オレと荻野くんは幼なじみ再構築中。

 教室の扉が、ガチャッ――とやけに大げさな音を立てて開いた。
その瞬間、俺――米田忠太(よねだただひろ)、通称ちゅうた――の心臓も、同じ音を立てた気がした。

「……ちゅうた?」

 その声を聞いた瞬間、心臓がさらに一段うるさくなる。

 荻野栄介(おぎのえいすけ)
昔、いつも一緒にドジをやらかして笑っていた――はずの幼なじみ。

 ……なのに今は。

 年下のくせに妙に落ち着いた顔で、まっすぐこっちを見ている。
その視線だけで、なぜか俺のHPがゴリゴリ削られていくんだが?

「うわっ、誰……って、栄介!?」

 慌てて立ち上がろうとして、椅子に膝をぶつけた。

「痛っ……!」

 再会一発目からこの有様。
我ながら安定のドジっぷりである。

 栄介は小さく笑っただけで、机に軽く手を置き、首を少しかしげた。
たったそれだけの仕草なのに、なぜか心臓がドクンと跳ねた。

 ……いや待て。

昔は一緒に転んで、一緒に笑ってた相手だぞ?
なんで今さら、こんな無駄にドキドキしてるんだ俺。

「変わってないね、ちゅうた」

 短い一言。
それだけなのに、胸の奥が妙にくすぐったくなる。

(ちょ、なんでそんな余裕なんだよ……!)

 思わず心の中でツッコみながら一歩下がると、今度は足元のカバンに引っかかった。

「うわっ」

 またバランスを崩しかけたところで、栄介の手がすっと伸びる。
触れたわけでもないのに、距離が近づいただけで心臓が一気に騒ぎ出した。

 ……ああ、これ、たぶん。

昔みたいに「ただの幼なじみ」でいられなくなるやつだ。

「な、なんだよ……俺のドジっぷり、観察しに来たのか?」

 少し裏返った声で言うと、栄介は一瞬だけ視線を逸らし、
それからまた、まっすぐこちらを見た。

「違うよ」

 静かな声。

「ちゅうたに、ちゃんと会いに来た」

 ――その一言で。

 放課後の教室の空気が、ほんの少しだけ、前とは違うものに変わった気がした。

 たぶんここから、何かが始まる。
俺と栄介の、昔とはちょっと違う――ややこしくて、たぶん笑えて、でもきっと心臓に悪い物語が。