雪蘭はその日のうちに幽閉された。
延徳帝の命は簡潔で、迷いがなかった。
彼女がかけた呪いの責任を問い、王宮の塔に閉じ込めた。
外部との接触を断ち、唯一の窓だけを残した。
宮廷の誰もが驚いた。
延徳帝が愛した雪蘭を、これほど冷静に処断できるとは思わなかった。
しかし、延徳帝には既に、かつてとは違う何かが宿っていた。
彼はその後、三年間を呪いの解決に費やした。
帝国中の呪術師を集めた。
隣国にまで手を伸ばし、異国の魔法使いとも交渉した。
古い書物を取り寄せ、自ら読み、呪術師と共に夜を徹して研究を続けた。
その間、延徳帝は麗華の部屋を変えず、彼女の体は白い寝台の上で眠っていた。
死んでいるわけでも生きているわけでもない状態で、ただ止まっていた。
顔色は日を追っても変わらずに、まるで眠っているよう。
蝋燭に照らされた横顔は、あの十の願いの時と変わらず。
延徳帝は毎晩、その部屋を訪れた。
言葉はほとんど言わなかった。
ただ、傍に座って、しばらく過ごした。
「野遊の帰り、お前が転びかけたな。あの時、手を掴んだ。それが最初だった」
「奏楽の夜、お前が目を閉じて音楽を聴いていた。あの顔を……何年も前から知っていたような気がした」
「嫌いだと言えなかった理由は、お前にはわかっていたな。わかっていたのに、最後まで私に言わせようとした。それが少し、腹が立った」
誰もいない部屋で、独り言のように語り続けた。
それは謝罪でもあり、告白でもあり、三年間言えなかったことの全てだった。
二年が経った。
呪術師が一つの手がかりを見つけた。
麗華にかけられた呪いは、単純な死の呪いではなく、複合的なものだった。
その核心にあるのは『愛されなかった者の嘆き』という古い呪術の形式で、術をかけた者の心の状態が大きく影響していた。
つまり、雪蘭の嫉妬と哀しみが呪いの根幹にあった。
「呪いを解く鍵は、術をかけた者の心そのものにございます。雪蘭様が自らの行いを認め、赦しを請い、真に心が解放されれば……呪いは弱まるかもしれません」
延徳帝は雪蘭の元を訪れた。
塔の窓辺に置かれた香炉の灰が、季節の数だけ積もっていた。
二年半ぶりに見る雪蘭は、すっかり変わっていた。
塔の中で過ごした時間が彼女から何かを奪い、そして別の何かを与えていた。
美しさはまだあったが、かつての輝きとは違う、枯れ木のような静けさが宿っていた。
延徳帝は椅子に座り、雪蘭を見た。
「麗華への呪いを、解いてほしい」
「解き方は存じ上げませんわ」
「呪術師が調べた。お前の心が本当に変われば、呪いは弱まるという。嫉妬が、憎しみが、解けていけば」
「……それなら、生涯解けませんかもしれませんわね。……わたくしがどれだけ愛しても、あなたはきっと彼女を選びました」
雪蘭は長い間、窓の外を見ていた。
「わたくしは間違えたのでしょうか。あなたが私を見てくれなくなるのが怖くて、彼女を傷つけました。でも……あなたが彼女を選んだ理由が、今なら少しわかりますわ」
「なぜだ」
「彼女は、わたくしを恨みませんでしたわ。私が命を縮めたのに、怒らなかったのです。それが本当に……」
雪蘭は目を閉じた。
「怖かったのですわ。そういう人間には、勝てませんわ」
その夜、雪蘭は長い時間をかけて、何かと向き合った。
それは自分自身との対話だったのか、あるいは祈りだったのか、延徳帝にはわからなかった。
しかし翌朝、呪術師が麗華の部屋で静かに報告した。
「呪いが弱まっています」
延徳帝の命は簡潔で、迷いがなかった。
彼女がかけた呪いの責任を問い、王宮の塔に閉じ込めた。
外部との接触を断ち、唯一の窓だけを残した。
宮廷の誰もが驚いた。
延徳帝が愛した雪蘭を、これほど冷静に処断できるとは思わなかった。
しかし、延徳帝には既に、かつてとは違う何かが宿っていた。
彼はその後、三年間を呪いの解決に費やした。
帝国中の呪術師を集めた。
隣国にまで手を伸ばし、異国の魔法使いとも交渉した。
古い書物を取り寄せ、自ら読み、呪術師と共に夜を徹して研究を続けた。
その間、延徳帝は麗華の部屋を変えず、彼女の体は白い寝台の上で眠っていた。
死んでいるわけでも生きているわけでもない状態で、ただ止まっていた。
顔色は日を追っても変わらずに、まるで眠っているよう。
蝋燭に照らされた横顔は、あの十の願いの時と変わらず。
延徳帝は毎晩、その部屋を訪れた。
言葉はほとんど言わなかった。
ただ、傍に座って、しばらく過ごした。
「野遊の帰り、お前が転びかけたな。あの時、手を掴んだ。それが最初だった」
「奏楽の夜、お前が目を閉じて音楽を聴いていた。あの顔を……何年も前から知っていたような気がした」
「嫌いだと言えなかった理由は、お前にはわかっていたな。わかっていたのに、最後まで私に言わせようとした。それが少し、腹が立った」
誰もいない部屋で、独り言のように語り続けた。
それは謝罪でもあり、告白でもあり、三年間言えなかったことの全てだった。
二年が経った。
呪術師が一つの手がかりを見つけた。
麗華にかけられた呪いは、単純な死の呪いではなく、複合的なものだった。
その核心にあるのは『愛されなかった者の嘆き』という古い呪術の形式で、術をかけた者の心の状態が大きく影響していた。
つまり、雪蘭の嫉妬と哀しみが呪いの根幹にあった。
「呪いを解く鍵は、術をかけた者の心そのものにございます。雪蘭様が自らの行いを認め、赦しを請い、真に心が解放されれば……呪いは弱まるかもしれません」
延徳帝は雪蘭の元を訪れた。
塔の窓辺に置かれた香炉の灰が、季節の数だけ積もっていた。
二年半ぶりに見る雪蘭は、すっかり変わっていた。
塔の中で過ごした時間が彼女から何かを奪い、そして別の何かを与えていた。
美しさはまだあったが、かつての輝きとは違う、枯れ木のような静けさが宿っていた。
延徳帝は椅子に座り、雪蘭を見た。
「麗華への呪いを、解いてほしい」
「解き方は存じ上げませんわ」
「呪術師が調べた。お前の心が本当に変われば、呪いは弱まるという。嫉妬が、憎しみが、解けていけば」
「……それなら、生涯解けませんかもしれませんわね。……わたくしがどれだけ愛しても、あなたはきっと彼女を選びました」
雪蘭は長い間、窓の外を見ていた。
「わたくしは間違えたのでしょうか。あなたが私を見てくれなくなるのが怖くて、彼女を傷つけました。でも……あなたが彼女を選んだ理由が、今なら少しわかりますわ」
「なぜだ」
「彼女は、わたくしを恨みませんでしたわ。私が命を縮めたのに、怒らなかったのです。それが本当に……」
雪蘭は目を閉じた。
「怖かったのですわ。そういう人間には、勝てませんわ」
その夜、雪蘭は長い時間をかけて、何かと向き合った。
それは自分自身との対話だったのか、あるいは祈りだったのか、延徳帝にはわからなかった。
しかし翌朝、呪術師が麗華の部屋で静かに報告した。
「呪いが弱まっています」



