あらくも、みやびに

私は毎年、魔女に会います。
その魔女は、まるで美しい花を連れてくるように春に現れます。
もうずっと前から、私は彼女を知っているのに、いつまでもその姿は変わりません。
彩り鮮やかな服を身にまとう彼女は、華やかで明るい。魔女というよりは春の妖精の方が近い気もします。それでも、彼女は魔女なのです。
それでも私が魔女と呼ぶのには理由があります。
彼女は祖母の古い友人らしく、私の祖母を「よっちゃん」と呼ぶのです。私の祖母も彼女のことを「むっちゃん」と呼んでいます。
それがなんだ、と思うかもしれません。ただ、これは私にとっては、とても特別な呼び方なのです。祖母のこのあだ名は、祖父と結婚する前…つまり旧姓のあだ名です。私が知る限り、祖母をそう呼ぶのは彼女だけ。はじめは「祖母の名前に『よ』なんて入ってないのに」と不思議に思ったものでした。理由を聞いた時に納得しました。彼女の中では祖母はいつまでも「よっちゃん」なのです。
彼女が祖母と腕を組み、歩き、お互いをあだ名で呼びあう瞬間…祖母に魔法がかかります。普段は私の祖母であり、母親の母である姿しか見せない。そんな祖母の時間が、軽やかに巻き戻るのです。「よっちゃん」と呼ばれていた…少女から女性になる頃の「よっちゃん」になるのです。私は当時の2人を知りません。それでも目の前にいるのは「よっちゃん」と「むっちゃん」でした。
それはとても不思議で、私にとって魔法としか言いようがありません。
だから、彼女は魔女なのです。