二里芽三(ふたさと・めいぞう)の死
[映像:夜の歩道橋]
街灯が一定の間隔で並ぶ。
オレンジ色の光が、アスファルトに長い影を落とす。
[カメラ:
歩道橋の上を、一人で歩く二里芽三の後ろ姿]
コートの裾が、風にわずかに揺れる。
足取りは速くも遅くもない。
[音:
遠くを走る車の音だけ。
足音はほとんど拾われない]
奥さま(顔は映らず、声のみ。少し間を置きながら):
「夜に……一人で出ることなんて、
ほんとうに、滅多になかったんです。」
[映像:
同じ歩道橋の昼間の写真。
安全柵は高く、老朽化も見られない]
ナレーション(淡々と):
「その夜、二里芽三は歩道橋から転落し、死亡した。」
[間]
ナレーション:
「死因は、転落による即死。」
[映像:
現場に置かれた花。
風で花弁が一枚、剥がれる]
ナレーション(少し低く):
「その状況は、
彼女自身の小説に描かれた“死”と、
驚くほど一致していた。」
[画面:
二里芽三の小説の一節。
〈夜/一人/橋/落ちる〉
という単語だけが、順に浮かび上がる]
ナレーション:
「だが、誰も説明できなかった。」
[取材映像:警察関係者(匿名・声のみ)]
暗い署内。
机の上にはファイル。
カメラは、わずかに手持ちで揺れている。
警察関係者:
「連続性は……あるようにも思えます。」
[一拍]
警察関係者:
「ただ、決定打がありません。
小説と一致している点も、
偶然の可能性は否定できない。」
[映像:
ファイルが閉じられる音。
バン、と乾いた音]
ナレーション:
「事件は、再び“偶然”として処理された。」
[間]
[映像:
夜の歩道橋を、下から見上げた固定ショット]
誰もいない。
街灯だけが、変わらず光っている。
ナレーション:
「だが、人々はもう気づき始めていた。」
[暗転]
ナレーション(ささやくように):
「次は、誰の物語なのかを。」
[映像:夜の歩道橋]
街灯が一定の間隔で並ぶ。
オレンジ色の光が、アスファルトに長い影を落とす。
[カメラ:
歩道橋の上を、一人で歩く二里芽三の後ろ姿]
コートの裾が、風にわずかに揺れる。
足取りは速くも遅くもない。
[音:
遠くを走る車の音だけ。
足音はほとんど拾われない]
奥さま(顔は映らず、声のみ。少し間を置きながら):
「夜に……一人で出ることなんて、
ほんとうに、滅多になかったんです。」
[映像:
同じ歩道橋の昼間の写真。
安全柵は高く、老朽化も見られない]
ナレーション(淡々と):
「その夜、二里芽三は歩道橋から転落し、死亡した。」
[間]
ナレーション:
「死因は、転落による即死。」
[映像:
現場に置かれた花。
風で花弁が一枚、剥がれる]
ナレーション(少し低く):
「その状況は、
彼女自身の小説に描かれた“死”と、
驚くほど一致していた。」
[画面:
二里芽三の小説の一節。
〈夜/一人/橋/落ちる〉
という単語だけが、順に浮かび上がる]
ナレーション:
「だが、誰も説明できなかった。」
[取材映像:警察関係者(匿名・声のみ)]
暗い署内。
机の上にはファイル。
カメラは、わずかに手持ちで揺れている。
警察関係者:
「連続性は……あるようにも思えます。」
[一拍]
警察関係者:
「ただ、決定打がありません。
小説と一致している点も、
偶然の可能性は否定できない。」
[映像:
ファイルが閉じられる音。
バン、と乾いた音]
ナレーション:
「事件は、再び“偶然”として処理された。」
[間]
[映像:
夜の歩道橋を、下から見上げた固定ショット]
誰もいない。
街灯だけが、変わらず光っている。
ナレーション:
「だが、人々はもう気づき始めていた。」
[暗転]
ナレーション(ささやくように):
「次は、誰の物語なのかを。」


