覇王令嬢の野望


「さて、ミーネ。お前に言われた通り、あの2人は生かした。これでよいな?」
「うん。よかったー」

 そうか、そうか。

「ミーネ、今日は勉強をしよう。私が死んでからこの300年の帝国の動きを大まかでいいから説明してくれ」
「うん。初代皇帝がエレオノーレ。そこから皇帝は14代まで続いている。現皇帝が第14代なんだよ」

 ふーん……まあ、そんなものか。

「内乱であったり、外国との戦争なんかがあったと聞いたが?」
「内乱は主に貴族の反乱、政争だね。一番大きかったと言われるのが現皇帝の時。先代皇帝は15人ものお子さんがいたんだけど、そのうち13人が女子だった。残り2人の男子は待望の男子だったらしいよ」

 偏ってるな……

「それで?」
「先代皇帝は男子に帝位を継がせたかったから【女子は帝位継承権を持てない】という法を作ったんだ」

 は?

「私への侮辱以外の何物でもないぞ」

 このアイゼンライヒ帝国を誰が作ったと思っている?
 女帝エレオノーレ・クローネンシュタールぞ?

「そう思った人が多く、13人の女子達もそう主張したから荒れに荒れちゃった。王太子派閥と女子13人派閥の争いが起き、それぞれを支持する勢力が戦争を始めたりもした」

 完全に内乱だ。
 先代はバカだな。
 男子を太子にしたいのは別によい。
 だが、方法を考えろ。

「現皇帝は男だ。勝ったのは王太子派閥か?」
「うん。その13人の女子達も揉めちゃったんだ」

 多いしな……
 王太子を倒した後のことを考えてしまったんだ。

「わかった。確かにそれは荒れるな。現皇帝が太子を立てないのもその辺が影響してそうだ」
「うん。現皇帝の最初の仕事は【女子は帝位継承権を持てない】という法を消したこと」

 まあ、ヘルミーネに帝位継承権があるということはそういうことだろう。

「そうだろうな。しかし、これで晩餐会の意味がわかったぞ。名君か暗愚のどちらかかと思っていたが、現皇帝は間違いなく、暗愚だ。これならいける」

 名君なら晩餐会は危険になる。
 間違いなく、皇帝の子以外は殺されるからだ。
 でも、暗愚なら問題ない。

「そうなの?」
「そうなんだよ。ミーネ、それよりも外国との戦争は?」
「それは100年くらい前かな。皇帝の親族が外国と手を組んで反乱を起こしたんだよ。そこからその国を巻き込んだ戦争が起きたの。3年で終わったらしいけど。あ、もちろん、アイゼンライヒ帝国が勝った」

 やはり皇帝関係……

「ミーネ、私は独裁者だった。基本的には私が決め、私が政治を動かし、私が戦争をしかけた」

 もちろん、皆の助けがあったが、基本的には私が決めた。

「そんな気はする。唯我独尊って感じだもん」

 その通り。

「この国は皇帝の権力が強すぎるのだ」

 私がそういう国を作ってしまった。
 皆が私の真似をしたのだ。

「そうかも……」
「だから内乱が起こるし、後継者争いが起きるんだ。この辺も考えないといけぬな」

 同じやり方ではまた同じ歴史を歩む。

「どうするの?」
「それを考えるのがお前の役目だ。私のやり方では私の死後に内乱が起きる。そう言ったのはお前だ。ならば、そうじゃない道を示せ。この身体はお前のものだし、この身体は聖女ヘルミーネ・クローネンシュタールだ」

 私は覇王エレオノーレ・クローネンシュタールなのだ。
 そして、実は覇王が誉め言葉ではなく、悪口なのも知っている。
 これは野蛮な王という意味なのだ。

「聖女はやめよーよ」
「そういう方向性になったのだ。せいぜい考えよ。答えを出さぬなら勝手に血塗られた覇道に進むからな」
「わ、わかった」

 その後も勉強をしていくと、午後になり、ディアナとユルゲンが戻ってきて昼食を準備してくれたので食べる。

「ユルゲン、父は何と?」
「そうか、とだけ……」

 もはや興味もないか。

「よろしい。それとシスターに体調が悪いからお祈りを夜にしたいと伝えよ」
「夜ですか? 明日にと言われると思うのですが……」
「多分、シスターはそう言うな。そこは無理にでも頼みこめ。大事なことなのだ」
「かしこまりました」

 ユルゲンは頭を下げると、部屋から出ていく。

「さて、美味い昼食だった」

 今日はなんとパスタだった。
 実に美味しい。

「ありがとうございます。お嬢様、いつでも発てるように準備をしました。ただ、もし、出る際は携帯食になるかと……」

 仕方がないだろうな。
 大量に生鮮食品を持っていっても腐るだけだ。

「そこは問題ない。それよりも剣を装備したいから紐でも買ってきてくれ」

 修道服はローブだから剣を背負わないといけない。

「それに関しては買ってきました。御立ち頂けますか?」

 ディアナがそう言うので立ち上がる。
 すると、ディアナが膝をつき、私の腰にベルトのようなものを取り付けた。

「ふむ……」

 ショートソードを取り、ベルトにある穴に通すと、ぴったり収まった。

「お嬢様、どんな時でも修道服のままでいてください。どんな社交の場でも、戦場でもです」

 常に聖女でいろってことか。

「わかった。お前がそう言うならそうしよう。それと回復魔法を教えてくれ」
「かしこまりました」

 さて、私が使えるようになるか……
 生前はまったく使えなかったし、多くの教師が私に教えたが、ダメだった。
 はたして、ヘルミーネは……