「あのー、何してるんですか」
様子のおかしな久登先輩に話しかけるも、その間もブーブー、通知音がうるさい。先輩の指は今もひたすら連打。何をしたいのか、呆れてしまう。
「もう……なんなんですか」
息をひとつ落として、トーク画面を開いた。
そこには狐のイラストが使われた『つまんない』『さびしい』といった類の構ってちゃんラインナップ。
「うわ、ブロック案件」
ポソっと呟いた刹那、スタンプはピタリと止まった。
久登先輩に視線を戻すと、目を見開いて悲壮感を漂わせていた。
「久登先輩……?」
名前を呼んだら、すぐに何もなかったように、いつもみたく表情を崩した。
「えー! ちぃちゃんひどーい。俺、ブロックされたら泣いちゃうし、和久に言いつけちゃうからね?」
こういう時、親友っていうのは面倒だ。にいちゃんを盾に脅してくる。
「はい? それは卑怯ですよ!」
「卑怯じゃないしー。ちぃちゃんってさ、ほんと和久にだけ優しいよね。俺には塩対応なのに」
「そりゃ、にいちゃんは癒しなんで」
「えぇ? 俺は癒されないの? 差別だ差別」
癒されるどころか、疲れさせに来てるくせに。久登先輩はつまらなさそうに唇を尖らせた。ほんと、つくづく面倒な人だ。
この前からそうだけど、にいちゃんと比較する理由が本気で分からない。俺は後ろ頭をガシガシ掻きながら、はぁ、と嘆息した。
「にいちゃんはこんなウザ絡みしません」
「それはそうだ」
「分かってるじゃないですか」
「でもさー、もうちょーっと、優しくしてよ。ワクワクマンシールの交換だってしてくれないし。俺はこーんなにも……ちぃちゃんが…好きなのに……」
意味深な雰囲気を醸し出しながら、久登先輩は窓の外に視線を向ける。
やたらと顔がいいのも、罪だと思う。
ふーんって聞き流せばいいものを、憂いを帯びた表情がそうさせるのか。言い淀むような控えめな呟きを、簡単に耳で拾ってしまう。
久登先輩はにいちゃんが好き。
だから、その言葉は親友の弟に対するそれ。
そんなの、明確なのに。なんで、俺にそんなことを? って思ったら、少し遅れて心臓がドクンと変な風に跳ねてしまった。
いやいや、こんなの冗談じゃん。久登先輩は揶揄うのが好きなんだから。
落ち着かせるように、軽く胸を押さえて、深呼吸をする。
「優しく……は久登先輩のこれから次第ってところですけど」
「ですけど……?」
「ワクワクマンシールに関しては、久登先輩が自分の買い忘れただけですよね?」
肝心なことを指摘したら、久登先輩はほんの少し悔しそうに唇を噛んだ。
「そうだけどさぁ〰〰! そこは、先輩の顔を立てて返事したらいいの!」
「え?」
「シール交換しましょーって。はい、復唱!」
「やですよ!」
「えぇ? もう、困ったちゃんだなぁ」
久登先輩は自分に特大ブーメランをかましながら、ぶうぶう文句を垂れる。
大人びた見た目をしてるくせに、中身はほんと子どもだ。優等生に振る舞ったと思ったら、飄々としてみたり、駄々をこねたり。
「久登先輩って、ほんと忙しすぎ」
つい、くすくす笑ってしまった。
「そんなに、シール交換したいんですか?」
「そりゃもう、ねぇ。……ち、ちぃちゃんが触ったとか……ほら、お宝レベルだし……」
久登先輩が話している間、今は何のシール持ってたっけ? と考えていたので、その内容はまともに聞いていなかった。
仕方なく、ブレザーの胸ポケットから生徒手帳を取り出す。学校で引いたシールは一週間分はここにあって、今日のダイヤ型シールを出した。
ブラウニーっていう、ちょっと拗ねやすい家政妖精。
今、まさに久登先輩は「ちぃちゃんが話聞いてくれない」っていじけてるし、ちょうど良い気がした。
様子のおかしな久登先輩に話しかけるも、その間もブーブー、通知音がうるさい。先輩の指は今もひたすら連打。何をしたいのか、呆れてしまう。
「もう……なんなんですか」
息をひとつ落として、トーク画面を開いた。
そこには狐のイラストが使われた『つまんない』『さびしい』といった類の構ってちゃんラインナップ。
「うわ、ブロック案件」
ポソっと呟いた刹那、スタンプはピタリと止まった。
久登先輩に視線を戻すと、目を見開いて悲壮感を漂わせていた。
「久登先輩……?」
名前を呼んだら、すぐに何もなかったように、いつもみたく表情を崩した。
「えー! ちぃちゃんひどーい。俺、ブロックされたら泣いちゃうし、和久に言いつけちゃうからね?」
こういう時、親友っていうのは面倒だ。にいちゃんを盾に脅してくる。
「はい? それは卑怯ですよ!」
「卑怯じゃないしー。ちぃちゃんってさ、ほんと和久にだけ優しいよね。俺には塩対応なのに」
「そりゃ、にいちゃんは癒しなんで」
「えぇ? 俺は癒されないの? 差別だ差別」
癒されるどころか、疲れさせに来てるくせに。久登先輩はつまらなさそうに唇を尖らせた。ほんと、つくづく面倒な人だ。
この前からそうだけど、にいちゃんと比較する理由が本気で分からない。俺は後ろ頭をガシガシ掻きながら、はぁ、と嘆息した。
「にいちゃんはこんなウザ絡みしません」
「それはそうだ」
「分かってるじゃないですか」
「でもさー、もうちょーっと、優しくしてよ。ワクワクマンシールの交換だってしてくれないし。俺はこーんなにも……ちぃちゃんが…好きなのに……」
意味深な雰囲気を醸し出しながら、久登先輩は窓の外に視線を向ける。
やたらと顔がいいのも、罪だと思う。
ふーんって聞き流せばいいものを、憂いを帯びた表情がそうさせるのか。言い淀むような控えめな呟きを、簡単に耳で拾ってしまう。
久登先輩はにいちゃんが好き。
だから、その言葉は親友の弟に対するそれ。
そんなの、明確なのに。なんで、俺にそんなことを? って思ったら、少し遅れて心臓がドクンと変な風に跳ねてしまった。
いやいや、こんなの冗談じゃん。久登先輩は揶揄うのが好きなんだから。
落ち着かせるように、軽く胸を押さえて、深呼吸をする。
「優しく……は久登先輩のこれから次第ってところですけど」
「ですけど……?」
「ワクワクマンシールに関しては、久登先輩が自分の買い忘れただけですよね?」
肝心なことを指摘したら、久登先輩はほんの少し悔しそうに唇を噛んだ。
「そうだけどさぁ〰〰! そこは、先輩の顔を立てて返事したらいいの!」
「え?」
「シール交換しましょーって。はい、復唱!」
「やですよ!」
「えぇ? もう、困ったちゃんだなぁ」
久登先輩は自分に特大ブーメランをかましながら、ぶうぶう文句を垂れる。
大人びた見た目をしてるくせに、中身はほんと子どもだ。優等生に振る舞ったと思ったら、飄々としてみたり、駄々をこねたり。
「久登先輩って、ほんと忙しすぎ」
つい、くすくす笑ってしまった。
「そんなに、シール交換したいんですか?」
「そりゃもう、ねぇ。……ち、ちぃちゃんが触ったとか……ほら、お宝レベルだし……」
久登先輩が話している間、今は何のシール持ってたっけ? と考えていたので、その内容はまともに聞いていなかった。
仕方なく、ブレザーの胸ポケットから生徒手帳を取り出す。学校で引いたシールは一週間分はここにあって、今日のダイヤ型シールを出した。
ブラウニーっていう、ちょっと拗ねやすい家政妖精。
今、まさに久登先輩は「ちぃちゃんが話聞いてくれない」っていじけてるし、ちょうど良い気がした。

