ためらいの温度 触れた者を死なせる当主が生ける、ただ一輪の花嫁

(私が、当主の定例集会に参加……?)

 ある日のこと。鷹臣様から一枚の紙を渡された私は、それに目を通して首を傾げた。そこに書かれてあるのは、翌週に開かれる集会の概要。季節に一度、華族の当主を集めて行われる集会だ。
 鷹臣様は、春を前にして開かれるその集会に私も参加しろと言う。

「元々この集会は奥方を伴って参加するもの。心配しなくても女性陣は集まって茶を飲むだけだ。年寄り達に口煩く何かを言われたりはしない」

 そういえば以前お父様が言っていた。鷹臣様がご老人達から結婚するように詰められていたと。

(まさか今度は、跡取りがどうのこうの言われたり、それで怒られたりするのかしら?)

 私のことはいい。喋れないのだから、余計な波風を立てないように振る舞っていればいいだけ。でも鷹臣様は違う。
 だから私は万年筆を取り出して、鷹臣様に伝えたい言葉を書く。

『文句を言われる時は私も一緒にいますから。頑張ってください』
「は? ……もしかして自分ではなく、俺の心配をしているのか?」

 勿論そうだ。だから食い気味に強く頷けば、鷹臣様は穏やかに目尻を下げた。

「心強いな。華が一緒なら百人力だ」