文化祭2日目。今日のメインは体育祭。
昨日の雰囲気とはガラリと変わって校庭は白い体育着で埋め尽くされている。
学年別席だから、鷲宮先輩会えないか…
そう、聞いてみようと思って寝たものの、体育祭は観戦席が学年別。
つまり、昨日みたいにずっと一緒に行動することはできないとういうこと。
今日は別行動か……
鷲宮先輩に会えない寂しさを胸に、体育祭が幕を開けた。
「プログラム3番、高校2年生のクラス対抗リレーです!高校2年生の皆さんはグラウンドに降りてきてください」
司会の生徒が言った。
俺の学校は学年ごとのクラス対抗リレーがある。
鷲宮先輩、絶対足速い。
「なるくん、これはベストショットの狙い時だよ!!待ち受け変えな!」
もちろん。
待ち受け画面は今でも鷲宮先輩。
でも、4月の頃とは違い、もう盗撮の画像じゃなくて一緒に行った水族館で撮った写真だ。
しかも、ハイテンションスタッフさんの流れで撮ってしまった謎カップル風ショット。
これ、バレたら引かれそうだな…
スマホを開く度に思っているが、しばらくは変えたくないという気持ちが勝ってしまう。
推しとのツーショットなら絶対変えたくないよね?
オタクとしての意見を正当化しつつ、自分の中で芽生えそうになる罪悪感に蓋をする。
「あ!次の次、鷲宮先輩じゃない?!」
走るのを待機している鷲宮先輩が見えた。
鷲宮先輩は体育着もかっこいい…
「律ー!がんばれー!」
鷲宮先輩に見惚れていると、応援の声が響いた。一瞬、神原が突然呼び捨てをしたのかと思った。
でも、歓声がしたのは隣ではなく、来客用の応援席だった。
柊さん…?
今年から文化祭合同企画になり、招待された人も体育祭を見れる。
ここに柊さんがいるってことは、鷲宮先輩が呼んだってこと?
なんで。
柊さんたちに見つかりそうになった時、あんなことしてまで隠れたのに。好きじゃないって言ってたじゃん。
俺の心の中に渦巻く暗雲とは正反対に、バトンを受け取った鷲宮先輩はトラックを颯爽と駆け抜けていた。
先輩のクラスはみんな足が速くて、今のところ3位をキープしていた。
「やば!やっぱ、鷲宮先輩足はや!!」
神原が興奮気味に言った。一方俺は観客席にいる柊さんが気になって鷲宮先輩と柊さんをチラチラ交互に見てしまっている。
「なるくーん?鷲宮先輩そろそろ走り終わっちゃうよー?」
「はっ!」
我に帰って鷲宮先輩のリレーに集中した。
自分のクラスカラーの鉢巻をして、バトンを持ち、長い足をめいっぱい使ってグラウンドを走る。あと少し、あと少しで2位のクラスの子を抜かしそう。
「鷲宮先輩ー!がんばれーー!」
柊さんに負けじと俺も応援の声をあげる。顔面だけで3学年に知らない人はいない鷲宮先輩に、1年と3年の応援の声が注がれた。
あと少し、あと数センチ…
『あっっっっっ!!!』
3学年全員の声が揃ったように感じた。もう少しで抜かしそうになった2位の生徒がつまづいて、真後ろに来ていた鷲宮先輩が転倒に巻き込まれた。
「やばい!!鷲宮先輩転んじゃった!」
俺も神原も正気を保っていられていない。
どうしよう、どうしよう…今から走ってグラウンドに下りても間に合わないかな…行くべきかな…
「なるくん?!」
焦りに焦って定まらない思考のまま俺は観客席を飛び出してグラウンドに向かっていた。
走って走って…他学年からの視線も気にせずに走っていた。
鷲宮先輩のことだけを考えて。
「鷲宮せんぱ…」
「律!!」
俺の前に高身長の影が落ちた。
「すみません、グラウンドは校内生とご家族以外立ち入り禁止なのですが…」
「私は幼馴染よ!家族よ!」
ここ二日間で1番気にしていた声。1番俺の怒りの琴線に触れる声。抜群のスタイルの影。そして何よりいつも自信ありげな強い口調。
柊さんだ。
「律!大丈夫?」
「自分で歩けるよ…」
柊さんが半分強引に先輩の腕を自分の肩にかける。
思ったより派手に転んだのか、鷲宮先輩の両膝からは鮮やかな血液が脛まで垂れてきていた。
それより、なんで柊さんが鷲宮先輩を保健室に連れて行くんだ?
鷲宮先輩にとって柊さんは、“ただの”幼馴染で、恋愛感情はなくて、なんなら少し厄介、くらいに思ってるくせに。
鷲宮先輩に肩を貸すのは、この学校の生徒で、半年間ほぼ毎日一緒にいて、文化祭準備もメイド喫茶も一緒にやって、厄介な幼馴染から隠れて…ずっと、ずっと鷲宮先輩のことを考えてる俺が1番合ってるはずなのに。
目の前の鷲宮先輩を横取りされてズキズキと胸が痛む。怪我してないのに、どこにも傷なんてないのに。
その時初めてわかった。
ああ、これが“嫉妬”って言うんだ。
推しとか、同担拒否とかじゃない。
恋。
世の中ではそう呼ばれている。
一緒にいたい、笑ってほしいって思う気持ち。
ずっと、ずっと、俺は、鷲宮先輩に『恋』してたんだ。
昨日の雰囲気とはガラリと変わって校庭は白い体育着で埋め尽くされている。
学年別席だから、鷲宮先輩会えないか…
そう、聞いてみようと思って寝たものの、体育祭は観戦席が学年別。
つまり、昨日みたいにずっと一緒に行動することはできないとういうこと。
今日は別行動か……
鷲宮先輩に会えない寂しさを胸に、体育祭が幕を開けた。
「プログラム3番、高校2年生のクラス対抗リレーです!高校2年生の皆さんはグラウンドに降りてきてください」
司会の生徒が言った。
俺の学校は学年ごとのクラス対抗リレーがある。
鷲宮先輩、絶対足速い。
「なるくん、これはベストショットの狙い時だよ!!待ち受け変えな!」
もちろん。
待ち受け画面は今でも鷲宮先輩。
でも、4月の頃とは違い、もう盗撮の画像じゃなくて一緒に行った水族館で撮った写真だ。
しかも、ハイテンションスタッフさんの流れで撮ってしまった謎カップル風ショット。
これ、バレたら引かれそうだな…
スマホを開く度に思っているが、しばらくは変えたくないという気持ちが勝ってしまう。
推しとのツーショットなら絶対変えたくないよね?
オタクとしての意見を正当化しつつ、自分の中で芽生えそうになる罪悪感に蓋をする。
「あ!次の次、鷲宮先輩じゃない?!」
走るのを待機している鷲宮先輩が見えた。
鷲宮先輩は体育着もかっこいい…
「律ー!がんばれー!」
鷲宮先輩に見惚れていると、応援の声が響いた。一瞬、神原が突然呼び捨てをしたのかと思った。
でも、歓声がしたのは隣ではなく、来客用の応援席だった。
柊さん…?
今年から文化祭合同企画になり、招待された人も体育祭を見れる。
ここに柊さんがいるってことは、鷲宮先輩が呼んだってこと?
なんで。
柊さんたちに見つかりそうになった時、あんなことしてまで隠れたのに。好きじゃないって言ってたじゃん。
俺の心の中に渦巻く暗雲とは正反対に、バトンを受け取った鷲宮先輩はトラックを颯爽と駆け抜けていた。
先輩のクラスはみんな足が速くて、今のところ3位をキープしていた。
「やば!やっぱ、鷲宮先輩足はや!!」
神原が興奮気味に言った。一方俺は観客席にいる柊さんが気になって鷲宮先輩と柊さんをチラチラ交互に見てしまっている。
「なるくーん?鷲宮先輩そろそろ走り終わっちゃうよー?」
「はっ!」
我に帰って鷲宮先輩のリレーに集中した。
自分のクラスカラーの鉢巻をして、バトンを持ち、長い足をめいっぱい使ってグラウンドを走る。あと少し、あと少しで2位のクラスの子を抜かしそう。
「鷲宮先輩ー!がんばれーー!」
柊さんに負けじと俺も応援の声をあげる。顔面だけで3学年に知らない人はいない鷲宮先輩に、1年と3年の応援の声が注がれた。
あと少し、あと数センチ…
『あっっっっっ!!!』
3学年全員の声が揃ったように感じた。もう少しで抜かしそうになった2位の生徒がつまづいて、真後ろに来ていた鷲宮先輩が転倒に巻き込まれた。
「やばい!!鷲宮先輩転んじゃった!」
俺も神原も正気を保っていられていない。
どうしよう、どうしよう…今から走ってグラウンドに下りても間に合わないかな…行くべきかな…
「なるくん?!」
焦りに焦って定まらない思考のまま俺は観客席を飛び出してグラウンドに向かっていた。
走って走って…他学年からの視線も気にせずに走っていた。
鷲宮先輩のことだけを考えて。
「鷲宮せんぱ…」
「律!!」
俺の前に高身長の影が落ちた。
「すみません、グラウンドは校内生とご家族以外立ち入り禁止なのですが…」
「私は幼馴染よ!家族よ!」
ここ二日間で1番気にしていた声。1番俺の怒りの琴線に触れる声。抜群のスタイルの影。そして何よりいつも自信ありげな強い口調。
柊さんだ。
「律!大丈夫?」
「自分で歩けるよ…」
柊さんが半分強引に先輩の腕を自分の肩にかける。
思ったより派手に転んだのか、鷲宮先輩の両膝からは鮮やかな血液が脛まで垂れてきていた。
それより、なんで柊さんが鷲宮先輩を保健室に連れて行くんだ?
鷲宮先輩にとって柊さんは、“ただの”幼馴染で、恋愛感情はなくて、なんなら少し厄介、くらいに思ってるくせに。
鷲宮先輩に肩を貸すのは、この学校の生徒で、半年間ほぼ毎日一緒にいて、文化祭準備もメイド喫茶も一緒にやって、厄介な幼馴染から隠れて…ずっと、ずっと鷲宮先輩のことを考えてる俺が1番合ってるはずなのに。
目の前の鷲宮先輩を横取りされてズキズキと胸が痛む。怪我してないのに、どこにも傷なんてないのに。
その時初めてわかった。
ああ、これが“嫉妬”って言うんだ。
推しとか、同担拒否とかじゃない。
恋。
世の中ではそう呼ばれている。
一緒にいたい、笑ってほしいって思う気持ち。
ずっと、ずっと、俺は、鷲宮先輩に『恋』してたんだ。

