死ぬまでに叶えたい十の願い——名ばかりの正妃、最後の一年

麗華は長い療養を経て、再び宮廷での生活に戻った。
体は完全に呪いから解放され、呪術師は「これ以上頑丈な方はおいそれとは見つかりません」と断言した。

延徳帝は変わっていた。
かつての険しさは消えたわけではなかったが、その下に何か柔らかいものが加わっていた。
麗華に言葉をかける時、以前より少しだけ多く言葉を使った。
少しだけ、そしてそれが積み重なって、かなりになった。

徳偉は変わらずにこにこしながら仕えた。
麗華が回復したと聞いた瞬間、彼は珍しく人目もはばからず涙を流し、翌日から何事もなかったように仕事を続けた。

ある春の日、麗華は延徳帝に言った。

「陛下、新しい願いがあります」
「言え」
「一番目の願いをもう一度。街に、一緒に行きましょう」
「構わない」
「今度は、包子を自分で買ってみたいです。それから、花屋も見てみたいです。あの花売りの少女に、また会えるかもしれない。忘憂花の花、今年も咲いているでしょうか」
「今は春だから、まだかもしれない」
「そうですね。では、秋まで待ちましょう。秋になったらまた行って、一緒に買いましょう」

延徳帝は麗華を見た。

「お前は、花が好きだったのか」
「はい。特に、珍しい花が」
「それなら庭師に言って、王宮の庭に植えさせる」
「まあ!それは贅沢すぎます」
「お前が欲しいものを、これからは隠すな」

麗華はしばらく延徳帝を見ていた。それから言った。

「では、もう一つ、今すぐに叶えてほしいことがあります」
「何だ」
「……名前で呼んでいただけますか。麗華……と」

延徳帝は少し驚いた様子だった。それから、静かに言った。

「……麗華」

名前を呼ばれるたびに、世界が少しずつ変わる。
麗華はそれを感じながら、微笑んだ。
嘘はもうどこにもなかった。三年前の呪いも、三年前の誤解も、三年前の沈黙も、全て解けた。
白い結婚だった三年間の先に、止まった三年間があって、その先に今がある。
今がある。
それだけで、十分だった。

春の光の中で、二人は並んで窓の外を見た。
庭には花が咲き始めていた。
それは、始まりの景色だった。