覇王令嬢の野望


 ミーネと話していると、朝の2人がやってきて、昼食の用意をする。
 メニューは朝と変わらない……

『毎日、これか?』

 まあ、美味いが……

「うん。教会も大変だからね。わがままを言ったらダメだよ」

 ふーん……ケーキ食べたいなー……

 昼食を食べ終えると、2人が片付けをし、出ていった。

「さて、お祈りか。ミーネ、案内せよ」
「案内はするけど、ウィンプルを被ってよー」

 ああ、忘れておったな。

「邪魔でしかないと思うがのう」

 そう言いつつ、ベッドに投げてあったウィンプルを被る。

「ノーレって信徒じゃないの?」
「いーや、私ほど敬虔な信徒はおらんぞ。戦場では毎日、祈ったし、主のために統一してやった」
「すんごい上から目線……絶対に信徒じゃないでしょ。利用しただけって感じがすごくする」

 何を言うか。

「ははは」
「ひどーい」

 私達は部屋を出ると、廊下を歩き、階段を下りる。
 そして、渡り廊下を進み、教会の本堂にやってきた。

「ようこそ、ヘルミーネ様。今日もお祈りですね」

 中に入ると、おばちゃんシスターが笑顔でこちらにやってくる。
 様付けなところを見るにやはりお客さんなんだな。

「早速、お祈りを」
「ええ。こちらに」
「ああ」

 おばちゃんシスターに連れられて、奥の女神像の前にやってくる。

「さて、ヘルミーネ様、今日は何を祈られますか?」
「平和を」
「素晴らしいことです」

 おばちゃんシスターが笑顔で頷いたので女神像の前に跪く。
 すると、ミーネも同じように隣で跪いた。

「主よ、皆が笑い、安らかに眠れるようにどうか平和をお作りください」
「主よ、皆が笑い、安らかに眠れるようにどうか平和をお作りください」

 私達は目を閉じて、祈り続ける。
 争いのない平和な世界が来ることをただただ祈り続けた。
 そして、5分以上も祈り続けると、立ち上がる。

「ヘルミーネ様、今日は随分と熱心に祈られましたね?」
「主の声が聞こえるかと思ったのだ」
「ほう? どうでした?」

 そう聞かれたので首を横に振る。

「未熟なんだろうな」

 だからこそ、私の祈りは届かないのだ。
 これまでも……これからも……

「私も長年祈っていますが、いまだに聞こえません。ですが、我らの祈りは必ずや主に届いていることでしょう」
「シスターは何を祈ったのだ?」
「同じく平和です」

 そうか。
 確かに主は我らの願いを聞いているな。
 ここにそれを可能にするエレオノーレ・クローネンシュタールがいる。

「明日も祈ろう」
「はい。時にヘルミーネ様、どうされました? 別人のようですが……」

 別人だな。

「成長期なんだ」
「ハァ?」
「また明日、来る」

 そう言って、女神像とシスターに背を向けて歩いていき、本堂を出る。
 すると、執事のユルゲンが立っていた。

「いたのか」
「護衛ですので」

 ふーん……

「お前は主に祈らんのか?」
「祈ったところで……いえ、申し訳ございません」

 ほう?

「言うてみい」
「いえ……」
「私は言えと言ったのだ。聞こえなかったか?」

 その耳がいらないと見えるな……あ、剣がなかった。

「……祈ったところで何も変わりません」
「もう一言あるだろ。言うてみんか」

 そこまで言ったら最後まで言え。

「祈っても何も起きません。動いてこそ、何かが動きます」

 はっはっは。

「お前、何歳だ?」
「は?」
「ノーレちゃーん、ユルゲンさんは18歳だよー。この前、誕生日を祝ったばっかりなのー」

 あ、そうなのか。

「私は18歳になりましたが?」

 ユルゲンがちょっと怪訝な顔をした。

「18歳ならばそう思って良い。でもな、覚えておくがいい。皆が皆、お前のように強いわけではないし、動ける人間ではないのだ。そして、偉そうに弱者を見下すならその力で主の代わりに助けてやらんか。動かなければ何も起きぬぞ?」

 それだけ言って、この場を去り、部屋に戻った。

「ふう……」

 鬱陶しいウィンプルを取ると、ベッドに放り投げる。

「ノーレ、ユルゲンさんが嫌いなの?」

 テーブルにつくと、ミーネが気まずそうな顔で聞いてくる。

「私は人を嫌うことなんかない。言いたそうな顔をしていたからしゃべらせただけだ。ストレス発散になっただろう」
「逆に溜まってない? 結構な嫌味を言ってたけど」

 はっはっは。

「戯れだ。それよりも今日の仕事はこれで終わりか?」
「うん。毎日、こんな感じ」

 暇だ。
 ユルゲンもディアナも暇でストレスが溜まっているのかもしれんな。

「寄付金と実家の金で怠惰に生きるか。確かに見下されるわけだのう……」
「え? 私?」
「他におらん。まあ、それも今日までだ。そういうわけで私は寝るからな。夕食の時間になったら起こせ」

 そう言って、ベッドの方に向かう。

「えー……寝ちゃうのー? 勉強は?」
「また今度だ。おやすみ」

 ミーネの言葉を無視し、目を閉じた。
 別に疲れているというわけではないが、すぐに眠気が襲ってきたので睡魔に抗わずに寝た。

 目を覚ますと、すでに夕方になっており、ベッドから下りて、テーブルにつく。
 すると、すぐにディアナとユルゲンがやってきて、夕食の準備を始めた。
 しかし、どこかぎこちない。

「気まずいよー……空気が凍ってる気が……」
『放っておけ』

 夕食の用意ができたので食べだす。
 メニューはやはり朝と昼と同じものであり、美味いのだが、ちょっと寂しい。
 正直、このままでは2、3日で飽きると思う。

「ディアナ」
「はい。何でしょう?」
「お前、ケーキは焼けないか? クッキーでもよい」
「えーっと、焼けますけど」

 ふむ。
 こやつ、使えるな。

「明日、焼け。砂糖は多めが良いぞ」
「か、かしこまりました」

 ふむふむ。
 明日の楽しみができたな。

 大満足で夕食を食べ終えると、ユルゲンが片付けをし、ディアナが私を連れて、風呂場に行く。
 服を脱ぐのまで手伝ってもらうと、風呂に入った。

「ふう……せっまい風呂だのう……」
「そう? 広くない? 2人で入ってもまだ余裕があるじゃん」

 よくわからないが、ミーネも服を脱ぎ、風呂に入っている。

「私の風呂はあの本堂より広かったぞ」

 祈ったところね。

「逆に広すぎて落ち着かなくないの?」
「慣れだな」
「じゃあ、ここも慣れれば良いんじゃないかな?」

 …………生意気な小娘だ。
 私が寛大でなかったら首を刎ねているところだぞ。