カタカタと窓が揺れる音で目が覚める。
全身から汗が流れ、服がぐっしょりと濡れていて気持ち悪い。
チリっとした痛みが首に走る。不思議に思って手を伸ばすと、何かで強く締め付けられたのか、凸凹とした感触がする。
暗い部屋の中、大輝はスマートフォンのカメラを起動して、鏡の代わりにする。
「……な、んだよ、これ」
大輝の首にはぐるりと一周を描くような太く、赤い筋が入っていた。それは、まるで血を吸って間もない鮮やかな赤い麻縄を首に括られているようだった。
カメラを見ながら首の跡に沿ってなぞるが、本物の縄があるわけではない。ただ何かの目印のように、それはたしかにそこにあった。
ガタン。
廊下の向こうで何かが落ちる音がする。
誰かが、いや、それとも何かが、襖の向こうにいる。
大輝は恐る恐る布団から起き上がると、ゆっくりと入り口の前にいく。ギシギシ、と畳の軋む音が、やけに大きく耳に入ってくる。
ごくりと唾を飲み込み、襖に手をかける。
その瞬間、バッと襖が勢いよく開く。
大輝は恐怖に耐えられなくなり、その場で飛び跳ね、倒れる。
「あ、ごめん。驚かせちゃった」
悪びれる様子のない気の抜けた声に、大輝は瞬きを繰り返す。目の前に立っていたのは、朔だった。
朔は昼間と変わらない、薄汚れたシャツに小さくなった半ズボンの姿だった。
気が抜けるような笑みを浮かべると、尻餅をついている大輝に手を伸ばす。朔を目の前にして、ようやく大輝は神道の家に泊まらせてもらっていることを思い出す。
「なんで……こんな夜中に?」
「ん? こんな夜中に会いに来ちゃ、ダメだった?」
揶揄うように笑みを深くする朔に大輝は「はぁ?」と驚かされた恨みから苛立ちをあらわにする。
「嘘だよ。本当は、心配で見にきたんだ」
「心配って、何がだよ。お前の家なのに、なんかやばいやつでも住んでるのかよ」
朔の手を借りながら立ち上がる。大輝より低い位置にある頭が、答えに悩むように揺れる。
「この集落には、神様が住んでる」
「……厨二病か?」
「ちゅうに……? それについてはよくわからないけど、神様が住んでるのは本当だよ」
おもむろに朔はカーテンの閉まった窓の向こうに視線を向ける。朔に倣うように大輝も顔を動かすと、遠くの方でカラカラと硬い何かを引きずる音が聞こえてくる。
「ほら、聞こえるでしょ。少しずつ、大きくなるこの音が」
カラカラ。
カラカラ。
それはまるで、泣いているようだった。
「――八ツ森様のお通りだ」
小さな呟きと共に、引きずる音が止む。
全身から汗が流れ、服がぐっしょりと濡れていて気持ち悪い。
チリっとした痛みが首に走る。不思議に思って手を伸ばすと、何かで強く締め付けられたのか、凸凹とした感触がする。
暗い部屋の中、大輝はスマートフォンのカメラを起動して、鏡の代わりにする。
「……な、んだよ、これ」
大輝の首にはぐるりと一周を描くような太く、赤い筋が入っていた。それは、まるで血を吸って間もない鮮やかな赤い麻縄を首に括られているようだった。
カメラを見ながら首の跡に沿ってなぞるが、本物の縄があるわけではない。ただ何かの目印のように、それはたしかにそこにあった。
ガタン。
廊下の向こうで何かが落ちる音がする。
誰かが、いや、それとも何かが、襖の向こうにいる。
大輝は恐る恐る布団から起き上がると、ゆっくりと入り口の前にいく。ギシギシ、と畳の軋む音が、やけに大きく耳に入ってくる。
ごくりと唾を飲み込み、襖に手をかける。
その瞬間、バッと襖が勢いよく開く。
大輝は恐怖に耐えられなくなり、その場で飛び跳ね、倒れる。
「あ、ごめん。驚かせちゃった」
悪びれる様子のない気の抜けた声に、大輝は瞬きを繰り返す。目の前に立っていたのは、朔だった。
朔は昼間と変わらない、薄汚れたシャツに小さくなった半ズボンの姿だった。
気が抜けるような笑みを浮かべると、尻餅をついている大輝に手を伸ばす。朔を目の前にして、ようやく大輝は神道の家に泊まらせてもらっていることを思い出す。
「なんで……こんな夜中に?」
「ん? こんな夜中に会いに来ちゃ、ダメだった?」
揶揄うように笑みを深くする朔に大輝は「はぁ?」と驚かされた恨みから苛立ちをあらわにする。
「嘘だよ。本当は、心配で見にきたんだ」
「心配って、何がだよ。お前の家なのに、なんかやばいやつでも住んでるのかよ」
朔の手を借りながら立ち上がる。大輝より低い位置にある頭が、答えに悩むように揺れる。
「この集落には、神様が住んでる」
「……厨二病か?」
「ちゅうに……? それについてはよくわからないけど、神様が住んでるのは本当だよ」
おもむろに朔はカーテンの閉まった窓の向こうに視線を向ける。朔に倣うように大輝も顔を動かすと、遠くの方でカラカラと硬い何かを引きずる音が聞こえてくる。
「ほら、聞こえるでしょ。少しずつ、大きくなるこの音が」
カラカラ。
カラカラ。
それはまるで、泣いているようだった。
「――八ツ森様のお通りだ」
小さな呟きと共に、引きずる音が止む。



