「推し」の待ち受け画面をご本人に見られました

 あんな……あんなに近くに……

最近の俺はおかしい。

推しだからというのもあるけど、何か違うものを感じている気がする。



この感じ、今までに感じたことない。



学校から帰ってからが退屈でしかない。

今までみたいに先輩フォルダを眺めると、逆に胸がくるしくなる。

本物の先輩に会いたい。

昼間はあんなに近くにいたのに、今は全く別の家にいるんだ。

先輩の笑ってる顔が見たい。

他の誰でもない、先輩の。

さっきみたいに近くにいたい。

この気持ち、神原だったら共感してくれるかもしれない。

思い立ってすぐ、神原に電話をかけた。



「わぁ、電話なんてとうしたの。私はなるくんの彼女じゃないんですけど。」

「いや…なんていうか」

「なに、恋愛相談?」

「ちがう」



恋愛相談ではない。

じゃあなんだ?

推し相談?



「俺の友達がね、気になってる人がいるらしい」



咄嗟にベタな嘘をついた。



「あ、うん。」

「その人に、かわいい、とか突然手を触られたりとかして」

「え?」

「で、ちょっと嬉しかったんだって。これ、どういう事だと思う?」



嫌じゃなかった。
推し、すなわち鷲宮先輩に触られて。



「うーーん…恋?」

「……こい?魚?」

「じゃなくて、恋だよ恋。恋愛の恋。」

「ほお……?」



恋……?



「どっちが、どっちに?」

「なんていうか、私的には、その、お友達のお相手が相当お友達のこと好きなんじゃないかな」

「相手が?」

「うん。かわいいっていうのは大切な人にしかきっと言わないし、触るのが手ってのも、抑えてる感じする。相当好きだね。」

「かわいいって、誰にでも言う人もいるんじゃ…」

「えー鷲宮先輩は絶対言わないね。」

「相手が鷲宮先輩とは言ってないけど……」



なんか、バレてる気がする。



「あ、いや!なんか、推しだから?推しで考えちゃったっていうか?!」

「……」

「なるくん!がんばってね!……って、お友達に伝えて!じゃ!」



ブチ



「切られた……」



先輩が、俺を、好き?

ないないないない。

あの完璧イケメンがこんな(いち)オタクを好きなわけがない。

でも、待ち受け画面にしてたのを怒らなかったし、水族館に行ったときカップル割を選んだし、文化祭準備の日はさりげなく手を触ってきたし、ロッカーでもあんなに密着されたし、そのあと保健室まで届けてくれたし……


今までのことを走馬灯のように思い返していると、自意識過剰な妄想がもくもくと膨らんでいく。



「もう……わかんないよ…」



少なくとも、俺は先輩のことは好きか嫌いかでいったら、好き…何だと思う。

でも、俺は推しだからで、そんな好きなのは当たり前…じゃあなんでこんなに考えてるんだ。



先輩は、俺のことどう思ってるんだろう…



推し活を提案した時の気持ちは?
水族館に行った時の気持ちは?
ロッカーの中で隠れた時の気持ちは?



次々生まれる疑問は俺の頭を埋めつくした。



「今度会ったら、聞いてみよう…」



でも、こんな自意識過剰な疑問を鷲宮先輩にぶつけるわけにわいかない…。

さりげなく言う?神原に言ってもらう?

次から次へと湧き出る疑問にキャパオーバーになりそうになりながら、いつの間にか寝落ちていた。