「推し」の待ち受け画面をご本人に見られました

「ついにきた、地獄の昼休み…」

「なるくん、健闘を祈る…」

「ありがとう、今までありがとう、神原…」



俺は鷲宮先輩のスマホを持って屋上に向かった。






屋上には俺より先に鷲宮先輩がいた。

推し活人生終了といえど、やっぱり推しは推し、風に吹かれて遠くを見ている鷲宮先輩はこの世のものとは思えないほどにかっこよかった。



「1年。」 

「あ、はい。」



絶世の美少年に見惚れていたところ、呼ばれて我に返った。



「これ、俺?」



鷲宮先輩は、昨日俺と取り違えた俺のスマホを掲げて言った。画面には神原の撮ったベストショットなる鷲宮先輩が写っている。



「はい……」

「俺の事好きなの?」

「は、はい……?」

「だから、俺のことが好きなのかって聞いてる」

「あ、はい、そりゃもちろん大好きですよ。最推しですから。」

「最…推し?」

「はい、こんなことをご本人に言うのはほんとは良くないと思うんですけど、中2の時から神原って、さっきいた友達なんですけど、と一緒に推してるんです。先輩のこと。バスケ見た時にほんとにかっこいいなって思って…あっ、それで、あの…待ち受けに…ごめんなさい…!!!」



推しへの愛を聞かれた気分になりついつい熱くなってしまった。今度こそ本当に引かれる…。



「ふーーん…『推し』か…」



鷲宮先輩は整った顔で俺のスマホの待ち受け画面をまじまじと見ていた。

消せって言われたら、素直に消そう。勝手に待ち受けにされて嬉しいわけがない。そう思って口を開きかけたとき、



「推し活、させてやるよ」



一瞬、何を言われたのか本当に理解できなかった。推し活?つまり、推しを推す活動。



「はあ……」

「俺を押すなら、もっと近くで楽しめば?」

「あ、う、え、はい。」



状況に混乱しすぎて曖昧な返事をしてしまった。



「名前」

「はい?」

「名前、教えろよ。ずっと1年って呼ぶの、なんか変だろ。」

「あ、えっと、成瀬遥斗です。1年A組です。」

「遥斗か。はると…」



鷲宮先輩は俺の名前を繰り返した。

怒ってない…?

最推しに名前を呼ばれているという意識がぶっ飛びそうな状況に加え、推し本人に推し活を提案されるという異常事態。もう脳みそが爆発寸前……。



「じゃあ、そうゆうことだから。ほいっ」

「あっ、」



鷲宮先輩は俺のスマホを俺にポイッと投げて、俺から自分のスマホを抜き取って屋上から去っていった。



「鷲宮先輩と、推し活…?!」



改めて認識した言葉にわくわくが隠せない。



成瀬遥斗、推しの待ち受け画面をご本人に見られました。

推しとの推し活、始めます。