翌週、月曜日。昼休みのチャイムが鳴ると共に、ブレザー姿のクラスメイトたちが、ダッシュで教室を飛び出していった。
廊下側の席に座る俺は、横目でその光景を見ながら、弁当の入ったランチトートに手を伸ばす。
「ちーがーやー、飯食おうぜっ」
机に袋を置いた矢先、クラスのムードメーカー相嶋が意気揚々と俺の元にやって来た。
「いや、待って。弁当は?」
「早弁した!」
相嶋はトレードマークの八重歯をニッと見せる。
「はぁ? どうすんだよ」
「え〜、それ聞く?」
相嶋がそう言った途端、クラス1イケメンの山本がぬっとその後ろに現れた。あっという間に、相嶋の頭を後ろから掴んで「お前な、人にたかろうとすんな」と言い放つ。
だけど、相嶋はすかさず、山本の手をバシッと叩いて振り払った。さすがは、幼なじみ。相変わらずスキンシップが荒い。
「うるせぇ、山本! ばらすな!」
「……って、俺の弁当狙ってたんかい」
「えへ? バレた? つーわけで、弁当わーけーてー」
相嶋は持ち前の愛嬌とやらを存分に発揮するかのごとく、俺に向けてウインクしてきた。
その瞬間、俺はぺいっと空中を払った。
「ぎゃあ! なんで叩き落とすんだよ! 渾身のぶりっ子ウインクを!」
「いや、からあげなら一個あげるし。それより、さっさと食べよ。腹減った」
「えっ……千茅。俺、お前に惚れそう」
「惚れんな惚れんな。千茅が可哀想だ」
二人はそう言いながら、近くの椅子を引いて、俺の机に寄ってくる。そのうちに、俺はランチトートから二段になった弁当箱を取り出した。
相嶋は前の席に座ると、弁当の包みを見るだけで、目を輝かせた。
「どんだけ腹減ってんの……」
俺は呆れながら、弁当の包みとゴムバンドを取った。机の上に一段、二段と弁当箱を広げる。内蓋を開けて、母さんの作った弁当とご対面──ってところで、俺も相嶋も、言葉を失った。
机にあるのは、どちらも白米に梅干しの弁当箱。まさしく日の丸ご飯。
今日は、俺が自分でにいちゃんの分まで、弁当の蓋をした。なのに、取り違えるとか、最悪すぎる。
一拍置いて、相嶋の「ぎゃははははは」という笑い声が教室中に響き渡った。山本も俺の弁当を覗くと、腹を抱えてげらげらと笑い始めた。
「ひー、やば。千茅の弁当、白米だけって」
「これぞ、相良家特製・精進料理ってやつ?」
「んなわけあるか! てか、俺がこれ蓋したんだけど!?」
「自爆じゃん」
「自爆乙〰〰〰〰」
「ちょ、笑わせんなって!」
がっつりツボにハマって、腹が痛くてたまらない。しばらく三人で、げらげら笑ってしまった。
ややあって、相嶋が目尻を擦りながら「千茅さ、兄ちゃんとこに届けに行くんだよなぁ?」と聞いてきた。
弁当届けるってことは、合法でにいちゃんに会いに行けるってことだ。午後からの癒しが欲しい俺からすれば、単なるご褒美みたいなもの。
「じゃあさ、俺が代わりに行ってこようかな〜」
「は? なんで?」
「だぁって、千茅のにいちゃんは、このむさ苦しい男子校の姫じゃん〜。拝みに行きたい〜」
「誰がお前に行かせるかよ! 行ってくる!」
相嶋がげらげら笑う中、俺は立ち上がった。
早く行かないと、にいちゃんも今頃すごく困っているはずだ。
どうやって持っていくか迷った末、白米に内蓋だけを被せて、教室を出た。
廊下側の席に座る俺は、横目でその光景を見ながら、弁当の入ったランチトートに手を伸ばす。
「ちーがーやー、飯食おうぜっ」
机に袋を置いた矢先、クラスのムードメーカー相嶋が意気揚々と俺の元にやって来た。
「いや、待って。弁当は?」
「早弁した!」
相嶋はトレードマークの八重歯をニッと見せる。
「はぁ? どうすんだよ」
「え〜、それ聞く?」
相嶋がそう言った途端、クラス1イケメンの山本がぬっとその後ろに現れた。あっという間に、相嶋の頭を後ろから掴んで「お前な、人にたかろうとすんな」と言い放つ。
だけど、相嶋はすかさず、山本の手をバシッと叩いて振り払った。さすがは、幼なじみ。相変わらずスキンシップが荒い。
「うるせぇ、山本! ばらすな!」
「……って、俺の弁当狙ってたんかい」
「えへ? バレた? つーわけで、弁当わーけーてー」
相嶋は持ち前の愛嬌とやらを存分に発揮するかのごとく、俺に向けてウインクしてきた。
その瞬間、俺はぺいっと空中を払った。
「ぎゃあ! なんで叩き落とすんだよ! 渾身のぶりっ子ウインクを!」
「いや、からあげなら一個あげるし。それより、さっさと食べよ。腹減った」
「えっ……千茅。俺、お前に惚れそう」
「惚れんな惚れんな。千茅が可哀想だ」
二人はそう言いながら、近くの椅子を引いて、俺の机に寄ってくる。そのうちに、俺はランチトートから二段になった弁当箱を取り出した。
相嶋は前の席に座ると、弁当の包みを見るだけで、目を輝かせた。
「どんだけ腹減ってんの……」
俺は呆れながら、弁当の包みとゴムバンドを取った。机の上に一段、二段と弁当箱を広げる。内蓋を開けて、母さんの作った弁当とご対面──ってところで、俺も相嶋も、言葉を失った。
机にあるのは、どちらも白米に梅干しの弁当箱。まさしく日の丸ご飯。
今日は、俺が自分でにいちゃんの分まで、弁当の蓋をした。なのに、取り違えるとか、最悪すぎる。
一拍置いて、相嶋の「ぎゃははははは」という笑い声が教室中に響き渡った。山本も俺の弁当を覗くと、腹を抱えてげらげらと笑い始めた。
「ひー、やば。千茅の弁当、白米だけって」
「これぞ、相良家特製・精進料理ってやつ?」
「んなわけあるか! てか、俺がこれ蓋したんだけど!?」
「自爆じゃん」
「自爆乙〰〰〰〰」
「ちょ、笑わせんなって!」
がっつりツボにハマって、腹が痛くてたまらない。しばらく三人で、げらげら笑ってしまった。
ややあって、相嶋が目尻を擦りながら「千茅さ、兄ちゃんとこに届けに行くんだよなぁ?」と聞いてきた。
弁当届けるってことは、合法でにいちゃんに会いに行けるってことだ。午後からの癒しが欲しい俺からすれば、単なるご褒美みたいなもの。
「じゃあさ、俺が代わりに行ってこようかな〜」
「は? なんで?」
「だぁって、千茅のにいちゃんは、このむさ苦しい男子校の姫じゃん〜。拝みに行きたい〜」
「誰がお前に行かせるかよ! 行ってくる!」
相嶋がげらげら笑う中、俺は立ち上がった。
早く行かないと、にいちゃんも今頃すごく困っているはずだ。
どうやって持っていくか迷った末、白米に内蓋だけを被せて、教室を出た。

