「は? この出来損ないに求婚の手紙が来た?」
正座して俯きがちに座る私。その前に座っている、不機嫌な様子を崩さないお父様。そして、そのお父様よりも更に不機嫌そうな声を出すのは、私の横に座っている玲だ。
しかしそんな玲の言葉は、まさに私の心の中の言葉をそのまま表したものだった。
「それって、私に清次様っていう婚約者がいるのを知らずに送ってきたのではないの? 病弱で一歩も部屋から出られないことになっている女に求婚なんて来る訳ないわ」
玲が「誰からの求婚?」と言いながら、お父様から手紙をひったくるようにして奪い取る。
しかしその瞬間、玲の不機嫌さが上限を突破した。
「鎮宮家!? どうして私の名前じゃないの! ねぇお父様!?」」
鎮宮家は皇族に次ぐ名門華族である。詠坂家と同様に異能を持った人間が生まれやすく、その能力の高さから、いつの時代も帝に重用されてきた一族だ。
そんな一族が私に宛てて求婚の手紙なんて送ってくるわけがない。
「安心なさい。差出人は鎮宮の御当主の鷹臣様。玲、お前への求婚なら即座に突っぱねる相手だ」
お父様に掴み掛かる勢いだった玲だが、その言葉を聞いた瞬間、表情を蔑みに変えた。
「はは! それって鎮宮では異端の当主様じゃない!」
それなら私も噂を聞いたことがある。触れた相手に「祝福」をもたらす鎮宮家では異端の「触れた相手を殺す」力を持った当主様。
その手で触れたものは何でも殺すことが出来る彼は、高位の異能使いとして宮仕えをしているが……その力の特性上、多くの人から敬遠され、遠巻きにされているらしい。
私のような無能からすれば羨ましいものだが、力が強すぎるというのも難儀なものだ。聞いた時にそう思ったから、よく覚えている。
「先日、当主たちを集めての会合があった。鷹臣様も、もう二十七歳。早く身を固めろと、年寄りたちに詰められていたから……きっと煩わしく思っておいでなのだろう」
「間違えて殺しても文句の出ない女が欲しかっただけよ。婚儀も直ちにと書いてあるし、所詮形だけの妻ね」
「まぁ、鷹臣様は人の命なんて何とも思っていない冷たいお方だ。一度妻を娶ってしまえば、あとは適当なところで殺して仕事に専念……と考えていてもおかしくはない」
玲が「あぁ面白い!」と腹を抱えて笑う。それにお父様も「病弱な女を欲しがる理由なんて、そのくらいだろう」なんて同調して、私の不安感を煽る。
(……つまり、私は殺されるために嫁ぐってこと?)
「うちとしてはお荷物女を処分できるし、良い話ね。お父様、その話お受けしましょうよ」
「病弱なことになっているのに、いつまでも生きていられては不都合。降って湧いた幸運だ。殺してもらうことにしよう」
……そんな流れで、当人である私の意志なんて少しも考慮されないままに話は決まった。
私は『鎮宮 鷹臣』という名前と彼の持つ異能以外、旦那様となる人のことをほとんど何も知らぬまま、嫁ぐことになった。
正座して俯きがちに座る私。その前に座っている、不機嫌な様子を崩さないお父様。そして、そのお父様よりも更に不機嫌そうな声を出すのは、私の横に座っている玲だ。
しかしそんな玲の言葉は、まさに私の心の中の言葉をそのまま表したものだった。
「それって、私に清次様っていう婚約者がいるのを知らずに送ってきたのではないの? 病弱で一歩も部屋から出られないことになっている女に求婚なんて来る訳ないわ」
玲が「誰からの求婚?」と言いながら、お父様から手紙をひったくるようにして奪い取る。
しかしその瞬間、玲の不機嫌さが上限を突破した。
「鎮宮家!? どうして私の名前じゃないの! ねぇお父様!?」」
鎮宮家は皇族に次ぐ名門華族である。詠坂家と同様に異能を持った人間が生まれやすく、その能力の高さから、いつの時代も帝に重用されてきた一族だ。
そんな一族が私に宛てて求婚の手紙なんて送ってくるわけがない。
「安心なさい。差出人は鎮宮の御当主の鷹臣様。玲、お前への求婚なら即座に突っぱねる相手だ」
お父様に掴み掛かる勢いだった玲だが、その言葉を聞いた瞬間、表情を蔑みに変えた。
「はは! それって鎮宮では異端の当主様じゃない!」
それなら私も噂を聞いたことがある。触れた相手に「祝福」をもたらす鎮宮家では異端の「触れた相手を殺す」力を持った当主様。
その手で触れたものは何でも殺すことが出来る彼は、高位の異能使いとして宮仕えをしているが……その力の特性上、多くの人から敬遠され、遠巻きにされているらしい。
私のような無能からすれば羨ましいものだが、力が強すぎるというのも難儀なものだ。聞いた時にそう思ったから、よく覚えている。
「先日、当主たちを集めての会合があった。鷹臣様も、もう二十七歳。早く身を固めろと、年寄りたちに詰められていたから……きっと煩わしく思っておいでなのだろう」
「間違えて殺しても文句の出ない女が欲しかっただけよ。婚儀も直ちにと書いてあるし、所詮形だけの妻ね」
「まぁ、鷹臣様は人の命なんて何とも思っていない冷たいお方だ。一度妻を娶ってしまえば、あとは適当なところで殺して仕事に専念……と考えていてもおかしくはない」
玲が「あぁ面白い!」と腹を抱えて笑う。それにお父様も「病弱な女を欲しがる理由なんて、そのくらいだろう」なんて同調して、私の不安感を煽る。
(……つまり、私は殺されるために嫁ぐってこと?)
「うちとしてはお荷物女を処分できるし、良い話ね。お父様、その話お受けしましょうよ」
「病弱なことになっているのに、いつまでも生きていられては不都合。降って湧いた幸運だ。殺してもらうことにしよう」
……そんな流れで、当人である私の意志なんて少しも考慮されないままに話は決まった。
私は『鎮宮 鷹臣』という名前と彼の持つ異能以外、旦那様となる人のことをほとんど何も知らぬまま、嫁ぐことになった。

