あらくも、みやびに

大学受験。いわゆる進学校と呼ばれる高校だったにも関わらず、高校二年生になったときに「芸術系に行きたい。」と言い出した私。今考えると反対されるのが当然だった。他の先生は進学校ゆえのプライドがあるそうで、そういうのは相談しても許されなかったらしい。怒られることもあったそうだ。ただ、私の担任は違った。少し厳しいイメージのあった担任は、私の話を聞いた時に「申し訳ない。」と言った。「応援はする。ただ芸術系の学校には明るくないため、自分が導くことが出来ない。申し訳ない。」とのことだった。それは、ただ突き放したわけではないことがよく分かる言い方だった。結果、私は第一希望ではないものの、納得のいく大学に行き、想像と全く同じだったわけではないが、ある程度、納得のいく内容の仕事に就くことになった。
あるとき、受験の報告以降、初めて高校に立ち寄る機会があった。多忙なはずの当時の担任が、校内にいるとのことで会いに行くことにした。当時とあまり雰囲気の変わっていない担任は、部活中にも関わらず、話に廊下に出てきてくれた。担任は一言目に「好きな仕事は出来てるか?」と聞いてきた。「やりたかったと思ってたことに近いことは出来てます。」と返す。すると、担任は「そうか…そうか。」と言い、手すりに額を当てた。そのとき、表情は見えないが、安堵のようなため息が聞こえた気がした。