「推し」の待ち受け画面をご本人に見られました

「おはよ…って、なるくん、死んでるねえ…どした」

「絶対嫌われた…もう無理だ…」

「ん?何?聞こえない」



同じオタク仲間として言わない選択肢はない。慰めてもらおう。







「え?!屋上で鷲宮先輩に会えた?!
それで焦って鷲宮先輩のスマホを持って帰ってきちゃった?!つまり、なるくんのスマホは鷲宮先輩が持ってるってこと?!ちょっとっまって、情報量が多すぎてパンクしそう!」

左様(さよう)でございます…もう、泣きたい…」

「なるくんの待ち受け、わたしがあげた鷲宮先輩のベストショットだよね?」

「…うん。」



改めて言われると昨日の焦りがぶり返して大波になって押し寄せてくる。



「まずいんじゃない、こんなこと言いたくないけどさ、ちょっと引かれちゃうかも…」

「…だよな」



昨日の夜まったく同じことを考えていたのに言葉にされるとグサッとくる。



「俺の推し活人生、終了のお知らせです…」



断末魔としてそれだけ言って、俺は机に突っ伏した。



「神原あ…俺もうどうしよう、生きていけない…」



突っ伏したままモゴモゴという俺に、神原は何も言い返してこない。



「神原…?」



顔を上げると、神原は酸欠の金魚みたいに口をぱくぱくさせて固まっていた。



「おい、神原、おーーい」



神原の目の前でてを振っても、俺の後ろに視線が固定されている。幽霊でも見えてる?

不思議に思って振り返ったら、俺も神原と同じ酸欠の金魚になった。



「鷲宮…先輩…」

「昨日ぶりだな。1年。」

「っ、はい。」

「昼、屋上に来い。あと、俺のスマホ持って来い。お前のも返してやる。」

「…はい。」



終わった…



昨日の夜を含めてすでに3回以上思っていることを再び心で叫んだ。



「やばい…超かっこい…」



この世の終わりを感じている俺に対して、神原は最推しを拝めた(よろこ)びに浸っている。



 あんなことがなければ、きっと俺も素直に喜べてたんだろうな…



この日は、昼休みが来るのを16年間で1番怯えながら午前の授業をやり過ごした。



 もう鷲宮先輩推しとか言っている場合じゃないかもしれない…



推し活人生の終わりへと進む道をゆっくり進んでいるように感じた。