「すみません。あの、写真撮っていただいてもいいですか。」
カフェを出て、水族館の後半部分を回っていると、女の人2人組に声をかけられた。
「いいですよ、縦ですか?横ですか?」
イケメン、要領いい上に、親切までプラスされてしまった。
これじゃ本当に完璧人間。高2でも相当モテてるんだろうな…。
「あ、そうじゃなくて、一緒に、お写真撮っていただけないかと…あの、急にすごい驚いたと思うんですけど、なんていうかとってもかっこよかったので」
「一緒に…?」
「はい、お願いできませんかね?」
女の人2人組は自分たちのスマホを鷲宮先輩に差し出してお願いしている。
「えっと…」
鷲宮先輩は俺の方を見た。いいの?と言っているような目で。
「と、撮りましょうか?」
俺は恐る恐る口を開くと、二人組は嬉しそうに飛び跳ねた。が…
「すみません。有名人ではないので。」
鷲宮先輩は丁寧に断った。
それもそうか。芸能人でもインフルエンサーでもないのに一般人と写真を撮るのは心地いいものではないだろう。
まあ、それを待ち受けにしていたのがこの俺なんだけど…
でも、どこかで鷲宮先輩がさっきの2人組に撮られなくてよかったと安心している自分がいる。
俺の最推しだから?それとは少し違う気がする。
例えば俺が特別に取っておいたプリンを略奪されずに済んだ安心感というか…うーん?
あれこれ考えても答えが出なくて、鷲宮先輩撮影に戻った。
「ほら、こうやって」
鷲宮先輩は真っ青な水槽の前でクールにポーズをとった。
「アクスタ?みたいだろ。推し活って、そうゆうんじゃないのか?」
先輩の口から“アクスタ”なんてオタク用語が出てくるなんて。
呆然としていると早く、と先輩に撮影をせかされた。
「あ…」
「どした」
「充電…切れました」
「写真撮りすぎだろ」
「はい…どうしようまだ半分も見る所が残ってるのに鷲宮先輩を残せないなんて…!!」
一応バッグの中を探したが、モバイルバッテリーは入っていなくて肩を落とした。
せっかく先輩が俺の推し活に付き合ってくれてるのに俺のスマホがギブアップしたら意味がない。
やばいやばいと焦っていると
「いいよ、撮らなくて。残り回ろうぜ」
「でも…」
「直接…見てればいだろ」
「………」
鷲宮先輩はぼそっとそれだけ言って先に進んでしまった。
また、さっきのトクンという音が聞こえた。
*
「先輩!見てください!水クラゲです!」
「クラゲに名前とかあるんだ…」
「ありますよ!ほら、こっちとか全然形違うじゃないですか!水クラゲは一生で5回も呼び名が変わるんです!脳や臓器がない代わりに傘の開閉で、ほら、こうやってふわふわさせて海水を循環させて全身に栄養を回してるんです……先輩?」
「ふっお前、ほんとよく喋るな」
「あ、すみません、またすごい熱入っちゃいました」
「かわいい」
「…え?」
今日は先輩の様子がおかしい。
推しがオタクに向かってかわいいとか言っていいのでしょうか?特大ファンサービス?
鷲宮先輩のいつものそっけなクールはどこいった…
「クラゲ、好きなのか?」
「あ、まあ…小学生の修学旅行で水族館に行った時にハマったんです。中学2年生になるまでは水クラゲオタクでした。はは、ちょっと変ですよね。」
「別に、変じゃないんじゃね」
「え、そうですか?ありがとうございます。でも高校に上がって鷲宮先輩推しになったのでもう水クラゲのことはあんまり調べてません。担降りってやつですかね、はは」
その瞬間、鷲宮先輩の表情が曇った。
「俺も…いつか担降りされる日が、来るのか?」
「それはないですね!ここまで大好きになった推しはいないですし、鷲宮先輩は永遠に俺の最推しです!」
「永遠に…推し」
「はい!安心してください!」
「そうか……」
あれ、なんか俺、変なこと言った?
鷲宮先輩は早足で奥に進んでしまった。その日、駅で別れるまで鷲宮先輩が話しかけてくることはなかった。
「今日は、ありがとうございました」
「…おう、」
「あの…また、こうして、推し活してもらえますか?」
「俺だけを、推してくれるなら」
「はい!」
それだけは、絶対に変わらない。鷲宮先輩の顔を思い浮かべながら改札をくぐろうとしたときぐいっと何かに引っ張られた。
「鷲宮先輩?」
「………」
気づいたら反対方向のはずの鷲宮先輩が俺の手を掴んでいた。
「忘れ物ですか?」
「……あっ、いや、なんでもない。気をつけて帰れよ。」
「は、はい。ありがとうございます」
なんだ、なんだ?!鷲宮先輩のモテテク伝授?
確か要が言ってた連ドラにこんなシーンあったような…いや、鷲宮先輩絶対ドラマとか見なそう…
疑問を胸に、再び改札へ向かった。
鷲宮先輩に触れられた手がまだ少し温かかった。
カフェを出て、水族館の後半部分を回っていると、女の人2人組に声をかけられた。
「いいですよ、縦ですか?横ですか?」
イケメン、要領いい上に、親切までプラスされてしまった。
これじゃ本当に完璧人間。高2でも相当モテてるんだろうな…。
「あ、そうじゃなくて、一緒に、お写真撮っていただけないかと…あの、急にすごい驚いたと思うんですけど、なんていうかとってもかっこよかったので」
「一緒に…?」
「はい、お願いできませんかね?」
女の人2人組は自分たちのスマホを鷲宮先輩に差し出してお願いしている。
「えっと…」
鷲宮先輩は俺の方を見た。いいの?と言っているような目で。
「と、撮りましょうか?」
俺は恐る恐る口を開くと、二人組は嬉しそうに飛び跳ねた。が…
「すみません。有名人ではないので。」
鷲宮先輩は丁寧に断った。
それもそうか。芸能人でもインフルエンサーでもないのに一般人と写真を撮るのは心地いいものではないだろう。
まあ、それを待ち受けにしていたのがこの俺なんだけど…
でも、どこかで鷲宮先輩がさっきの2人組に撮られなくてよかったと安心している自分がいる。
俺の最推しだから?それとは少し違う気がする。
例えば俺が特別に取っておいたプリンを略奪されずに済んだ安心感というか…うーん?
あれこれ考えても答えが出なくて、鷲宮先輩撮影に戻った。
「ほら、こうやって」
鷲宮先輩は真っ青な水槽の前でクールにポーズをとった。
「アクスタ?みたいだろ。推し活って、そうゆうんじゃないのか?」
先輩の口から“アクスタ”なんてオタク用語が出てくるなんて。
呆然としていると早く、と先輩に撮影をせかされた。
「あ…」
「どした」
「充電…切れました」
「写真撮りすぎだろ」
「はい…どうしようまだ半分も見る所が残ってるのに鷲宮先輩を残せないなんて…!!」
一応バッグの中を探したが、モバイルバッテリーは入っていなくて肩を落とした。
せっかく先輩が俺の推し活に付き合ってくれてるのに俺のスマホがギブアップしたら意味がない。
やばいやばいと焦っていると
「いいよ、撮らなくて。残り回ろうぜ」
「でも…」
「直接…見てればいだろ」
「………」
鷲宮先輩はぼそっとそれだけ言って先に進んでしまった。
また、さっきのトクンという音が聞こえた。
*
「先輩!見てください!水クラゲです!」
「クラゲに名前とかあるんだ…」
「ありますよ!ほら、こっちとか全然形違うじゃないですか!水クラゲは一生で5回も呼び名が変わるんです!脳や臓器がない代わりに傘の開閉で、ほら、こうやってふわふわさせて海水を循環させて全身に栄養を回してるんです……先輩?」
「ふっお前、ほんとよく喋るな」
「あ、すみません、またすごい熱入っちゃいました」
「かわいい」
「…え?」
今日は先輩の様子がおかしい。
推しがオタクに向かってかわいいとか言っていいのでしょうか?特大ファンサービス?
鷲宮先輩のいつものそっけなクールはどこいった…
「クラゲ、好きなのか?」
「あ、まあ…小学生の修学旅行で水族館に行った時にハマったんです。中学2年生になるまでは水クラゲオタクでした。はは、ちょっと変ですよね。」
「別に、変じゃないんじゃね」
「え、そうですか?ありがとうございます。でも高校に上がって鷲宮先輩推しになったのでもう水クラゲのことはあんまり調べてません。担降りってやつですかね、はは」
その瞬間、鷲宮先輩の表情が曇った。
「俺も…いつか担降りされる日が、来るのか?」
「それはないですね!ここまで大好きになった推しはいないですし、鷲宮先輩は永遠に俺の最推しです!」
「永遠に…推し」
「はい!安心してください!」
「そうか……」
あれ、なんか俺、変なこと言った?
鷲宮先輩は早足で奥に進んでしまった。その日、駅で別れるまで鷲宮先輩が話しかけてくることはなかった。
「今日は、ありがとうございました」
「…おう、」
「あの…また、こうして、推し活してもらえますか?」
「俺だけを、推してくれるなら」
「はい!」
それだけは、絶対に変わらない。鷲宮先輩の顔を思い浮かべながら改札をくぐろうとしたときぐいっと何かに引っ張られた。
「鷲宮先輩?」
「………」
気づいたら反対方向のはずの鷲宮先輩が俺の手を掴んでいた。
「忘れ物ですか?」
「……あっ、いや、なんでもない。気をつけて帰れよ。」
「は、はい。ありがとうございます」
なんだ、なんだ?!鷲宮先輩のモテテク伝授?
確か要が言ってた連ドラにこんなシーンあったような…いや、鷲宮先輩絶対ドラマとか見なそう…
疑問を胸に、再び改札へ向かった。
鷲宮先輩に触れられた手がまだ少し温かかった。

