■木曜日(訓練7日目)
診療所の一室で、エルザは歩行器の前に立っていた。
両手で把持し、姿勢は安定している。
今日は、桜が動作訓練に立ち会っていた。
横にはマルタと介護人がいる。
「今日は、少しだけ確認の仕方を変えますね」
桜は、距離や回数には触れなかった。
「歩いている途中で、声をかけます。
その時に、止まらずに向きを変えてみましょう」
方向転換自体は、これまでも行ってきた。
だが今日は、合図に反応して行う。
マルタが、小さく頷く。
「無理そうなら、すぐ止めます」
一歩。
二歩。
「……今です」
声に反応して、エルザはわずかに体をひねった。
歩行器の向きが、一瞬だけ遅れる。
だが、体は流れなかった。
介護人が支えに入る前に、女性自身が動きを整える。
「はい。今の動きです」
桜は、そこで一度止めた。
「今日は、ここまででいいです」
繰り返さない。
成功した感覚を、そのまま残す。
「今の動き、覚えていますか?」
「……はい」
答えは、はっきりしていた。
この日の訓練は、それだけで終えた。
金曜日と土曜日は、同じ内容が続けられた。
金曜日は、マルタとエミール。
土曜日は、ロッテと介護人。
ただ、同じ動きを繰り返す。
介助量は、少しずつ減っていた。
――――――――――
■月曜日(訓練11日目)
午前の訓練後、桜とマルタはクラウスのもとへ向かう。
「歩行器使用での方向転換は、安定しています」
マルタが、簡潔に報告する。
「止まる回数も減りました。
恐怖で動きが固まる場面は、ほとんどありません」
桜が続けた。
「距離を、もうそろそろ、伸ばしてもよいかと思います。
大丈夫そうであれば、次の段階として、
杖歩行への移行を検討してもいい時期かもしれません」
クラウスは短く頷き、許可を出した。
「あぁ、それで問題ないと思うよ」
――――――――――
■火曜日(訓練12日目)
この日の訓練は、桜が介護人とともに行う。
内容は、これまでと同じ。
歩行器を使った歩行と、途中での方向転換。
そして、歩行距離を伸ばす。
「今日は、少しだけ距離を伸ばしてみましょう」
そう言ってから、桜は続けた。
「そのまま、階段の手前まで行きましょう」
歩行器を押して、階段の前まで進み、また、ベッドへと戻る。
「だいぶ、歩行が安定してきているので、木曜日から杖歩行を試してみましょう」
「大丈夫でしょうか?」
エルザが不安そうに、桜を見つめる。
「大丈夫ですよ。歩行も安定していますし、もちろん無理はしませんから」
桜の言葉に、女性はゆっくりと息を吐いた。
「……頑張らないとですね」
その返事は、逃げるものではなかった。
――――――――――
■水曜日(訓練13日目)
この日は、エミールと介護人が対応に入った。
火曜日と同じ内容を、そのまま繰り返す。
歩行器での立位は安定し、階段の手前まで問題なく歩行できた。
方向転換も、止まらずに行えていた。
介助は、ほとんど必要ない。
診療所の一室で、エルザは歩行器の前に立っていた。
両手で把持し、姿勢は安定している。
今日は、桜が動作訓練に立ち会っていた。
横にはマルタと介護人がいる。
「今日は、少しだけ確認の仕方を変えますね」
桜は、距離や回数には触れなかった。
「歩いている途中で、声をかけます。
その時に、止まらずに向きを変えてみましょう」
方向転換自体は、これまでも行ってきた。
だが今日は、合図に反応して行う。
マルタが、小さく頷く。
「無理そうなら、すぐ止めます」
一歩。
二歩。
「……今です」
声に反応して、エルザはわずかに体をひねった。
歩行器の向きが、一瞬だけ遅れる。
だが、体は流れなかった。
介護人が支えに入る前に、女性自身が動きを整える。
「はい。今の動きです」
桜は、そこで一度止めた。
「今日は、ここまででいいです」
繰り返さない。
成功した感覚を、そのまま残す。
「今の動き、覚えていますか?」
「……はい」
答えは、はっきりしていた。
この日の訓練は、それだけで終えた。
金曜日と土曜日は、同じ内容が続けられた。
金曜日は、マルタとエミール。
土曜日は、ロッテと介護人。
ただ、同じ動きを繰り返す。
介助量は、少しずつ減っていた。
――――――――――
■月曜日(訓練11日目)
午前の訓練後、桜とマルタはクラウスのもとへ向かう。
「歩行器使用での方向転換は、安定しています」
マルタが、簡潔に報告する。
「止まる回数も減りました。
恐怖で動きが固まる場面は、ほとんどありません」
桜が続けた。
「距離を、もうそろそろ、伸ばしてもよいかと思います。
大丈夫そうであれば、次の段階として、
杖歩行への移行を検討してもいい時期かもしれません」
クラウスは短く頷き、許可を出した。
「あぁ、それで問題ないと思うよ」
――――――――――
■火曜日(訓練12日目)
この日の訓練は、桜が介護人とともに行う。
内容は、これまでと同じ。
歩行器を使った歩行と、途中での方向転換。
そして、歩行距離を伸ばす。
「今日は、少しだけ距離を伸ばしてみましょう」
そう言ってから、桜は続けた。
「そのまま、階段の手前まで行きましょう」
歩行器を押して、階段の前まで進み、また、ベッドへと戻る。
「だいぶ、歩行が安定してきているので、木曜日から杖歩行を試してみましょう」
「大丈夫でしょうか?」
エルザが不安そうに、桜を見つめる。
「大丈夫ですよ。歩行も安定していますし、もちろん無理はしませんから」
桜の言葉に、女性はゆっくりと息を吐いた。
「……頑張らないとですね」
その返事は、逃げるものではなかった。
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■水曜日(訓練13日目)
この日は、エミールと介護人が対応に入った。
火曜日と同じ内容を、そのまま繰り返す。
歩行器での立位は安定し、階段の手前まで問題なく歩行できた。
方向転換も、止まらずに行えていた。
介助は、ほとんど必要ない。

