
(おきてた!!!!また!!!!)
ミレイユは石になった。
いや、白い猫の彫刻になった。
耳も、尻尾も、ひげの先まで止まった気がした。
殿下が目を開けた。
天井を見上げたまま、すぐにはミレイユの方を見ない。
「数えていた」
「ミャッ!?(数えてた!?)」
「最初の夜からだと、もうずいぶんになる」
「ミャミャッ!?(知ってたの……ずっと知ってたの……!?)」
ミレイユは混乱した。
知っていたなら、なぜ今まで何も言わなかったのか。
「嫌ではなかったから、言わなかった」
(嫌ではなかった……)
殿下が続けた。
まるでミレイユの考えを読んだような間で。
「猫が頭を舐めるのは、信頼の表れだと聞いた。だとすれば……悪い気はしない」
以前も聞いた言葉だ。
でも今夜の言い方は少し違った。
ただの知識として言っているのではなく、自分に向けられたものとして受け取っている響きがある。
殿下がミレイユを見た。
青灰色の瞳が、暗い中でもはっきり見える。
「ミィ。お前は、不思議な猫だ」
(不思議……)
「賢すぎる。人間の言葉がわかっているように見える。感情がある。何かを考えている。猫というより……人のようだ」
ミレイユは動けなかった。
殿下が何かに気づいているのか。
それとも、ただ観察した結果そう思っただけなのか。
どこまで届いているのか、まるでわからない。
殿下が目を閉じた。
「お前が人間だったら良かったのに」
その言葉は、あまりにまっすぐで、反論のしようがなかった。
ミレイユはゆっくりと殿下の枕元へ移動して、丸まった。
今夜は、ぺろぺろはしなかった。
ただ、そばにいた。
それだけで——十分だった。
胸の奥がいっぱいで、もうそれ以上は何もできなかった。
(殿下……がんばって人間に戻りますので。待っていてくれますか?)
その言葉を、ミレイユは胸の中でもう一度繰り返した。
(人間に戻っても、ここに戻れますように)
そう、強く願いながら。
夜は静かだった。
最近は、殿下が眠ってからすぐに動く。
今夜も、寝息が深くなったのを確認して、そっとベッドの上を進んだ。
「ぺろ(今日も……疲れていた)」
「ぺろぺろぺろぺろ(ああ、またやってしまった)」
けれど今夜は、何かが違った。
殿下の寝息が——変わっていない。
ミレイユは固まった。
「……今夜で、何日目になる」
殿下が静かに言った。
(おきてた!!!!また!!!!)
ミレイユは石になった。
いや、白い猫の彫刻になった。
耳も、尻尾も、ひげの先まで止まった気がした。
殿下が目を開けた。
天井を見上げたまま、すぐにはミレイユの方を見ない。
「数えていた」
「ミャッ!?(数えてた!?)」
「最初の夜からだと、もうずいぶんになる」
「ミャミャッ!?(知ってたの……ずっと知ってたの……!?)」
ミレイユは混乱した。
知っていたなら、なぜ今まで何も言わなかったのか。
「嫌ではなかったから、言わなかった」
(嫌ではなかった……)
殿下が続けた。
まるでミレイユの考えを読んだような間で。
「猫が頭を舐めるのは、信頼の表れだと聞いた。だとすれば……悪い気はしない」
以前も聞いた言葉だ。
でも今夜の言い方は少し違った。
ただの知識として言っているのではなく、自分に向けられたものとして受け取っている響きがある。
殿下がミレイユを見た。
青灰色の瞳が、暗い中でもはっきり見える。
「ミィ。お前は、不思議な猫だ」
(不思議……)
「賢すぎる。人間の言葉がわかっているように見える。感情がある。何かを考えている。猫というより……人のようだ」
ミレイユは動けなかった。
殿下が何かに気づいているのか。
それとも、ただ観察した結果そう思っただけなのか。
どこまで届いているのか、まるでわからない。
殿下が目を閉じた。
「お前が人間だったら良かったのに」
その言葉は、あまりにまっすぐで、反論のしようがなかった。
ミレイユはゆっくりと殿下の枕元へ移動して、丸まった。
今夜は、ぺろぺろはしなかった。
ただ、そばにいた。
それだけで——十分だった。
胸の奥がいっぱいで、もうそれ以上は何もできなかった。
(殿下……がんばって人間に戻りますので。待っていてくれますか?)
その言葉を、ミレイユは胸の中でもう一度繰り返した。
(人間に戻っても、ここに戻れますように)
そう、強く願いながら。
夜は静かだった。



