あらくも、みやびに

「かわいいね。」
君がそう言うときは、決まってキスがしたいとき。コーヒーが好きな君のキスは少し苦い。私の苦そうな顔を少しうれしそうに見る君は、意地悪だ。無責任な愛だけ与えて、幸せをくれない人。心がぼろぼろになっても、君に擦り寄る私の姿は、さぞ、みすぼらしく滑稽だったろう。涙を流しながら「好き。」という私に、望んだ返事をくれず、いつものように「かわいいね。」といい、キスをする。君のコーヒーの味が、私のしょっぱさを隠してくれなくなった頃、とびきりの甘さをくれる人が現れた。
「君を不幸にする人は、君の運命ではないんだよ。」
そういった彼は、光り輝くような春風を纏って、私に幸せを運んできた。「大好き。」「愛してる。」「君だけだ。」私の心が愛の花束で満たされる。君は私のこんなに幸せそうな笑顔を見たことはないだろう。私がこんなに綺麗なアイラインを描けるなんて知らないだろう。私が実は鮮やかな赤色のリップが好きなんて知らないだろう。その全てを知っている彼が、この前初めて、あの言葉をくれた。
「かわいいね。」
君のではない。けど、そのときに確かに私の口には苦さが広がったのだ。