冷血美麗な吸血種への嫁入り

__紅葉が彩る、秋の満月の日のことだった。

月光に照らされ横たわる女の肩を男は抱いていた。女は口元に小さな笑みを浮かべながら、気丈そうに男を見つめるも、その瞳は徐々に光を失いつつあった。

「……慧、お願いがあるの」

女の消え入りそうな声に、男は問う。

「なんだい……?」
「最後に、私の血を吸って」

女の言葉に、男は一瞬ためらったが、すぐに頷いた。

「できるだけ、優しくするよ」
「いいえ、おもいきり痛くして。そうすれば、首元に貴方の印がつく。それがあれば、また私を見つけられるでしょう……?」

失いたくなどなかった。叶うなら、永遠に共に生きたかった。

(もしも、彼女の言う通り、もう一度、出会うことができるのなら……)

「……分かった」

男は女の細い首に牙を立てた。女がピクリと体を動かす。そして、深く、深く、牙を突き刺し、男は女の血を吸った。女の望み通り、おもいきり痛くして、自分の印を刻み込んだ。
女が目を閉じた時、また一つ、紅葉の葉が地面に落ちる。
男の頬から、涙が伝った。
その鼓動が止まってもなお、女は美しかった。