あらくも、みやびに

ちゅ、と彼の手首から、音が響いた。
「なに?どうしたの?」
「ん〜。」
静かな部屋。本から目を離さない彼。私は、勝手に預かった彼の片手で遊んでいた。そんな彼に返事をせずに、もう一度、彼の手首の内側にキスをする。ちゅ、ちゅ、と繰り返し、その後、少し長めに唇を当てた。
「何、寂しいの?読書やめようか?」
彼は困ったように笑い、こっちを見た。私は黙って目を逸らし、気にすることなく、長めに唇を当てていた場所に、つつ、とまた唇を当てる。血が流れている少し高めの体温、そして、トクントクンと脈を打つ感覚が、唇の先をなぞる。その感覚に口角が上がった。
「ふふ。」
「ねぇ、さっきから何?」
「生きてる。」
「そりゃね。…変な人だな。」
本をパサリと置き、私の頬に手を伸ばす彼。
「本、読むのやめるの?」
「それ君が言う?」
寂しくて邪魔してたわけじゃないの?と、少しつまらなさそうに言う彼。大人しく抱きしめられる私。甘く絡む彼の視線に私の目は溶かされる。
「ここにもしてよ。さっきみたいなの。」
トントンと彼が自身の唇を指した。彼の手を取る。
「待って。もう一回だけ。」
彼は呆れた顔で、私に手を預ける。手の平に頬を擦り寄せてから、唇を当てた。トクントクンと唇に小さなノック。私は愛おしいを確かめる。