一乗家のかわいい花嫁

 昼間に交わす口づけなど、児戯だったと思えるほどの濃厚さに、顔だけでなく下腹部までもが熱くなってくる。さらに、彼の手は先程から千代の胸の膨らみを、寝間着の着物の上からやわやわと揉むだけで、ちっとも中心に触れてくれない。
 足りない刺激を補うように、千代の足は無意識に内ももを擦り合わせ、腰が揺れていた。
 気付いた雪人が、フッと小さく笑う。
 そして、彼は吸い上げるようにして千代の舌を絡め、わざと大きめの水音を立てて、長い長い口づけを終わらせた。
「千代、触ってほしい?」
 はぁはぁとまだ息の整わない千代は、「何を?」と、雪人の言葉の意味すら上手く理解できないでいた。
 それすらも愛らしいとばかりに、雪人は千代の顎にわざと音を立てて口づけをし、首筋を滑り、着物をはだけさせながら肩口に甘噛みをした。
「んっ」と微かな痛みに、千代の口から鼻に掛かった甘い声が漏れる。
 気分を良くしたのか、雪人は着物をはだけさせさらに肩の様々なところに歯を立てていく。ピリピリとした小さな刺激が、千代の身体にもっと強い刺激を欲しがらせていた。
 その間も、彼の手は胸の膨らみを揉むばかりで、正直もどかしい。
「千代、どこを触ってほしいか言ってごらん」
「ぃや……っです……」
 やっと意図を理解した千代は、恥ずかしさにいやいやと首を横に振った。
 触れてほしい――なんて思うこと自体、たった一度しか経験していない千代にとっては羞恥の極みであり、自分はなんてはしたない女なのだと目に涙がこみ上げてくる。
「千代は、俺がどれだけ我慢しているか知らないだろ」
 雪人は、千代の目に浮かんだ涙を拭いとった指を自らの口元に運び、舌先で舐めとった。
「ぅん……っ!」
 雪人のその姿があまりにも官能的で、自分が舐められたわけでもないのに、千代の身体はビクッと反応してしまう。もはや自分の身体ではないようだ。心臓はうるさいし、ずっと熱をもったまま冷めないし、どこもかしこも敏感で、身体の内側では快楽未満の疼きが滞留している。
「ゆ、雪人さん……」
 壊れてしまった自分の身体に、千代は助けを請うように溶けた声で雪人を呼ぶ。
 千代の上に跨がっていた雪人は、恍惚とした表情で疼きに耐える千代を見下ろしていた。
「俺がどれだけ、毎晩千代の寝顔を見るだけで、抱き潰したいほどの衝動に駆られているか、想像もできないんだろうな」
 雪人の手が、千代の帯を握りユルユルと解いていく。
「あっ……」
「俺が、脳内で何度も千代を手ひどく抱いているなんて、少しも思わないんだろうな」
 帯を失った着物は、雪人が胸元に指先を引っ掛けただけで、簡単にずり落ちてしまう。先程まで雪人が揉んでいた柔らかな双丘が露わになり、その頂を雪人に軽く吸われる。
「んっ」と鼻に掛かったような声が漏れる。
「千代にも、俺がどれほど毎日我慢してるか、少しは味わってもらわないとな」
「え……」
 そこからが千代の地獄のはじまりだった。


「も……やぁ……っ」
 脚の間に顔を埋めた雪人は、千代の秘所に舌を這わせていた。
 最初は嫌がって抵抗していた千代だったが、舌先と指で中と外とを刺激し続ければ、ふやけた声しか出さなくなっていた。
(やばい……止まらないな)
 何度も腰を跳ねさせ、足のつま先まで震わせていたから、既に片手では足りないくらい果てているはずだ。それでも雪人は、千代の足のつま先から頭のてっぺんまで口づけを落とし、熱と羞恥で赤くなった肌を吸い上げ、指で彼女が鳴くところを執拗に可愛がるのをやめなかった。
 少しの刺激で甘い蜜をとろりと垂らす秘所は、いつまででも舐めていたくなる。自分の仕草で彼女が反応を示すのが愉しくて、双丘の向こうに見える熱に浮かされた彼女の顔を眺めながら、一際強くそこを吸い上げた。
「やぁんッ……!」
 全身を震わせ、また彼女はくたりと果ててしまう。
(声あまっ……)
 彼女の嬌声に、自分の下腹部もズクリと熱に浮かされる。
「ゆ、と、さん……もっ……おかしく、な……ぁんっ」
『是非ともそのまま自分に狂いよがってくれ』と思いつつも、そのようなことを言えば彼女は怖がるだろうから、「どんな千代でも可愛いよ」と柔らかな言葉に置き換える。
 まだもうしばらく、彼女が全身を震わせる姿を堪能したかったが、こちらがそうも入っていられない。
 秘所から抜いた指を、彼女に見せつけるようにして舐める。熱に浮かされて呆としていた顔が、瞬時に赤に染まる。肘まで伝っていた蜜を舌先で丁寧に拭えば、彼女は声も上げられないようで、熱で潤んだ目を瞠目させていた。
(あー……可愛い)
 自分の一挙一動に翻弄される彼女が可愛くて、嗜虐心が疼いた。
 女性にこのような感情を沸き立てられたのは、生まれて初めてだ。
 このまま彼女に挿れるのも良いが、今回は彼女への仕置きの意味も含まれている。
 純粋無垢なのは喜ばしことだし、その擦れてなさに愛おしさを覚えるのだが、もう少し男心をわかってくれとも思う。
 自分のほうが年上だし余裕のある態度を、確かに今まではとってきた。彼女にとっては、それが一乗雪人という人間であり、当たり前の姿だと思っているはずだ。
 だが、好きな女を前にして、年上の余裕など風の前の塵に同じだ。むしろ、今までよく耐えたと思う。
「千代、おいで」
「えっ」
 手を引き、胡坐をかいた自分の上に、向かい合わせで彼女を座らせた。
 汗で頬に貼り付いた髪を、ゆっくりと肌を滑らすように手で撫でて剥がす。その、普段であれば大したことない刺激にすら、彼女は頬を赤らめ俯いた。そして、気付いたようだ。
 眼下には、これから彼女の中に挿るものが、既に準備万端で用意されていることに。
「~~っぁ~~ッ!?」
 声にもならないといった様子だ。
 そういえば、初夜の時は、彼女は何が何かもわからなまま終わったような感じだったし、改めてはっきりと認識したのは今回がはじめてだろう。
(堪んないな)