私の名前はアリス。
生まれた場所は、何の変哲もない田舎村。
大好きな父と母に囲まれ、慎ましくも幸せな生活を送っていた。
そんなある日、魔物が村を襲った。四季を彩ってくれた木々は破壊され、私たちの家は焼かれ、両親は八つ裂きにされた。
私は山草を取りに行っていたおかげで無事だったが、それが余計につらかったことを今でも覚えている。
それからの人生は酷いものだった。親戚と呼べる人はおらず、乞食のような生活をしながら日々の食事だけを考えた。
犯罪に手を染めようと思ったこともある。でも、生前の両親が、人に迷惑をかけてはいけないと言っていた。
それすらも破ってしまうと、私の存在理由がなくなってしまう。三日間絶食しながらも、私は耐え抜いた。
『飯と屋根、欲しいならくれてやるぞ』
そんなとき、私の前にロイクと名乗る人物が現れた。孤児院を設立したらしく、親のいない子供を匿っているという。
正直、怪しいとわかっていた。それでも、今の生活よりはマシだと思えた。
家は、元々貴族屋敷を買い取って名を付けただけだった。ボロボロで今にも潰れそうだったが、雨風をしのげるだけでも嬉しかった。
けれども、やっぱり予想通りというべきか、ロイクは、最低な男だった。
『飯だ? 昨日、食べただろうが』
私たちがいることで補助金をもらい、その金でギャンブル三昧だった。
食事は一日に一度、もちろん、ない日だってある。
直接手はあげてこないが、威嚇、威圧は当たり前だ。
院を出ようと思ったことは何度もある。でもそれは、私より小さな子供たちを見捨ているということ。
それは、できなかった。
私たちができること。それは、耐えることだ。
いずれ身体が大きくなり、できることが増えていく。そのため、今は時間を待つしかない。
そう――思っていた。
『ケーキだ。デカいケーキを食べるぞ』
突然、ロイクが変なことを言い始めた。
私たちが慎ましい誕生日会をしていたら、みんなでお祝いをしようと。
……一体、何を考えているのだろうか。
きっと私たちをぬか喜びさせ、その愉悦を酒の肴にするに違いない。
そう思っていた。でも、何も起こらず、私たちはただ、お腹いっぱい甘い物を食べただけだった。
院で一番力の強いケリーは、それでも怪しんでいた。どうせ、変なことを企んでいるんだろうと、だから期待するなと。
大人しいレリィは、何も考えたくない。期待したら、それが重圧になると。
私もまだ疑っている。でも、やっぱり違う気がする。
確かに変なところはあるし、私たちのことを心から心配しているとは思えない。
それでも、口だけでなく、行動で示しているところは現実だった。
壊れていたお風呂を、ロイクは自らの知恵を使って湯を沸かしてくれた。
その日はとても寒い日だったので、私を含め、子供たちはとても喜んだ。
なぜ、どうして、ここまでしてくれるのか。
ロイクは、みんなが寝静まったあと、一人で入っていた。
きっと、綺麗とはいいがたい湯だ。でもそんな文句は一切言わず、幸せそうに鼻歌を歌っていた。
翌朝、魔法書を引っ張り出し、熱の魔法陣を書き直していた。
……いったい、何があったのだろうか。
それからみんなで大掃除をした。綺麗になっていく孤児院を見ていると、心が晴れやかな気分になった。
子供たちもみんな楽し気で、田舎にいたときのお祭りを思い出した。
そして初めて食べたカレーは、人生でで一番おいしくて、幸せな時間だった。
あの疑り深いケリーも、気弱なレリィでさえも、無我夢中で頬張っていた。
ロイクは、ロイクさんは、まるで人が変わったみたいだ。
でも、まだわからない。
ただ、もう少し、もう少しだけ。
この幸せな時間が、続いてほしい。
生まれた場所は、何の変哲もない田舎村。
大好きな父と母に囲まれ、慎ましくも幸せな生活を送っていた。
そんなある日、魔物が村を襲った。四季を彩ってくれた木々は破壊され、私たちの家は焼かれ、両親は八つ裂きにされた。
私は山草を取りに行っていたおかげで無事だったが、それが余計につらかったことを今でも覚えている。
それからの人生は酷いものだった。親戚と呼べる人はおらず、乞食のような生活をしながら日々の食事だけを考えた。
犯罪に手を染めようと思ったこともある。でも、生前の両親が、人に迷惑をかけてはいけないと言っていた。
それすらも破ってしまうと、私の存在理由がなくなってしまう。三日間絶食しながらも、私は耐え抜いた。
『飯と屋根、欲しいならくれてやるぞ』
そんなとき、私の前にロイクと名乗る人物が現れた。孤児院を設立したらしく、親のいない子供を匿っているという。
正直、怪しいとわかっていた。それでも、今の生活よりはマシだと思えた。
家は、元々貴族屋敷を買い取って名を付けただけだった。ボロボロで今にも潰れそうだったが、雨風をしのげるだけでも嬉しかった。
けれども、やっぱり予想通りというべきか、ロイクは、最低な男だった。
『飯だ? 昨日、食べただろうが』
私たちがいることで補助金をもらい、その金でギャンブル三昧だった。
食事は一日に一度、もちろん、ない日だってある。
直接手はあげてこないが、威嚇、威圧は当たり前だ。
院を出ようと思ったことは何度もある。でもそれは、私より小さな子供たちを見捨ているということ。
それは、できなかった。
私たちができること。それは、耐えることだ。
いずれ身体が大きくなり、できることが増えていく。そのため、今は時間を待つしかない。
そう――思っていた。
『ケーキだ。デカいケーキを食べるぞ』
突然、ロイクが変なことを言い始めた。
私たちが慎ましい誕生日会をしていたら、みんなでお祝いをしようと。
……一体、何を考えているのだろうか。
きっと私たちをぬか喜びさせ、その愉悦を酒の肴にするに違いない。
そう思っていた。でも、何も起こらず、私たちはただ、お腹いっぱい甘い物を食べただけだった。
院で一番力の強いケリーは、それでも怪しんでいた。どうせ、変なことを企んでいるんだろうと、だから期待するなと。
大人しいレリィは、何も考えたくない。期待したら、それが重圧になると。
私もまだ疑っている。でも、やっぱり違う気がする。
確かに変なところはあるし、私たちのことを心から心配しているとは思えない。
それでも、口だけでなく、行動で示しているところは現実だった。
壊れていたお風呂を、ロイクは自らの知恵を使って湯を沸かしてくれた。
その日はとても寒い日だったので、私を含め、子供たちはとても喜んだ。
なぜ、どうして、ここまでしてくれるのか。
ロイクは、みんなが寝静まったあと、一人で入っていた。
きっと、綺麗とはいいがたい湯だ。でもそんな文句は一切言わず、幸せそうに鼻歌を歌っていた。
翌朝、魔法書を引っ張り出し、熱の魔法陣を書き直していた。
……いったい、何があったのだろうか。
それからみんなで大掃除をした。綺麗になっていく孤児院を見ていると、心が晴れやかな気分になった。
子供たちもみんな楽し気で、田舎にいたときのお祭りを思い出した。
そして初めて食べたカレーは、人生でで一番おいしくて、幸せな時間だった。
あの疑り深いケリーも、気弱なレリィでさえも、無我夢中で頬張っていた。
ロイクは、ロイクさんは、まるで人が変わったみたいだ。
でも、まだわからない。
ただ、もう少し、もう少しだけ。
この幸せな時間が、続いてほしい。


