車は車庫へ

 その騒動は、ショーとして消費された
[映像:ニュース番組のVTR。
スタジオ照明が強く、影がほとんどない]

ナレーション(淡々と、感情を排した声):
「不審死事件が連続するなか、
ある小説家の名前が、静かに浮上する。」

[写真:88888。
サイン会で笑顔を向ける姿]

ナレーション:
「被害者の一人、仲真とは長年の盟友関係。
そして――」

[画面切り替え:
88888の小説の一節。
“事故”“偶然”“不可解な死”という単語だけが赤線で示される]

ナレーション:
「88888の作品には、
現実で起きた不審死を“予言したかのような描写”があった。」

[間]

[映像:過去のテレビインタビュー。
背景は書斎。
本棚の前で、88888が椅子に座っている]

88888(笑みを浮かべ、カメラ目線):
「完全犯罪?」

[軽く肩をすくめる]

88888:
「ああ、僕なら……もっとスマートにやりますよ。」

[スタッフの、わずかな笑い声]

88888:
「例えば……そうですね。」

[一拍、間。
目線が一瞬だけカメラから外れる]

88888:
「僕に完璧なアリバイがあるときに、
僕の書いた『不快な奴』が、
勝手に死んでくれる。」

[スタジオの空気が、わずかに凍る]

88888(微笑みを保ったまま):
「それこそが、
文学という名の奇跡だと思いませんか?」

[映像、ぴたりと静止]

[無音]

[ナレーション(低く)]
「この発言は、
放送当時“作家特有のブラックユーモア”として扱われた。」

[画面右下に小さなテロップ]
「※後日、SNS上で再拡散」

[映像:
同じ発言が、
ニュース、ワイドショー、ネット記事で
何度も再生されるモンタージュ]

ナレーション:
「だが事件が重なるにつれ、
この言葉は“冗談”では済まされなくなっていく。」

[最後にもう一度、静止画の88888]
微笑み。
その口元だけが、妙にくっきりと残る。

ナレーション:
「作家は、
現実と無関係でいられるのか。」